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ヴァンガード Divinezが王道で面白い

VWPがOP担当、世界観は続投、主人公変更ということで、そこそこ程度に楽しみにしていたんですが、実際視てみると想像以上に面白い。


【運命は自分で切り開くもの】

めっちゃくちゃ陳腐で王道なこのテーマを、真っ直ぐ直球にやってきているんですよねディヴァインズ。
本作での主軸となる「運命大戦」は六名の運命によって選ばれたファイターが互いに戦い、最後の一人は願いを叶えられるというもの。

公式サイトより

アニメ始まる前はよりにもよってVWPがOP担当をするので

「他人の願いを踏み躙ってまで、自分の願いを叶えたいのか?」

というテーマなのかと思ったら、いざ運命大戦が始まると、六名の参加者の中でもとくに願いが重い(病弱な妹を救いたい)主人公のアキナが敗北判定のチェックをする場面で

例え運命大戦がダメでも
医者が匙を投げても
手を伸ばし続ける限り希望はあるって信じています
俺の願いが終わることなんてない!

3話より

と、まぁ開き直るので「とにかく成績を残さなければ」「勝ち続けたい」と焦っていた対戦相手のナオ先輩はそもそもヴァンガードが楽しくて遊んでいたはずなのに、いつのまにか目的と手段が入れ替わっていたことに気づいて「別に運命大戦で負けても自分の願いは終わらない」と弟子に教えられる。

そして敗北判定はアニメで初登場能力のレザエルのスキルで引っくり返して首の皮一枚繋がるという展開。
販促アニメとしてもしっかり脚本が出来ています。

本来ヴァンガードでは六枚目のダメージを受けると敗北する
しかし六枚目のダメージチェックでヒールトリガーが出たら、
一点回復処理が先に行われるので敗北は免れる
レザエルは50枚デッキの中に16枚入れられるトリガーを
六点ダメージ時に限ってヒールトリガー機能を付与する
(オマケにトリガー率圧縮上昇までする)

正にOPソングの「致命傷でも構わない 奇跡の鐘」。大体この歌詞聴いた時から「回復スキルだろうなー」と予想ついてましたが、アニメ本編での魅せ方が上手いんですよね。
ヴァンガードをちゃんと知っている視聴者ほどアキナの六点ダメージチェックでクリティカルトリガーが出たので「まさかの主人公が初戦敗北か」となる(主人公敗北はTCGアニメだとそこまで珍しくもないし、ヴァンガードは結構敗北展開が多い)。

それを引っくり返して王道に持って行く。
あれ?俺見ているのヴァンガードだよな?主人公のショタっぷりで多くの男性視聴者の性癖を狂わせ、女装主人公が第一話で出てくるようなシリーズのはずだよなコレ?

※※※

見た目はむらくもっぽいのに
やることは櫂君伝統のオバロ+カイザーヴァーミリオン

対戦相手のこのヴァルガ・ドラグレスの設定や惑星クレイ側でのストーリーでの本人(竜だけど)のスタンスも一致しているんですよね。
孤独に強さを追求する求道者であるため、敵も味方も容赦なく斬り払う。だから二つ名は無双(まぁそれはそれとして味方は自分の能力で復活して攻撃回数増やすガチデッキなんですが)。
そして運命者として選ばれたけれど「自分は自分の力で強くなりたいのであって、この運命力デザインフォースとかいうのは不純物で邪魔」とかのたまう。

惑星クレイ側でのストーリーでのレザエルはアキナと正反対に、既に完成された奇跡の救命者であり、卓越した剣士であり人格者。
でもそれだけの実力は恋人を失うという過去があったからこそ、研鑽して獲得したという点がいい対比になってますね。
「運命を覆したいだけの動機があるのは理解わかるけど、その残酷な運命があったからこそ今のお前がいるんじゃねーか」と、相対する運命者に片っ端からツッコミされていて迷いながら救命の翼を広げる。
あまり恵まれたとは言えない家庭環境でもめげないしブレないし、後先考えず誰でも彼でも助けようとするアキナと正反対でありつつ、他者を想うがあまりに自分を大切にしないという点は一致するあたりが上手い。

【運命は対峙する相手によって切り開かれるもの】

ディヴァインズの見ていて気持ちの良い所は、ここでもありますね。

運命大戦は本来、互いを蹴落としあって願いを叶えるバトルロワイアル形式。
だから勝ち残るために、他の運命者の対戦は観戦して相手の情報を得ようとするし、自分の情報開示は避けたい。

