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クソデカ共産党宣言

何やら世間では、「クソデカ羅生門」というものが流行っているとか。どうやら芥川の『羅生門』の形容詞とかをやたらとデカイ表現にしてみたら、なんかえらくファンタジー色強い物語になって、それがウケているという。そんなことを話していたら、↑みたいな事を言われてしまった。

しかし、実は『共産党宣言』、何もしなくてもクソデカ物語だったのだ。なんといっても出だしが「あらゆる社会の歴史は、階級闘争であった」これ以上デカいのを構築しようとしたらどうするんだよ?ってな感じになってしまって、つらつら読み返していったら・・・・
 あ、なんか陳腐だけど、ブルジョアジー=魔王、プロレタリアート=勇者っていうふうにすると、物語風に語れるんじゃないかって思いついて、書き始めてみた。

前文

ひと度触ったら全てを真っ赤に染める怪物がヨーロッパを我が物顔にうろついている!その名も人類共通の敵対思想、共産主義という怪物が! ヨーロッパのすべてが、この怪物のための十字軍を組んでいやがる。普段は対立している筈のロシアのツァーリーとローマ法王、プロシアのメッテルニヒとフランスのギゾー、フランスの「左翼」とドイツの官憲も。当然ルクセンブルク大公もナポリやミラノの王様も、王位継承で争っているはずのハプスブルク家の有力者達も、宗教が違うにもかかわらずオスマン帝国のスルタンまで!
まあ反政府な態度を取っている政党で、「奴等は共産主義的だ!」と罵られなかったのは猫の蚤くらいのもんじゃね?逆に、自分トコより急進的な反対派に「お前は共産党だろ?」って悪口言わなかったのはアッシジのフランチェスコぐらいじぇね?
まあ、こんなことから2億くらいの事が判るが、いちいち挙げると時間がねぇから2つだけ。
オレ様共産主義者は、ヨーロッパ、ってことはもう殆ど世界中の権力者からトンデモねぇこの世を滅ぼす悪魔のように嫌われる、って形で認められているって事。
もう一つは、オレ様共産主義者が、どんな風にこの世の中を定義して、どんな風にするのか、そしてどんな傾向にしたいのか、全世界に公表して、お前等のそこまで嫌う怪物オレ様っていう荒唐無稽すぎてヘソで茶を湧かすヨタ話に、オレ様自身のこの世の中全てを統べる宣言を、それこそ天からラッパを吹き鳴らしながら降りてくるワルキューレのように読み上げてくる時期がきたわけだ。
そんなわけで、オレ様世界の53億7千の言葉でしゃべれるけど、とりあえず英仏独伊丁語で言ってやるから、耳の穴かっぽじってよく聴きやがれ!

1.ブルジョアっていう魔王vs勇者プロレタリア

これまでの、ビッグバンから昨日までの歴史、ありゃ全部階級闘争ってやつだったのさ。
自由民と奴隷、貴族と平民、ギルドの組合員と職人、猫と鼠、よーするにこの世の全ての上下関係は対立し合ってたわけだ。で、古今東西あまねくこの手の闘争は、天地がひっくり返る革命か、共倒れで何から何まで終わっちまったわけだ。学校で習ったろ?

