初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MAX-03 アッザム』
●開発経緯
南極条約締結から地球侵攻作戦の発動により、短期決着が絶望的となったジオン公国軍は圧倒的な国力差を補うため、汎用性を犠牲にする代わりに“MS以上の高火力や高機動、重装甲”を持つ一騎当千の局地戦用兵器の開発、“モビルアーマー構想”を打ち出すことになります。
本機は一応モビルアーマーに分類されますが、開発がスタートした時点でモビルアーマー構想は確立していませんでした。与えられた型式番号“MAX”はモビルアーマーというカテゴリーやそのフォーマットを確立させるための実験機を表すものだと考えられます。
本機は開戦前に開発された月面用の移動砲座“G87 ルナタンク”を地上戦用に改修したもので、資料によってはモビルアーマーではなく、“重機動砲座”とも呼ばれます。
●ミノフスキー・クラフトの実験機
装備も実験的に導入されたものが多く、その中でも大きく目を引くのが“ミノフスキー・クラフト”です。
機体の下部にIフィールドの層を継続的に形成し、その反発力で機体を浮上させるという仕組みで、連邦軍のペガサス級強襲揚陸艦もこのミノフスキー・クラフトを利用して、重力圏内で飛行しています。
本機はMSと比較すると大型ではありましたが、大型艦艇に搭載するのがやっとという新機軸の小型化は困難を極め、連続稼働時間は僅か5分程度と十分な性能を発揮するまでには至りませんでした。そのため、各脚部に2基ずつ計8基のホバリング用ローターを装備することで、重力圏内での浮上を補っていました。
ただ、これだけだと、単に空中に浮かぶだけなので、推進用のスラスターが搭載されているのですが、ミノフスキー・クラフトの稼働には多大な電力を必要とするため、推力は高くありません。
また、脚部も機体を支えるためのものでしかなく、歩行能力もありません。
地上戦における機動力の確保や地形を問わず運用できるように与えられた飛行能力でしたが、決して上手くいったと言えるものではありませんでした。
●兵装も実験的側面が強い
主兵装として、2連装メガ粒子砲を8基装備しています。開発当時、多大な電力を必要とするメガ粒子砲は艦艇や拠点でのみ運用されていましたが、本機は熱核反応炉を4基搭載することで、その運用を可能としました。
コックピットは複座式となっており、操縦手と射撃手の2名で運用しますが、非常時にはオートパイロット機能を使用することで1名でも運用することも可能です。
しかし、先ほども触れましたが、ミノフスキー・クラフトの稼働に多くの電力を取られてしまったため、十分な出力を得ることができず、威力はそれほど高いものではありませんでした。
さらに特殊兵装として、“アッザム・リーダー”を搭載しています。
機体底部からカプセルを射出し、対象に“リーダー”と呼ばれる特殊な粉末を散布します。続いて、放熱磁場発生装置を射出し、そこから展開されるワイヤーで対象を取り囲み、電磁波を放射することで、最高4000度となる高熱でオーバーヒートさせるという巨大な電子レンジとでも言うべき兵装です。
ただ、これも踏むべき手順が多く、実用レベルには達していないと言わざるを得ませんでした。
●スペック
全高:24.0m
本体重量:300t
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:マ・クベ、キシリア・ザビほか公国軍兵士
●基本武装
○2連装メガ粒子砲
機体の四方上下に装備されています。上方のものはある程度の仰角は付けられますが、旋回できないため、射角は広くありません。一方、下方のものは旋回可能となっていることから、空対地攻撃が基本ということでしょう。ミノフスキー・クラフトの稼働に電力を取られてしまうため、出力は不足で威力はそれほど高くありません。
○アッザム・リーダー
機体底部に装備されています。まず、カプセルを射出し、対象にリーダーと呼ばれる特殊な粉末を散布します。続けて、放熱磁場発生装置を射出し、そこから展開されるワイヤーで対象を取り囲み、電磁波を放射することで、対象を最高4000度の高熱でオーバーヒートさせます。攻撃手順が多く、行動不能に陥るまでに時間がかかるなど、実用レベルには達していませんでした。
●後のMA開発に貢献
本機は2機が製造され、中央アジアとオーストラリアでその姿が確認されています。しかし、モビルアーマー構想が確立する以前の機体だということもあり、欠陥だらけの失敗作だと言わざるを得ない性能でした。
ただ、後のMA開発の方向性を確立するための実験機としての役割は十分に果たしたとは言えるでしょう。特殊な装備に関しても、ミノフスキー・クラフトはアプサラスに、アッザム・リーダーはヴァル・ヴァロに引き継がれることになります。