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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MSM-03 ゴッグ』

●開発経緯

 ジオン公国軍は、主力兵器であるMS-06をベースに様々なバリエーション機の開発を進めていました。その内のひとつが水陸両用MSです。“コロニー落とし”の後、地球を占領する予定だった公国軍は、地球の表面積の約7割が海洋で占められていることから、海洋戦力が必須であると考えたのです。

 そこで開発されたのが“MS-06M”でしたが、その性能は軍の要求する水準を満たすことができなかったため、本格的な水陸両用MSの開発がスタートします。これに伴い、MS-06Mは“MSM-01”に改められ、実験機として運用されることになります。

 MS-06Mについて、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

●MSM-02の開発

 水陸両用MSの開発を要請されたツィマット社は、MSM-01で得られた実験データを基に社内競作という形で2種類のMSの開発を進めていきました。

 その一つ目が“MSM-02 水中実験機”です。ハイドロ・ジェット・エンジンを搭載し、MSM-01で問題となっていた水の抵抗を軽減するため、機体の形状は流線型になり、兵装も携行式から内装式に改めれています。これにより、水中での運動性はMSM-01より10%から20%向上しました。

 さらに、これまで排熱の問題で搭載することができなかった高出力の熱核反応炉を海水を取り込むこで冷却する水冷式に改修したことで、大幅な出力向上に成功しています。ただし、バラストタンク内に蓄えられる冷却水には限界があるため、陸上での稼働時間は長くありませんでした。

●MSM-03の開発

 もうひとつ開発されたのが“MSM-03-1 プロトタイプ・ゴッグ”です。推進器にハイドロ・ジェット・エンジンを採用、機体の形状を流線型にし、兵装を内装化することで、水の抵抗を軽減、高出力の水冷式熱核反応炉を搭載したところまではMSM-02と変わりありません。最も大きな違いは、MSとして初めて“メガ粒子砲”を搭載したことです。

 従来、ミノフスキー粒子をメガ粒子化させるには、非常に大きなエネルギーを必要とするため、MSへの搭載は困難でしたが、高出力の水冷式熱核反応炉を搭載することで、遂に実現することができたのです。

 しかし、ビームの収束率が低く、特に水中での拡散は深刻なものでした。射程距離や威力に問題を抱えながら、なんとか実用化には成功しましたが、外付けの魚雷ポッドを腕部に装備させる案が検討されることになりました。

 また、水の抵抗を軽減する都合上、近接格闘用の兵装を携行することが困難だったことから、マニピュレーターをアイアンネイルに換装しました。これにより、マニピュレーターとしての精度は低下しましたが、高出力アクチュエーターによって、潜水艦の艦底を引き裂くことができるほどの威力を有する近接格闘用兵装を獲得することになります。

 試作1号機は当初、リゾートコロニーとして知られるサイド3の9バンチコロニー“海”で試験が行われていましたが、後に地球に移送され、試験は継続されます。

 現地での試験で問題となったのが腕部でした。海流の影響で水の抵抗を大きく受けてしまい、想定していた性能を発揮することができなかったのです。

 そこで、腕部に“フレキシブル・ベロウズ・リム”と呼ばれる伸縮可能な多重関節構造を採用することになります。航行時には腕部を収縮させることで、水の抵抗を大きく軽減することに成功したのです。

 このフレキシブル・ベロウズ・リムの採用により、外付けの魚雷ポッドの装備は廃案となり、腹部に魚雷発射管が設置されることになります。

 こうして、現地での試験を重ねて、“MSM-03”が完成しました。

●海の王者として君臨

 MSM-03は、総合的にMSM-02を上回る性能を有したことから、制式採用されることになり、U.C.0079年3月中には量産が開始されています。同年5月には実戦配備が始まり、若干の改修が加えられた後期型に生産がシフトした頃にはMSM-02の生産は終了し、MSM-03に一本化されました。

 実戦投入されたMSM-03は、キャリフォルニア・ベースで鹵獲した潜水艦を母艦とし、連邦軍の港湾基地の強襲、上陸侵攻作戦において大いに活躍しました。

 陸上ではバラストタンク内の冷却水を使用するため、稼働時間は1時間から2時間と短いことや機体重量の問題で機動性に難はありましたが、MS-06を遥かに上回るパワーを有しており、耐圧のための重装甲は60mm程度の砲弾はものともしないなど、MSを持たない連邦軍にとっては脅威となりました。

 特に水中では、稼働時間も長く、最高速度75ktという高い機動力が発揮できるため、海の王者として君臨することになります。

“MSM-03 ゴッグ”

●スペック

頭頂高:18.3m
本体重量:82.4t
全備重量:159.4t
ジェネレーター出力:1,740w
スラスター総推力:121,000kg
水中最高速度:75kt
装甲材質:チタン・セラミック複合材
主な搭乗者:コーカ・ラサ、マーシーほか公国軍MSパイロット

●基本武装

○メガ粒子砲
 腹部に2門搭載されています。MSに初めて搭載されたメガ粒子砲ということもあり、射程距離は1km程度と短く、威力もザク・マシンガンの2倍程度と後のビーム兵器と比較すると性能は高くありません。また、腹部に固定されていることから、射角にも問題がありました。

○魚雷発射管
 腹部に2門搭載されています。水中航行時の進行方向とは異なる位置に配置されているため、敵機の上方に移動するか機体の向きを変えて使用する必要があるため、使い勝手が良いものではありませんでした。

○アイアンネイル
 マニピュレーターを兼ねる近接格闘用兵装で、機体の運用上、兵装の携行が困難であったことから採用されました。アクチュエーターの出力が高く、ルナ・チタニウム合金製の装甲にも穴を空けるほどの威力を誇ります。実戦においては、防御用兵装としても機能しました。

○フリージーヤード
 頭頂部のマルチプルランチャーから射出されるカプセルに充填された特殊な高分子化合物を展開し、海水を取り込んで赤いゲル状の膜となって機体全体を覆います。これによって、機雷や爆雷の信管の作動やソナーによる探知を防ぐことができます。ただ、フリージーヤード展開中はウォーターインテークが塞がれてしまうため、長時間の使用はできず、絡め取った機雷や爆雷は速やかに排除する必要があります。

水中巡航形態

●水陸両用MSのパイオニアとしてバトンを繋ぐ

 連邦軍による反攻作戦が始まると、得意とする水中戦を挑んでもらえず、対空攻撃能力がないため、空中から一方的に攻撃を受け、堅牢を誇った重装甲もビーム兵器の前では意味を成さず、次々と撃破されていくことになります。

 そんな欠陥だらけとも言えるMSM-03でしたが、初めて制式採用された水陸両用MSとしては完成度が高く、一年戦争中期に猛威を振るったという事実に変わりはありません。そのデータやコンセプトは後の水陸両用MSへと受け継がれ、遥か遠い未来でも活躍することになります。

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