まー昔は身分が完全に分かれてて、さらにそん中でも細かく分かれて、人口が5億人くらいしかいないのに身分は50億くらいに別れてたわけだ。
まそんなしり拭く紙ほども役に立たない封建社会からいつの間にか生まれてきたブルジョア社会も、そんな階級別に廃止なんかしちゃいえねぇ。まあでも、50億あった階級をたった2つにしちまったわけだよ、魔王軍団ブルジョアと、勇者達プロレタリアートってやつらと。
真っ暗で何も読めない中世の農奴から、城壁に囲まれている、一度中に入ったら領主から逃げられる、まあそれだけしかないけど「自由都市」が出来て、そこの中から最初の魔王達が生まれたわけだ。でもって、アメリカの発見(でも現地人にとってはどんな嵐よりも激しく山も川も根こそぎ持って行かれたぐらいの悲劇だったけどな!)、アフリカ大陸が南極とつながってないことが判ってしまってから、そんな新参者の魔王たちにとっては自分達が見たこともないどでかい新天地が降って湧いてきた。インド中国の市場、”インディアン”たちを追い立てながらトウモロコシ畑を地平線の彼方まで広げたアメリカ、一艘の舟の中に1万人も黒人詰め込んでアフリカから南北アメリカに持っていった奴隷貿易、なにより山ごとひとつの銀塊みたいなトポシ銀山からどどんと銀を持ち込んだおかげで貨幣がウクライナの農村にまで入り込んで、商業も海運も工業も、ノアやアダムがびっくりするぐらい発達しちまった。おかげでもう虫の息みたいだった封建社会がミキサーの中のイチゴみたいに引っかき回されたわけだ。

それまでのチャチなギルドの親方徒弟なんか受注書だけで一抱えもあるような注文をこなす事なんて出来なくなった。組合の間でなーなーでやってた商売の回しっこなんか、見渡す限り貸すんで見えないほどの大工場の中でやる分業の前に霞もせずに消えちまった。
それなのに市場は狸の金玉袋で熨した金箔ぐらいに広がって、ゾンビみたいな顧客が「くれ~くれ~」と騒いで製品を欲しがった。で、お出ましになったのが蒸気と機械だ。それでもって近代の、ガッチャンガッチャンシュッポシュッポシュッポッポーな近代的大工業が立ち上がって、それらを統率するのがあの大魔王集団ブルジョアジーってわけだ。

大工業が発達すると、今度はそいつを売りさばくセールスが、そいつを運び出す海運が、陸上交通が雨後の竹の子のように発達していくわけだ。でさらに船が、機関車が、原材料が必要になってどんどん資本が増大して、50億もあった階級が全く無意味になっちまったというわけさ。
ま、魔王達は、別にいきなり木の股から生まれたんじゃない。それ自体長い長い発展過程の産物で、産まれてきた変化の産物なんだってこと。
まあ魔王達が発達すると、それに伴って政治体制もパチスロの絵のようにグルングルン変わっていったわけだ。で、今や国家権力なんて、魔王の共同事務を管理するだけのお飾り委員会に成り下がっちまった。所々で王様やら神様やらが裾を10mも引きずるマントとか着ているけどな。

まそんな魔王達、支配権を握ったら、それまで色んなところにあった封建的、あるいは牧歌的諸関係を破壊しまくった。宗教的情熱とか、ドンキホーテみたいな騎士道精神とか、向こう三軒両隣なんていう麗しき人間関係を、ぜーんぶ金勘定の話にしちまった。まあそれまで、あれこれ「神様のため」「やんごとなき姫君のため」とかリクツつけて搾り取っていたカネを、開けっぴろげで恥知らずの搾取にしちまったってわけだ。
魔王達は、名誉とか尊敬とかそんなものを受けていた連中から神秘のオーラを取っ払っちまった。医者も弁護士も坊主もポエマーも学者も、魔王のために奉仕する哀れな賃金労働者にしちまった。
家族関係だって、もうすべてがカネのためのものにしちまった。
魔王達は、実は「人間」ってやつがすごい仕事をするのだと言う事を示したわけだ。エジプトのピラミッド、ローマの水道、ゴシックの大寺院、昔は見たらすげーとしか言えないデカイものだったけど、もうそんなものよりでっかい建物、汽船、大工場を作り上げちまったわけだ。