しかし、そんな風に焦っている対戦相手ライバルを蹴落とす相手と見做さずに、同じファイターとして純粋にファイトを楽しもうと話し合いすることで、結果的に敗北した運命者は自分の力で自分の願いを叶えるという正道を見出す。

Will+Dressから続投キャラのタイゾウはめっちゃくちゃ気持ち良い立ち回りしてくれています。
「自分の願いは自分で叶える」というエゴがもうしっかりしているため、彼は「他人のために運命大戦に参加」して「運命大戦とはなんなのか」を外側から見つめる立ち位置。
そして前作登場キャラというだけあって、普通に強い。そもそも使っているデッキが現実リアルにガチデッキ。

※※※

この圧倒的実力差がある相手に対して、主人公のアキナが取った行動がすごい(色んな意味で)。

  • この前自分が倒した元運命者のナオ先輩に教授を乞う

  • しかも「付き合ってください」とか勘違いされる台詞で乞う

  • ナオ先輩も健全な男子高校生を自分の部屋に入れちゃう

  • おそらく一晩中ファイト練習とデッキ構築案に付き合う

もう付き合っているってことでいいじゃないのかなこの二人。

そして完成したデッキ構築が完全に狂っている。

ヴァンガードでは、防御用の基本カードとして「ヒールトリガー」と「完全ガード」があります。

ヒールトリガー
Pスタンならなおのことガン積み必須
完全ガード
事実上手札二枚で相手の攻撃を確実に防ぐ(状況次第ではこれ一枚で防ぐヤツもある)

「ヒールトリガー」は、チェック時に相手のダメージ以上ならダメージ一点回復。受けるダメージが不確定要素の高いヴァンガードでは「ノーガード」と言える機会が増えるヒールトリガーは攻防一体であり、基本的に限界の四枚積みするものです。

「完全ガード」はその名の通り、使うとその攻撃を確実にシャットアウトするカード。手札五~六枚防御ガードに使ってやっと「負けないかもしれない」という攻撃が普通にカッ飛んで来るヴァンガードというゲームにおいて、完全ガードを抜くのはまずありえないと言って良いです。

でも主人公のアキナは「実力差で勝てないなら、運勝ちするしかない」と開き直ってこの必須防御カードをデッキから全抜きした超攻撃的デッキ構築で「百回に一回勝てればいい」勝負に挑む。
これ、魅せ方がめちゃくちゃ上手いんですよ。

このアキナVSタイゾウでは、実力者のタイゾウは自分のデッキをフル回転させつつも「レザエルのスキルは生残性が高いし、アキナの持っている手札は攻撃能力に乏しい完全ガードだろう。このターンで無理攻めすると負けるかもしれない。確実に仕留めるなら次の自分のターンで」と防御寄りの動きをするんですよね。

視聴者もそう思います。そしてアキナもそう思わせてブラフ張っていた。

実際のところ、アキナの残り一枚の手札は展開して攻撃力を上げるカード。
さらに序盤にクリティカルトリガーを複数使ってしっかりダメージを抑えて守っていたおかげで、ブン回ると「ノーガード」を言わざるを得ない連続攻撃が飛んでくる社長デッキ相手対策の立ち回りもしていた(何せ完ガが無いので……)。

ここまでやって、実際のファイナルターンを見るとアキナの神引きがあってこその薄氷の勝利。
主人公アキナは初心者だからこそ定石をブン無げた構築を思いつき、そしてビギナーズラックでやっと勝てたからこそ、タイゾウはアキナの度量を買って「あいつなら運命も覆せる」と太鼓判を押すわけですね。

この六話の「むぼうな翼」は「無謀」と「無防」をかけているわけで、ストーリー中盤の盛り上がりを見せる展開でした。

※※※

なお生中継配信でも言っていましたが、現状スタンダードだとヒールトリガーを完全に抜くのは発狂行動としても、枚数を減らす構築は有りではあるんですよね。
ゴリゴリに最初っから攻めてダメージレースに勝つ速攻型デッキだと、ヒールトリガーはただのパワー+1万するだけのトリガーにしかならないパターンが多いので、限られた枠に他の攻撃的なトリガーを割り振るわけです。

