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第19回「私たちに必要なのは自分自身に対する共感なんですね。」川口 久美子氏

川口 久美子(かわぐち くみこ) 氏

大阪生まれ。コネクションプラクティス認定講師「マスターラスール」、インターネットラジオ番組「くみくみのHumming Soul Radio!」パーソナリティ。
幼少時からの神秘体験を経て、スピリチュアリティや心理学、ポジティブシンキングに興味を持ち、学び始める。子供の頃から英会話に興味を持ち、20代の頃にアメリカ、シアトルに留学。帰国後、コンピューターIT業界に身を置きながら、独自に心理学やカウンセリングのスキルを学び続ける。2009年にNVC(非暴力コミュニケーション)と出会い、衝撃を受け、これを身につけようと学びを深める。米国でのリーダーシップトレーニングやIIT(国際集中トレーニング)などに多く参加。海外からトレーナーを招聘し続け学びを深める。
2015年に、日本人3人目として、コネクションプラクティス認定講師の「ラスール」資格を米国で取得、2016年11月「マスターラスール」資格を米国で取得。2016年の1年間、ラスールジャパンの事務局長として活動。現在は、一般社団法人ラスールジャパンの共同創設者として、国内でコネクションプラクティスを広めるため動き続けている。

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テンプル――
今日はコネクション・プラクティス(以下、コネプラ)というコミュニケーションメソッドの講師、川口久美子さんにお話しをうかがいます。最初に少しご説明すると、私がコネプラと出会ったのは、ちょうど1年くらい前。サンプラザ中野くんから「光田さんにお勧めのセミナーがあります」とメールをもらったのがきっかけでした。中野くんは大阪でパート1から3までを一気に受け「大変満足しております」ということだったので、では私も受けてみようかと。東京での開催日程と私の予定が合わなかったので、2016年3月に名古屋でパート1、2を受けました。すぐに、これはテンプルのお客さまにもご紹介したいメソッドだと感じたので、2016年8月に入門編を主催し、60名以上の方にご参加いただきました。今年(2017年)も4月に川崎、仙台で入門編を開催予定です。

川口――
そうでしたね。テンプルさんの告知がきっかけでたくさんの方にコネプラを知っていただくことができ、とてもありがたかったです。東北でも開催したいとずっと思っていたので、仙台に行けること、本当に嬉しく思っています。

テンプル――
テンプルでも何か東北でセミナーをしたいと思っていたので、コネプラを東北の皆さんにお伝えできるのは光栄なことです。では、まずはじめに、久美子さんのバックグラウンド、コネプラに出会った経緯などをお聞かせただけますか?

川口――
2年前まで私はIT関連の仕事をしていました。コンピュータの仕事は自分の得意分野ではありましたが、それが本当にやりたいことだと感じてはおらず、生活のためという感じでした。仕事をしながらも、自分がやりたいこと、やるべきことは何だろう?とずっと探していました。趣味で朗読の活動もしていたんですが、ある日、1冊の本を紹介されました。それが『NVC、非暴力コミュニケーション(もしくは共感コミュニケーション)』と呼ばれる、人と人とがより繋がりやすい関係を築ける、思いやりをもったコミュニケーション法を学ぶ本でした。その本は英語からの翻訳本だったこともあり、理論的には理解できるんですが、やはりコミュニケーションは実際に体験しないと分からないところがありますよね。どうしたものかと思っていたところ、カナダからNVCトレーナーの先生が来日し、ワークショップを開かれたので参加しました。そこで初めて「共感的な聴かれ方」というのを体験し、また、涙が出るほどの感動が起こったこともあり、このコミュニケーション法をもっと深く学びたいと思いました。それが8年前の出来事です。

ただ、その頃はまだ日本でNVCは知られておらず、海外に行くか、海外から講師を呼んで学ぶしかない状況でした。それで海外に行って学ぶようになりました。NVCを学び始めて2、3年後、自分でも人に教え始めるようになった、というのがスタートです。

テンプル――
非暴力的なコミュニケーション、もしくは共感的な聴かれ方というのは、例えばどういった会話なのか、例をあげて教えていただけますか?

