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美女⑧

山小屋に滞在中の信一と有彩
そして数名の若い女性達

若い女性は有彩が先程寸法で測った
手作りの洋服に着替えさせられ
ダイニングへ運ばれた

車椅子から腰をあげ
食卓前に座らせた若い女性は
お化粧もされ

遠い所で信一が着席するのを待っていた

切り分けられたステーキは牧場の牛肉

美味しそうなサラダとお肉とライス

かぶりつきたい衝動を抑えつつ

若い女性は周りを見渡す

薄暗い部屋にシャンデリア

この部屋にはそぐわない洋室

ホテルみたいなものさえ感じ取れた

信一は若い女性に向かって

有彩のように品のある食事をしてくれ
彼女は完璧なんだ
無駄口は吐かないでくれ
頭痛に響くから

温厚な信一が少し声を荒げた


この食事の後は
オーディションがあるから
粗相しないでくれ
頼んだよ

さあ!これが最後の食事になるかは
君次第だよ 麻里子

若い女性は驚きを隠せなかった
何故自分の名前を知ってるのか
オーディションとは?
わたしが生き延びるには完璧に有彩を演じなければと思った

なのに

信一と有彩が用意したのは紙コップと紙皿だった

ナイフもスプーンもプラスチック製だった

二人の意図が解らないまま

武器になれるものなど一つもなかった

愕然としたが

気を取り直して周りを目で見渡し

とりあえず食事をした

一瞬躊躇したが信一の何とも言えない悪魔のいけにえを楽しむかの如く凝視してるではないか

少しでも隙きを見せたら麻里子が命を落とすかもしれない

無駄口叩く暇さえ与えられない

麻里子 そう私は新崎麻里子
絶対に生き抜く

そう誓った瞬間

信一が
麻里子 君はここから生きて帰る事なんて出来ないんだよ

この建物は森に囲まれ後ろは岸壁だ
ひとけもない 
先程有彩が見せてくれただろう
綺麗な人間薔薇だよ

食事はここまでだ
楽しかったかい
美味しかったかい

さあ 食後は別室の防音の部屋で少し台詞の練習をしよう

君は台本読むだけだから

有彩が繕ってくれた君の服はやはりピッタリでお利口さんだったから

僕は楽しかったよ頭痛も無かったしね

僕は着替えてくるよ
それまでに用意しておいてくれ
麻里子 君は有彩にとても近い完璧に近いから期待してるよ

隣の別室は
信一が言うとおり防音だった
悲鳴をあげたい気持ちでいっぱいだったが
防音室は届かない

頑丈な扉が行方を遮った

とりあえず麻里子は設置されてるスクリーンの横に腰を掛け

周りを見渡した

先程テーブルの中でプラスチック製のフォークを尖らせた

信一が食事中の隙きを見計らって
麻里子は諦めてはいなかった

ガチャと扉を開ける音がなり
麻里子は袖口にフォークを隠した

動揺を隠さぬよう
麻里子は凛としたまま
立ち上がった

信一が麻里子に対しては紳士的だった

手を合わせ
本当に有彩によく似てる
僕には嬉しいよ

有彩君もそう思うだろう?
そうね双子みたいだわ

鏡に向かって肩に手を乗せて見せる

麻里子はこの瞬間を見逃さなかった
先程の尖らせておいたフォークで
有彩に傷を与えた

有彩はうぅと跪きながら睨めつける
麻里子は有彩が履かせたヒールで蹴りをした
麻里子は格闘技が好きなだけの未経験者ではあるものの それがこうじたのかクリーンヒットしたのである

信一が麻里子に注射器で眠らせるとぐったりとしたのを確認すると

麻里子に麻酔と痛み止めの針を射し点滴をした。

起きてからが本番だ麻里子
残念でならないよ
さよなら

一方で信一は大切にしていた有彩が傷つけられ激昂したものの

冷静に処置して包帯をぐるぐると巻き止血した。

麻里子君にはがっかりだよ
後数時間の命さ
もう君の人生は終わったと思ってくれ

信一は告げた


麻里子の命がどうなるか…
数時間後麻里子は生き残ってるのか…


次回に続く…



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