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美女⑨ー➁

信一と有彩は施設で育った
無口な二人で互いにPTSD(心的外傷)で
歳も近かったせいか
口数は少なかったが互いの痛みを知っていた
お迎えに来る家族も居なかったが
先に養子として連れて行かれたのは
有彩だった
裕福な家に引き連れて行く新しい家族に向かって園内のギリギリまで走って思い切り信一は手を振った

妹の様に可愛がってた有彩を信一は嬉しかったと同時に寂しさもあった

数カ月後今度は信一が新しい家族になる事になった

有彩絶対見つけてまた会おうと誓った

この二人は滝田警部補が保護した二人だった

信一は子宝に恵まれない家族に養子縁組として迎えられた
幼き頃から義父は町医者として個人病院を設立義父の背中を見ながら
どこか懐かしく辛かった記憶が蘇り苦しさがあった。

信一は頭痛持ちでこれはPTSDから来る
フラッシュバックだった

信一にとって命がどれだけ尊いかを知ってるので進学は県立では有名な医学部にトップクラスの成績で入学した

時は戻り
親友でもあり兄に似てる信一を慕う有彩は悲しみに浸っていた

暗がりが怖く
新しい家族が受け入れられなかった
パパ ママ お兄ちゃん
幼い有彩にとって優しく接してくれる
義母と義父がいつしか本当の家族だと
上書きされた

有彩もまた綺麗な顔立ちで頭脳明晰で明るく成績優秀で医学部に進路を進められていた

トップクラスの県立病院を目指し
同級生には信一が居た

信一を最初見つけたのは有彩だった
有彩は信一にどこか懐かしさを思い
積極的に話しかけ目指す病院も一緒
趣味の1つでもあるロッククライミングを
誘ったのも有彩だった

信一は元々運動神経抜群で二人とも直ぐに仲良くなった。

きっかけはちょっとした悪戯だった

躾も良くて礼儀正しくが有彩にとって少し苦痛だった
パーティ好きの有彩の義母
有彩の際立った顔立ちをお披露目したくて
色んな所に連れて行った

有彩はそれが嫌だった
信一と二人で卒業パーティ誕生パーティを悪戯心で壊そうと目論見
自作自演を演じた

当日パーティで医学部だった二人にとって
毒を手に入れるのは容易なものだった

致死量寸前で薄くした毒を有彩は足先の親指との間に注射した

薄まってるとは言え毒は毒である
万が一に備え信一は有彩が見える場所に立った

ふらつきながら倒れ階段手前で予め用意しておいた解毒剤を刺し
救急搬送される迄に介護付き添った信一

青褪める有彩の顔色は透き通る程の美しさがあった

階段下でアーモンドの香りがすると滝田警部補に告げたのも信一だった

これが最初で最後の出会いになるとは…


次回に続く…

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