川口――
自分の中にある、そして相手の中にもある『本当に大切にしているもの』に繋がっていく、という考え方なんですね。例をあげると、あるカップルがいて、彼女が彼にLineを送ったけど全然返事が来ない、24時間経っても返事が来ないというときに、普通の伝え方だとこうなると思うんですよ。「私がメッセージ送ったのになんで読んで返事をしてくれないのよ! 私のことなんて大事じゃないんでしょ!」  そうすると彼の方は「そんなこと言ったって仕事が忙しくて気がつかなかったんだよ!」とギスギスした関係になってしまいます。これは共感的ではない対応です。でも相手が「なんで私のメッセージを読んでくれないのよ!」と言うということは、その中に、彼女が本当は欲しかったものが隠れています。それを共感的に聴いて彼が応えると、こうなります。「そうかぁ、返事がなくて悲しかったんだね。もっと繋がりを感じたり、大切にされてる実感が欲しかったの?」 つまりそう言ってきた彼女が本当に欲しかったことに繋がろうとする。それがNVCの考え方です。NVCでは、そういった大切にしていることや価値観を『ニーズ』と言っているんですが、そのニーズをもとに繋がっていこうとするのが共感的な聴き方、伝え方です。そのベースには、自分にも相手に対しても思いやりをもって繋がろうとする、考え方があります。

テンプル――
NVCの考え方をさらに発展させたものがコネプラと理解してもいいですか?

川口――
コネプラがNVCを発展させた、とは私は定義していません。NVCの基本は先ほどの例のように共感的に聴くということなんですが、それ以外にも色んなワークがたくさんあります。講師も学んだ人も自分で応用させていくので無数のワークが存在する、という状況になっています。私はNVCを今も教えていますが、コネプラはその無数にあるNVCの方法の中でも最も基本的な部分『共感的に繋がる』つまり『人の中に生き生きしている感情とニーズという命のエネルギーに繋がる』という部分にフォーカスし、主にその部分をNVCからいただいて使っています。そこにさらにハートマス研究所が提唱している『クイックコヒーランス法』を使ってハートと脳を同調させ、ヒラメキや洞察を得ていきます。つまり共感と洞察の組み合わせで繋がりを作っていくというスキルがコネクション・プラクティスです。シンプルで実践しやすく、そのため、伝えていきやすいという特徴をもっています。

このコネクション・プラクティスを始められたのは、リタマリー・ジョンソンというアメリカ人です。今はアメリカ在住ですが、15年ほどコスタリカに住んでいました。もともと平和活動をしていた女性で、NVCも学ばれています。ただNVCを実際の生活の中で使おうとすると難しさがあったんですね。そこで閃いたのが、すでに学んでいたクイックコヒーランス法で、共感とクイックコヒーランスを組み合わせればいいのではと思いつき、実際に使ってみると、スムーズに共感できるようになりました。それがコネクション・プラクティスのスタートです。当時のコスタリカ大統領にも認めていただき、コスタリカでは公立の小学校に導入され、すでに4万人の小学生が学んだという実績があります。今はアメリカに戻られていますので、アメリカでも早く子供たちに伝えられるようにしたいと動かれています。

テンプル――
私はイスラエルの幼稚園に2度ほど見学に行っているんですが、ある幼稚園では、子供たちが自分の感情を、友達や周りの人を傷つけることなくちゃんと伝えられるようになる、ということをテーマにされていました。日本人って、自分の感情をうまく伝えるのが下手ですし『周りの人と同じ』が基本なので、自分が何を感じたかを言わないよう我慢したり押し込めたりしがちですよね。自分や相手の感情を大切にすることを子供の時から学べるのは素晴らしいなぁと思いました。

川口――
そうですよねぇ。感情の奥にある互いのニーズを大事にして、優しく思いやりをもって相手に伝えることができる。コネプラではそれに加え、コヒーランスが入りますので、洞察を得ることにより、さらにうまく人間関係が回っていくようになると思います。日本でも、実はある市の教育委員会でコネプラを導入しようという動きがあり、学校の先生に教えられるようになりそうで、私もとても楽しみにしています。

テンプル――
それは楽しみですね。学校の先生が共感的に子供たちの話が聞けるようになれば、子供たちの心の安定と成長にずいぶん寄与しますよね。いいなぁ。私も子供の頃に学びたかったです。NVCも素晴らしいメソッドですが、コネプラの方が子供たちに受け入れやすい感じですか?

川口――
NVCとコネプラの何が違うかというと、NVCの方法は無数にあり、どのように教えるなど、決まったルールがあったり、体系立てられているわけではないので、学ぶのに時間がかかります。NVCのスケールが大きいこともあって私も人に伝えられるようになるのに2、3年かかりました。でもコネプラはシンプルで、コースもテキストも決まっているので、ある程度学べばすぐに使えるようになり、また同時に人に伝えられるようにもなります。そのシンプルさと速さが違うところです。

コネプラで使うクイックコヒーランスで得る洞察は、今までの自分の頭では思いつかないようなヒントがもらえることがあるんです。展開も早いです。感情とニーズで繋がるだけでも気持が落ちつき、優しい感じになり、大事にされてよかったなぁと思えます。でも大事にされて良かった、だけでは終わらず「でも私はホントは手に入れたいものがある、解決したいことがある」というときは解決策や行動プランが欲しいですよね、それが手に入れられるようになります。

テンプル――
クイックコヒーランス法というのが、いまお話しに出てきましたが、これについて少し解説をしていただけますか?