ましてレザエルは「六枚目ダメージ限定」としても全トリガーを擬似的にヒールトリガーに変えられる、それもトリガー率を上げる能力を持っているので、ヒールトリガーを減らす構築は十分考えられはするのです。
それでもアキナの劇中でやった構築は完全に初見殺しの運任せで、そのくせ動きに気を使う本当にヤバいデッキでしたが。
そのヤバさが、魅せ方が上手いので本当に面白い。

【TCGとしてのDivinez】

メインカードの四枚以外は全部実質バニラ(何も効果が無い)のはどうなのよーと思いつつ、エネルギージェネレータシステムもあるのでまぁセット商品として700円だしな……というこのクイックスタートデッキなのですが、肝心のG3は互換サイクルに見せかけて、サポートカード次第で割としっかり戦えるカードになっている調整がこの野郎。

起動能力によって同名カードをサーチするのは共通能力
相手のヴァンガードへのアタック時に誘発する条件もコストも(クリスティアノス除き)共通
それによって誘発される能力が違うだけ

ただ「同名カードをサーチしてパワー+1万」という共通能力が地味に強い。
これによって次ターンほぼ確実にペルソナライドが発動するので、安定したパワーラインを得られますし、ヴァンガードが使うコストは分散しているので余剰コストを他のカードに使わせて、デッキ全体を回しやすく、自由度の高い構築がしやすいようデザインされていますね。

※※※

あとこのスタートデッキのG3は、ディヴァインズの目玉である運命者カードとも相性良くしているのがこの野郎感を加速させる。

まずこいつのおかげでドロップゾーンが最早公開控え領域になっている
ドロップゾーンはいわゆる墓場なので
そこから復活するということはよほどのメタデッキでも無い限り止めようがない
呼び出すカードの能力でコンボするのは前提
そしてレザエルの効果もドロップゾーンからの復活
それもゲーム終盤ほど自由度が上がる
オマケにファイト中一度しか使えないディヴァインスキルが
これまた終盤ほど山札枚数が減っているので
クリティカルトリガーを全て山札に戻すことでドライブチェックの殺意マシマシ
詰めそこねても、六点ヒールもしやすいしぶといヤツ

スタートデッキG3の共通サーチ効果でデッキを圧縮しつつ戦線維持しやすくする

そうこうしているうちに「ファイト中一回しか使えないからこそ超強力なディヴァインスキル」を保有している運命者カードを引く

ペルソナライドの連発が尽きてきたヴァンガードから運命者カードに乗り換え

ディヴァインスキルでトドメを刺す

これは既存カードの運命者版である「ブラントゲートのヴェルストラ」以外は構築としてはアリなんですよね。

社長は乗ったら即ディヴァインスキル使ってデッキをブン回すタイプ
自社製品自慢のオモチャを使い倒す人なんで……
なおそのブリッツ社製品のアシュトルム君はあくまで商品
社長のオモチャを使えるのは社長だけなので
アシュトルムから社長に乗り換える旨みはとくに無い

社長はさぁ……。

なおゾルガは設定上一応宿敵であるはずのアクアフォース所属のクリスティアノスから
奇襲ライドして魔合成とディヴァインスキルでトドメを刺す構築はできますね
オーダー以外のコストはメインフェイズ開始時には担保確定ですし……

幽霊船の船長と絶対正義の海軍は一応手を組めそうなのに自社製品と連携する気がゼロの社長はホントにさぁ……。

※※※

あとこのサイクルもスタートデッキG3→運命者カードへの乗り換えを意識してますね。

下のアタック時能力は
「今その場にいるヴァンガードが誰なのか」を参照しない
よって安定したペルソナライドで積んできた今までのG3をコストにして
運命者カードによってファイナルターンを決める時のアタッカーに成り得る
とくにこの娘は可愛い顔してただの脳筋である
そしてその脳筋娘をディヴァインスキルで
超ドーピングしちゃうアイドル学園の学園長

……なんでよりによってアイドルが一番脳筋なんでしょうか。

なおリリモナの場合は藁人形でクリスレインを呼んできて
マリレーン本人かユイカで回収って動きができますね

※※※

しかしなかなか明かさない零の運命者ブラグドマイヤーはどうなることなんでしょう。
ヴァンガードではこれまた珍しく、主人公アキナが種族天使エンジェルのカードを切り札に、級友スオウが種族悪魔デーモンを切り札にして激突するだろうってあたりも王道極まりないところです。

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