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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『ムサイ級軽巡洋艦』

●開発経緯

 ジオン公国は地球連邦軍との圧倒的な戦力差を覆すための秘策として、ミノフスキー粒子を利用しました。これを高濃度に散布すると、広範囲で電波障害が起こり、レーダーや誘導兵器などを無効化することができたのです。

 しかし、その影響を受けるのは、公国軍も同じです。そこでミノフスキー粒子散布下に最適化した新たな機動兵器“モビルスーツ”を開発したのです。そして、同時にその母艦となる宇宙艦艇も求められ、開発されたのが“ムサイ級軽巡洋艦”です。

●史上初のMS運用艦

 MSの運用を前提に開発されたため、艦橋下にはMSデッキが設置され、帰艦したMSの冷却装置も備えられています。“MS-06”タイプであれば、4機搭載することができます。

 しかし、限られたスペースを効率良く利用するため、MS発進口が後方に設置されたことで、発進後に自力で前方へ回らなければならず、推進剤を無駄に消費することになるというデメリットがありました。

 MSデッキの側面に設置された円形のハッチは、“パプア級補給艦”のコンベアパイプと接続し、補給物資を搬入するために用いられます。

 推進機関としては、熱核ロケットエンジンが2基搭載されています。艦体から支柱が伸び、その先に分散配置されているのは、ダメージコントロールを考慮しての設計ですが、その副作用として、全幅は連邦軍の“マゼラン級宇宙戦艦”を上回っています。

 この2つのエンジンブロックの間には、HLVが接続できるようになっており、開発の段階から地球への侵攻も見据えられていたことが窺えます。

 武装としては、2連装メガ粒子砲が3基、大型ミサイルランチャーが2基、小型ミサイルランチャーが10基装備されていますが、艦艇同士の乱戦は想定されておらず、火力は前方に集中しています。そのため、正面を切っての撃ち合いでは、“サラミス級宇宙巡洋艦”の火力を上回りますが、死角が多いという弱点を持っています。

 また、近接防御用の対空機銃を持っておらず、ミサイルや肉薄する戦闘機などの迎撃はMSによって行われていました。しかし、連邦軍もMSを投入するようになると、その数の多さも相まって、迎撃は困難を極め、多くの本級が撃沈されることになりました。

 初のMS運用艦ということもあり、様々な問題を抱えていた本級ですが、公国軍の主力艦として大量に建造され、緒戦では大活躍を見せました。

“ムサイ級軽巡洋艦”

●コムサイ

 本級には大気圏突入能力はありませんが、艦首に大気圏突入カプセル“コムサイ”が搭載されています。上下逆さに接続されており、射出後に回転して、姿勢を変える仕組みになっています。

 初速は本体から得ることができるため、姿勢制御以外に推進剤を使用することなく、大気圏突入を行うことができます。

 推進機関として、熱核ロケットエンジンが2基搭載され、本体からも揚力を発生させることができるリフティングボディ機となっているため、重力圏で飛行することができます。

 機首にバルカン砲を2門内蔵しており、それなりの交戦能力はありますが、ミノフスキー粒子散布下での視界が悪く、航続距離も短いため、大気圏突入後に“ガウ級攻撃空母”に回収してもらい、自軍基地近辺まで弾道飛行で打ち出してもらうという方法で生還率を高めました。

 コムサイにもMSを2機搭載することができますが、発進口が機体下部に設置されているため、本体に接続されている間は射出することができません。そのため、コムサイを運用することが前提の作戦時以外は基本的にMSを搭載することはありません。

 大気圏離脱については明らかにされていませんが、改修型の“コムサイII”はブースターを装着することで大気圏離脱も可能でした。

“コムサイ”

●スペック

全高:79.4m
全長:234m
全幅:98.4m
全備重量:13,000t
推進機関:熱核ロケットエンジン2基
MS搭載数:4機(本体)+2機(コムサイ)
主な同型艦:ファルメル、バロメルほか多数
主な座乗者:ドズル・ザビ、シャア・アズナブル、ドレンほか公国軍士官

●基本武装

○2連装メガ粒子砲
 艦体正面に階段状に3基配置された本級の主砲です。下方および後方へ砲撃を行うことができず、上方への砲撃も射角が制限されるため、死角が多いという欠点はありますが、斉射による火力は非常に高いものとなっています。

○大型ミサイルランチャー
 メガ粒子砲下部に左右1基ずつ装備されています。対艦および対要塞で使用され、スペースコロニーの外壁を破壊できるほどの威力を有しています。

○小型ミサイルランチャー
 メガ粒子砲の横に左右5基ずつ装備されています。速射性能が高く、近接防御に使用されます。

●最も有名な同型艦“ファルメル”

 数ある同型艦の中でもシャア・アズナブルが座乗したことで知られる“ファルメル”が最も有名ではないでしょうか。

 艦橋が特徴的な形状に改造されており、内装も大きく異なりますが、性能自体は通常型と変わりありません。

 元々はドズル・ザビのために建造されたもので、“ルウム戦役”まではドズルの座乗艦でしたが、同戦役での功績により、シャアに譲り渡されました。

 ただ、シャア自身はMSに乗って出撃することが多いため、実質的には副官のドレンが艦長代理として、指揮を執ることが多かったようです。

 その後、シャアが左遷されてからどうなったかは、明らかにされていません。

“ファルメル”

●ジオン公国の象徴として受け継がれる

 本級はブロック構造が採用されたこともあり、戦中にも関わらず、様々な改修が施されています。

 武装の強化やMSの発進口、カタパルトを増設した“後期生産型”や武装を省略し、生産効率を高めた“簡易生産型”、同じく武装を省略し、機動性や航続距離の向上を図った“最終生産型”などがあります。

 一年戦争中にかなりの数が撃沈されましたが、建造数自体が非常に多かったため、残存数もそれなりにあり、残党やジオン共和国によって運用され続けました。

 また、“ネオ・ジオン”や“新生ネオ・ジオン”でも本級をベースとした発展型が建造され続け、ジオン公国を象徴とする艦艇のひとつとして、受け継がれていくことになります。

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