川口――
クイックコヒーランス法というのはハートマス研究所が開発したテクニックの1つです。他にもいくつかテクニックはありますが、これが一番簡単なのでコネプラの中ではこのテクニックを、契約に基づき使わせていただいています。手順は3つ。
1つめはハートフォーカス。私たちは始終ずっと頭で考えていますよね。瞑想しても頭は雑念で一杯になります。頭や脳みそはずっと動いて理論的に考えたり分析したりはとても得意です。その頭を休めるために、強制的に心臓に意識を向けます。

2つめのステップは、心臓で呼吸をするイメージをします。タイミングも決まっており、5秒で吸って5秒で吐く。これは科学的に意味のあることなのですが、この心臓での呼吸を数回繰り返します。これだけでも十分気持ちは落ち着いてきます。

3つめのステップで、心臓を感謝で満たします。そのことを思うだけで無条件にありがたいと思えることを思い浮かべます。私はうちのニャンコが大好きで、彼らは愛にあふれ愛しかないような存在じゃないですか。その猫たちを私は思い浮べるとありがたいなぁという気持ちになります。そんな愛に繋がるようなもの、子供でも動物でも大自然でも何でもいいので思い浮かべ、その感謝でハートを満たします。意外と難しいのは自分のパートナーなんですが(いい時もあれば悪いときもありますからね)、ともかくも無条件に感謝が溢れるものを1つ自分の中に決めておくといいです。最近、心臓にも脳があるということが分かってきたんですね。その心臓の脳から感謝が溢れ出る。そんなイメージです。この3ステップをクセづけていくと、「ハートフォーカス」と言うだけで、心がウフって感じになって落ち着いていきます。

これにどのような効果があるかというと、まずは気持が落ち着く。これだけでリラックスして頭脳が明晰に働き始めます。またコヒーランス状態の心臓は、心臓がベストの状態になっている。つまりそういったベスト状態をコヒーランス状態といいます。心臓や脳だけではなく全身のあらゆる臓器、細胞がゆったりした波形になり、身体としてとてもよい状態になります。脳が明晰になっているので発想力が高まり、洞察と言われるものがポン!と沸いてきたりします。

テンプル――
対面でコミュニケーションしているときは「私は洞察を得るためにコヒーランスをするからちょっと待ってて!」とはいかないですよね。毎回トイレに駆け込んでするわけにもいかず…。話している最中、久美子さんはどうやってコヒーランス状態になられているんですか?

川口――
お互いがコネプラ実践者だったら、「じゃあ、コヒーランスやらない?」と一緒にやっていくこともあります。相手がコネプラ知らない場合には、話を聞きながらこっそりコヒーランス状態になっているときもあります。コヒーランスって必ず手順通りにやらないといけないということではなく、在り方だと思うんですね。自分の意識をハートに向け、ハートで呼吸をするイメージは目を開けていても黙っていてもできます。大事なポイントはそのあと感謝で満たすということです。ありがたいなぁと…。たとえ目の前に怒りに燃えている人がいたとしても、自分でコヒーランス状態にはなれるので、どんな時でも出来るのはとても便利です。

テンプル――
久美子さんがコネプラを実践するようになってどれくらいですか? またコネプラを実践し始めてからの体験談を教えていただけますか?

川口――
2年前の5月にアメリカでコネプラを教える資格をとってきましたが、学び始めたのは3年前の10月です。体験談はありすぎるほどありますが、個人的にとても助かっているのはコネプラ後、体調がものすごく良くなった、ということです。大病をしたわけではないんですが、とにかく以前は疲れやすく、仕事から帰ったらまず2、3時間寝ないと何も出来ませんでした。その後で自分の用事をするのでどうしても夜更かしになってしまう…。季節の変わり目には大風邪をひき、1年のうち何度も寝込んでいました。何故それを思い出したかというと、フェイスブックの3年前の自分の書き込みに「今日も調子が悪い、週末は38度の熱を出し寝込んだ」みたいなことを書いている。今の私からはありえません! この2、3年に知り合った人は「久美子さんはいつも元気ですねー」とびっくりされ、それ以前の知り合いからは「どうしたの?そんなに元気になって」とびっくりされるくらいに体調がいいんです。体調が良いだけではなくエネルギッシュな状態がずっと続いています。夜もすぐに寝て、パッと目がさめ、起きたらすぐに活動できる。本当にありがたいなぁと思います。今、わたしは53歳なのですが、これまでの人生で、今が一番、体調が良くてエネルギッシュに毎日活動できています。20代の頃より体感的に、元気です。時間が効率的に使えるのでとてもありがたいです。

コネクションプラクティスの特徴は、ある程度バックグラウンドがしっかりしていること。ハートマス研究所ではハートと脳が同期したとき、ハートを感謝で満たしたときに身体はどうなるか、あるいは反対にハートを怒りで満たしたら身体がどうなるかなど、あらゆることを研究しています。そういう科学的な研究をされているので根拠と信頼が増すということもあります。

体験談に話をもどすと、体感覚として体温が上がっている感じがあります。コヒーランスをやればやるほど手が赤くなり、その手で身体を触ると熱く感じます。それは私だけではなく受講生の皆さんも同じような体験をされています。フィジカルな変化は割とすぐに感じられる1つです。

洞察については、私は2年前まで会社員をしていましたが、お金も貯金も何もありませんでした。それなのに会社を辞めると決めました。オフィスを借りるにしてもお金はどうしたら?と普通は思いますよね。どうしたかというと、私の『持続可能性を満たす』というニーズに繋がったあと、自分のハートに問いかけたんですね「私は何を知るべきですか?」と。それを何度も何日もやったんですが、ポーンと浮かんできた1つが『NVCをオンラインでやればいい』ということでした。当時そういったことをやっている人は誰もいなかったし、そういう発想もなかったんですが、やり始めたらとても好評で今も定期的にずっとやり続けています。遠方の方にも喜んでいただけ、私も経済的な持続可能性に繋がっています。自分のやりたいこと、ニーズは分かったけど、じゃあどうしたらいいの?というとき、頭で考えただけではできない発想の限界を超えられるというのが洞察の特徴かなと思います。

テンプル――
私以外にもそういう体験はたくさんの人がしています。今日は、その一人、高橋真澄さんに同席してもらっていますので、高橋さんの体験談を話してもらってもいいでしょうか? 彼は2016年1月にコネプラを学ばれました。

高橋――
まず起こったことは、当時小学校5年生の息子が原因不明のまま1年以上立てなかったんですが、コネクションプラクティスのパート2が終わったとき、僕の息子に対しての関わりが大きく変わったんですね。そしたら息子が立てるようになったんです。

テンプル――
ええー!? ちょっとよく分からないのですが、その時の状況をもう少し具体的にお話ししていただいていいでしょうか?

高橋――
小学校4年になるころ、ある日突然息子は「お父さん、立てない」と言って、立てなくなったんですね。足腰に全く力が入らず、病院で検査をしても原因不明。遺伝的な異常か精神的な何かではないか?この感じだと精神的な要因かもしれませんね、と医師には言われていました。しばらくカウンセリングに通いながら様子を見ていたら松葉づえで立てるところまでは回復しましたが、それ以上の改善はなく、去年の1月も自力では立てない状態でした。

コネプラのパート2では『繋がりの道を歩く』というワークがあります。僕は息子が立てないということをテーマにしてその道を歩きました。まず、僕がそのことについて何を感じ何を望んでいるのかに気づき、次に息子が立てないということについて何を感じ、何を欲しているのか、それを僕が推測しながら気づいていきます。そして最後に僕と息子がこの問題についてこれからどう取り組んでいくのかを見出すためにクイックコヒーランスで洞察を得て、僕と息子がそれぞれ欲しいものを満たすための解決策を考える。そういうプロセスの道を歩きました。

その時、初めて深く息子の、寂しいとか辛いという気持ちの大きさに気づくことができました。そしてお父さんともっと一緒にいたい、という気持ちにも気づきました。そして洞察を得たときに近所の散歩コースが見えてきたので「そういえば最近、息子と散歩してないなぁ。帰ったら一緒に散歩に行かないか息子に聞いてみよう」という行動プランができました。コースが終わり自宅に帰って、息子に「今度の休みに散歩に行く?」と聞いてみました。すると輝くような笑顔で「行きたい!」と言ってくれました。その時ある気づきが起きて、息子に「もしかしてお父さんと気持や感情で繋がっていることが大事なの?」と自然に聞くことができました。しばらく息子は考えている様子でしたが、また輝くような笑顔で「うん!」と言ってくれました。そういう会話があった日の夕方、息子は歩けるようになりました。

テンプル――
家に戻られて息子さんが歩けるようになるまで時間的にどれくらいあったんですか?

高橋――
朝8時に息子とその会話をし、歩けるようになったと連絡が入ったのが午後3時くらいです。それを聞いたときはあまりに驚いて腰が抜けました。

テンプル――
色んな意味で、びっくりしています。人って、たったそれだけのことで歩けなくなり、たったそれだけのことで歩けるようになっちゃうものなんですね。身体の神秘としかいいようがないです。

高橋――
もう1つ、身体の神秘を感じた別の体験があるので、シェアしていいですか? 僕はアメリカの合宿から戻ってきたばかりなんですが、3日ほど前、合宿ではこんなことがあったあんな体験をした・・・と妻と話しをしていました。すると何か妻の心に引っかかりを感じたので、妻のその心のモヤモヤについて共感的に妻の話を聴いたり、コヒーランスを使ってワークをしました。すると妻の子供の頃の心の傷が見えてきました。NVCでは心の傷を癒すためのワークがあるのでそれを妻と実践していたら妻の心の傷がだんだん癒えてきました。だいたい2時間くらい話していたと思います。そして今朝、妻が起きてきて「肌のハリが全然違う!」というんですよ。すごい艶々していると。

テンプル――
羨ましい! 私もやってほしい! その2時間のセッション。

高橋――
ホントに劇的に変わっていて、表情も柔らかくなって「他に何かやった?」と聞いても「いや、あの夜、子供の頃からずっと心にあったつっかえが消えたからだ」と言うんです。子供の頃、妻の心の中に芽生えていた「私はいらない子じゃないのか?」という思いがその後の人生のあらゆるところに影響を与えていたので、それを癒していったんですが、その癒しが起こった2日後、妻の肌や艶々になっていたという・・・。

テンプル――
普通、奥様がこういうことを勉強しても、夫の理解と協力が得られず、うるさがれるだけですが、ご主人が学ばれ、そして奥様の話を共感的にずっと聴いてもらえるというのは、それだけで十分癒しですよね。その内なる癒しが肌の艶に出てくるというのも面白いです。そして、同じ女性として、愛する男性が自分の話を繋がりと共感を感じながら聴いてくれるという奥様が羨ましくてしょうがないですねぇ。IT会社の社長さんとは思えないですよねー。

高橋――
いやITの「I」は愛ですよ。愛がないまま作られたソフトは結局は使いずらくて誰にも使われないソフトになってしまうんですよ。

川口――
身体の変化ということで思い出したことがあります。ある女性の参加者さんがお腹を切って臓器を取られるという手術をされました。手術後の痛みが激しく七転八倒するような痛みだったそうです。NVCのワークの1つに臓器に共感する、身体や細胞に共感するというのがあるんですが、身体の声を聴いてみると内臓が嘆いているのを感じたそうです。「なんであの臓器を取ってしまったんだ。自分たちの大切な仲間がいなくなったことにどう責任とってくれるんだ」という痛みや嘆き、悲しみが伝わってきました。コヒーランスするとその怒りから痛みが来ていることに気づいたそうです。そしてコヒーランスしながら「辛かったねー、仲間を失わせてごめんねー。辛かったのは仲間が大事だったんだね、大切にしてほしかったんだね」と細胞や臓器に共感していくと、その痛みがサーっと嘘みたいに引き、次の日は痛み止めがなくても過ごせるようになったそうなんです。

頭で考えると、こんなことあり得ないじゃないですか。痛みは薬がないと止められないと思いますよね。でもそんな左脳的な考えじゃない発想や気づきが沸いてくるんです、ハートに聞くと。私たちに必要なのは自分自身に対する共感なんですね。自分がどれだけ傷ついているか、嘆きや痛みを抱えているか。そこに本当に繋がっていく。痛みも知ってほしいから痛みを発しているし、病気も何か知ってほしいから病気になっているのかもしれませんね。それに対し「そうだね。辛かったね、悲しかったね。これまで分かってあげられなくてごめんね」と共感することで変容が起こってきます。

テンプル――
私たちホリスティック医学を学んでいる人間は、割と簡単に「身体の声を聴く」って言うんですね。でもホントのところ、聴き方をよく知らなかったりするんです。でもコヒーランスって、HOW TOとしてやり方がきっちり確立されているので、聴き方が分からないという人に伝えられる、すごくいいメソッドですよね。

川口――
だから腰が痛いという時にでも「腰さん、何か言いたいことがある?」と聞くといいです。細胞はよく喋ってくれますよ。痛みだけではなく、違和感や内側にある何かモヤモヤしたものにも聞くといいです。身体でも仕事でも、言葉にできない「何か」があったら、その「何か」に聞いてみると喋ってくれます。コヒーランスして少し落ち着いたときに聞くと、ものすごい出てきます。仕事だと、その組み合わせは思いつかなかった、そんな価値があるなんてそれまで知らなかったという革新的なアイディアが出てきたりします。

テンプル――
テンプルのお客様は健康と同じくらい不思議なお話しが好きな方が多いので、スピ系、不思議系のエピソードはないですか? ここまででも十分不思議ではありますが…。

川口――
これは私の体験ではなく参加者さんに起こった出来事ですが、コヒーランスをして洞察を得る方法をある参加者さんにお伝えしました。するとその夜、その方が寝ているとき、その方の心臓がパカッと開いて天から手術チームが降りてきて、心臓の入れ替え手術をされたそうなんです。その時にこれまで自分が知りたかったこと、これから知るべきこと全てを知ることができたそうです。人は亡くなるとき走馬燈のように自分の人生を見せられるといいますよね。そんな感じで色んなことが全て分かったと言っていました。もともとスピリチュアルなことを仕事としてされている方だったんですが、コヒーランスがキッカケとなって起こったみたいです。

これはかなりぶっ飛んだエピソードですが、ここまででなくても、夜寝る前、ハートに「いま私が知っておくべきことはありますか?」と聞いて寝ておくと、翌朝、通勤の時や家事の時にふと閃くということはよくあります。ハートに聞いておくと、だいたいのことは分かってくるというのが私の実感です。答えが得られないときには、今はそれを知るタイミングではない、ということもなんとなく分かってきました。他にもシンクロニシティがよく起こるようになった、というのもありますね。

テンプル――
洞察って、深くそのことについて考え続け、そのあとで分かる気づき、というふうに意味をとらえていたんですが、コネプラでいう洞察は、左脳で考えることを明け渡し閃きを待つって感じですよね。

川口――
洞察って本当にすごくて、時に、いったいこのアイディアはどこからやって来たのかとびっくりするようなことがあります。予言や予知のような洞察がもたらされることもあるんです。私の体験を1つご紹介すると、2年前、アメリカにコネプラの試験を受けに行きました。サンフランシスコへの直行便が取れず、バンクーバー経由で行くことになったんですが、乗継の飛行機が遅れ、いったい何時に離陸できるのか分からず困ったなぁと思っていました。「こういうときこそコヒーランスだ」とやってみたら最初に出てきたイメージが富士山。意味が分からないので「どういう意味?」とまたコヒーランスで聴いたら「大丈夫だからコーヒーでも飲んでゆっくり待ってて」というものだったので、コーヒーを飲みながら乗継便の到着を待ちました。ようやく乗った飛行機は、乗っている時間は短いですがカナダからなので国際便なんですね。そして何故かその飛行機で日本の映画が見られたんです。それも松竹の。だから、どーんと冒頭に富士山が出てきて「これかー、洞察、面白すぎー!」と思っていたんです。試験のとき、自分の洞察で面白いエピソードはあるか?と創始者のリタマリーに聞かれたので「いや、それが、富士山がね」と、さっそく披露したのは言うまでもありません。

何故、富士山が洞察で出てきたのかを後から考えたんですが、当時、コネプラはまだ誰もやっておらず、そして私も始めたばかりで「洞察って、私の考えじゃないのかな?」と思うところもあったんですね。本当に自分の考えを超えたところから来ているのか確信がまだなかったんです。その私の洞察に対する確信の無さに対し「違うよ、洞察はあなたの考えじゃないよ」というメッセージだったのではないかなと今は思っています。

それから2年間こうやって伝え出すと、いっぱい同じような体験談を聞くようになったんですね。例えば、洞察のワークを一緒にやった参加者さんが「やっと相手に対し思いやりの心を持てるようになりました」と言ったとたんに、その相手から電話がかかってくるとか。「何故このタイミングでー!」と一緒にいた人は全員鳥肌ものでした。そんなふうに、ありえないタイミングで物事が起こったりするんです。あるいは、グループでワークをすると、こっちの人の洞察が相手の人の解決策になったり、全く意味不明のビジョンが他の参加者には号泣ものの意味あるビジョンだったり、人は繋がっているとしか思えない出来事もたくさんありました。

ハートから情報を得るという能力は、人として誰でも持っているんだなということが最近分かってきました。現代人は携帯やパソコンなど便利なものがたくさんあって使わなくなって忘れ去られていますが、昔の人は普通にやっていたんだろうと思います。これまでの科学で、ハートは単なる心臓で、血液を送るポンプであると思いこまされてきたけれど、ハートこそ何かを繋ぐ入口なんじゃないかと。コヒーランスは子供から高齢者まで誰でもできてしまうことなので、まずはやってみて、としか言いようがないんですが、このシンプルな方法で鳥肌ものの洞察が起きるので、この短い期間に人から人へと伝わっているのかなぁと思います。毎日が感動です。

テンプル――
ハートはここって、誰もが心臓に手をあてるのも不思議ですよね。心は心臓にあるって誰もが無意識に感じているんでしょうか。
さて、コネプラのワークで、自分の感情やニーズに気づく、感情に名前をつける、というのがとても面白かったんですが、これについてお話しをしていただいていいですか?

川口――
人は誰でも、子供の頃のトラウマと呼ばれるような出来事があり、それに似た出来事が起こると無意識に反応してしまうんですね。他人から見ると「そこまで怒らなくてもいいのに」とか「そこまで怖がらなくでもいいのに」と思うような強い反応が起きることがありますよね。これは脳科学の分野になりますが、私たちの脳には偏桃体という部分があり、私たちの命を守ろうとする役割があります。例えば、犬に咬まれた体験がある人は小さな犬にでも「また咬まれるかも」と脳の一部の、偏桃体が反応してしまいます。すると犬を蹴ったり、逃げたり身体が固まったりします。そういった反応を鎮める方法の1つが「共感」なんです。「そうなんだねー。辛かったね、怖かったよね」とその時の感情に「怖かった」「辛かった」と名前をつける。あー、私は怖かったんだ、辛かったんだと気づくことで反応している偏桃体を鎮めることができます。またコヒーランスも偏桃体を鎮める働きがあります。コヒーランスをすることで、ゆっくり考え、大脳皮質で理性的に物事をとらえられるようになる。だから子供の頃怖い思いをしたけど、この犬は小さいし可愛い。「あー、可愛いワンちゃんですねー」と言えるようになります。

また、ニーズに気づくというのは、犬の例でお話しすると「本当に欲しかったのは『身の安全』や『安心』だったんだね。怖かったんだね」とその人のニーズに繋がることでさらに落ち着いていきます。

感情とニーズの関係性は、気持ちは入口。その奥にあるニーズが満たされてないと「怖い」とか「悲しい」というネガティブな感情になって現れてくる。逆にいうとニーズが満たされていると、温かいなぁ、安心だなぁというポジティブな反応になって現れてきます。ですからネガティブな感情を悪いものだとは考えていません。怒っている人がいたなら「あぁ、この人がこんなに怒っているのは、この人の中に満たされていない大切なニーズがあるんだなぁ。尊重されたいのかなぁ、信頼が大事なのかなぁ」と感じられるようになってきます。このニーズは、国や人種、性別などに左右されない、人間が人間として生きるときに必要とされるものです。

テンプル――
私は、例えば「悲しい」「怒っている」とだけ表現していた感情の背後に、大切にしたい、大切にしてもらいたいニーズが心の奥底にあったのだと自分で気づいたとき、なぜ自分が悲しくなるのか、怒ってしまうのかの理由を得心した感じがありました。

川口――
ある参加者さんに「その人とは絶対に共感したくありませんし、出来ません。それは許せということですか!許しがキーなんですか」と、抵抗されたことがあります。その時に思い出したのは、コネプラでお伝えしている「許すことさえ必要なくなります」という言葉でした。許す必要があると思っている間は、相手が悪いという考えにまだとらわれています。「いい、悪い」「正しい、間違っている」という世界にいます。その世界から抜け出すこと。それがコネプラの目指すところです。どんな人にもそこには美しいニーズがあるというところに繋がれると、許す必要もなくなってきます。

テンプル――
そこに誰もが到達できれば、世界平和も夢ではなくなりますよね。その世界を目指して久美子さんはコネプラを伝え続けられていらっしゃるんですね。

川口――
コネプラを伝えることは、本当に喜びです。NVCの言葉に「喜びでないならやらない方がマシだ」というのがあります。4年前のNVCの熱海合宿で海を見ているとき、雷に打たれたかのような衝撃で「私は絶対これを伝えたい、これを伝えられるようになりたい」という思いが沸き「でも、どうしたらいいか分からない~」と大号泣したことがあります。英語ではCallingといいますが、これが私の使命なんだということが分かりました。

コネプラとNVCを教えていると、参加者さんの目がキラリと光る瞬間に立ち会えるんですね。日本に生まれたことは、それだけで幸福だと思うんですが、日本は自殺者が多い国ですし、暗い瞳をして生きている方も実際多いですよね。何故、自分を愛せない人が多いんだろう、虚しさを抱えて生きている人がいるのだろうと思っていたときに、コネプラを受けて下さった方々から「初めて生きる喜びを感じました」「私が生きる意味が分かりました」と、喜びに目を輝かせて、嬉しそうに話して下さったり、「許せないと思っていた人を私は許す必要もなかった。あの人は本当は私を思いやってくれていたのが分かりました」と感想を述べて下さったり、それは本当に美しい場面に何度も立ち会うことでき、私も一緒に号泣することが多いんです。それは幸せでありがたいことだと思います。

クイックコヒーランステクニックというのは5分あればお伝えできます。だから自分と繋がれない人、生きにくさを感じている人には、すぐには無理かもしれませんが、いずれ自分の人生を生きられるヒントはもらえると思います。困っているときにはハートは必ず答えてくれることが分かっています。自分の魂が本当に望んでいることを、別に占い師やサイキックに聞くことなく、自分で見つけることができますから、自分の生きる目的を見つけたいと思っている方には受けていただきたいなと思います。

テンプル――
テンプルで開催したのは、コネクション・プラクティスの入門編ですが、その後に学ぶコースが1、2,3とありますよね。せっかくなので、それもご説明していただけますか?

川口――
基礎コースはパート1,2、3とあります。パート1は自分の中に平和を作るということで、共感のやり方、コヒーランスを使った繋がりのプロセスを学びます。これを学ぶことで、自分が困ったときに自分のニーズに気づいて、答えを得られるようになります。パート2では『繋がりの道』というものを歩きます。これは対立している人、過去の人でも今の人でも、亡くなった人とでもできるんですが、自分の心に刺さっている棘をとっていきます。パート3では『繋がりの調停』を学びます。これは対立している二人を調停する方法で、ロールプレイングで行っていきます。この後でコネプラを教える側、その人たちのことを『ラスール』と呼ぶんですが、そのラスールになりたかったら、そのトレーニングと認定試験を受けることができます。まだコネプラが日本に伝わって2年ほどですが、すでに16名のラスールがおり、今年のうちにさらに20名ほど増える予定です。

川口――
基礎コースはパート1,2、3とあります。パート1は自分の中に平和を作るということで、共感のやり方、コヒーランスを使った繋がりのプロセスを学びます。これを学ぶことで、自分が困ったときに自分のニーズに気づいて、答えを得られるようになります。パート2では『繋がりの道』というものを歩きます。これは対立している人、過去の人でも今の人でも、亡くなった人とでもできるんですが、自分の心に刺さっている棘をとっていきます。パート3では『繋がりの調停』を学びます。これは対立している二人を調停する方法で、ロールプレイングで行っていきます。この後でコネプラを教える側、その人たちのことを『ラスール』と呼ぶんですが、そのラスールになりたかったら、そのトレーニングと認定試験を受けることができます。まだコネプラが日本に伝わって2年ほどですが、すでに16名のラスールがおり、今年(2017年)のうちにさらに20名ほど増える予定です。

テンプル――
では最後の質問です。今後のビジョン、久美子さんご自身のビジョンでもいいですし、コネクション・プラクティスとしてのビジョンでもいいですし、シェアしていただいていいでしょうか?

川口――
コネプラを始めたときに受け取ったビジョンが1つあります。抽象的ですが、まず私のロウソクに火がつき、その周りのロウソクにも火がついて、その1本1本のロウソクがまた広がって、その周りのロウソクにも火がつく。それが日本いっぱいに広がり、やがて日本地図になり世界地図になり、地球儀になっていく、日本から平和の光が世界に広がっていくというビジョンをもらったんですね。いま起こっているのは、最初、私一人だったコネクション・プラクティスの火が、まずは16人の人に伝わりました。さらに20名の人に伝わっていきます。ラスールジャパンとしてはまずラスールを100人、各都道府県で毎月何かの講座がある、ということを目指しています。プラス学校教育の中に取り入れてもらいたいという希望があり、公式でなくても、常に誰か子供が学んでいる状態にしたいと思っています。私個人としては、ずっと計画したこと以上のことが起こり続けているので計画は立ててないんです。

テンプル――
テンプルでセミナーします。定員は60名でいいですか? 仙台は100人まで入る部屋ですよ、と久美子さんの枠を一気に外しましたしね。

川口――
本当にありがたいことです。ずっと頭で考えている以上のことが起こっています。だから常に、いま私がやりたいのはどれ? どれを選択する?ということをハートに問いかけています。アイディアはたくさん浮かびますが、常に自分のハートの声に従っています。ワークショップ情報としては、コネプラも素晴らしいですが、NVCの深さもぜひ皆さんに体験していただきたく、高橋さんとペアで、今と未来を居心地よく生きられるようになるための『今と未来のためのワークショップ』を開催しています。これはコネプラの入門を学んでいただいた後、NVCの様々なワークを体験していただきます。スケジュールについてはHPでご確認下さい。また今後は高橋真澄さんと一緒に夫婦やパートナーのためのコネクション・プラクティス合宿をしようかなと思っています。

テンプル――
それはいいですねー。愛と共感に基づいたコミュニケーションができるご夫婦をたくさん生み出して下さい。ご夫婦そろってお肌艶々の若返りが起こるかもしれませんね。


今日は貴重なお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。
インタビュー、構成:光田菜央子

『完全につながる コネクション・プラクティス』
『NVC人と人との関係にいのちを吹き込む法』
『「なんでわかってくれないの!」と思ったときに読む本』


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