魔王達は、生産する道具、そんでもってその仕組みを、工場の中だけじゃ無くて社会全体津々浦々まで変えちまった。というより、変えないと連中は生存出来ない。昔はそういう仕組みを守っていく事が生存の条件だったのになぁ。
生産はどんどん変わっていく。社会全体で毎日地震が続くように動揺する。朝から晩まで不安定な運動が、魔王の時代とそれ以外とを分ける特徴だ。どんなに堅固な関係もさび付いたら消え去り、新しくできたものも片っ端から古くなる。神聖さとかはバカにされ、まあ人はそういうものにごまかされることが無くなって、冷静に身の回りを観察出来るようになったわけだ。
魔王達が作る製品、売りさばかなきゃいけないってわけで、ヤツラは地球の隅々、それこそ極地から砂漠、フィヨルドの入江まで出かけていっては住み着き、100mおきに取引先を作らないといけない。
魔王達は世界をヤツラの売り込み先にしちまったことで、この世の全ての生産と消費をぐるぐる巻きのひとまとまりにしちまった。回顧趣味者が望陀の涙を流してるように、産業からその国や地域ならではのものを取り去っちまった。伝統あるインドのキャラコも破壊されて、その代わりに茶畑が広がり、自給自足だった東インド諸島の農場にはサトウキビが植えられるようになった。そして(西)インドの茶と東インドの砂糖は、それぞれ反対側の海を渡って英国に入り、気取った貴族のティーカップの中で一つになって午後のお茶となる。そう、古来からの民族的産業は文明国の新産業によって駆逐される。牧歌的な時代の民族それぞれの自給自足は、全面的な交易に依存するようになった。まあそうなると、個々の民族とかの文化もごっちゃになるわな。民族的偏見と狭量は次第に不可能になり、世界はひとつの文明を持つことになる。

魔王達は、全ての生産手段を改良して、人力とは比べものにならない交通手段をよって、全ての民族を連中の文明に染め上げる。大量生産で安価に作られたその商品を弾薬にして、万里の長城をも打ち破り、ホッテントットの砦も焼き払う。滅びたくなければ、魔王達の言う「文明」を取り入れ、自分達もブルジョアジーにならなければならなくなった。魔王達はもう自分の姿に似せて世界を作り出すようになってったんだ。

魔王達は農村を都市に従属させ、都市を巨大にして、農村にはびこっていた古い人間関係や風習から人々の大半を引き離した。おんなじように、未開、野蛮国を文明国にしていったわけだ。
魔王達は、そうやって生産手段、財産、人口の分散状態をなくしていく。人も工場も餅のように押しつぶして固めて、財産を少数の手にため込んだ。だから政治も集権化していく。それまで別々の法律で動いていた国家達を、事実上ひとつの法律で、ひとつの政府が動かすような感じに変えてきたんだ。
たった100年ほどの支配の中で、魔王達はビッグバンから封建時代までの全てをあわせたよりも大きな生産力を作り出した。それこそ魔法のように、機械を作り出し、空気から肥料を出し、呪文を唱えて地中から生やしたような大量の人間を湧き出させた。そんなこと一体どこの預言者が予言したのか。

まあこれでわかったろう。魔王達は封建社会の内側から生まれた。そのくせ、その中で営まれていたかつての生産関係や所有関係は、魔王が発達させた新しい生産力にはもうそぐわなくなってきた。それどこかその足を引っ張るようにさえなっていったわけだ。だから、魔王達は例えば「囲い込み」とかやってそんな古い関係を木っ端微塵に粉砕しちまったってわけだ。
その代わりッちゃあなんだが、魔王同士の自由な競争が、それに適合した色んな制度、まああれだ、特許制度とか、課税の原則とか、商取引を保護する民法や商法が整備されて、裁判所なんかもそれに併せて編成されるようになって、魔王たちに従うようになっていった。

だがな、今だっておんなじだ。魔王達が作り上げた巨大な生産手段、魔法で呼び出した生産・交換諸関係という近代魔王社会。それらは魔王が作ったり呼び出してきたものなのだから、魔王の我が物顔に出来る筈だったのに、見てみろ!この数十年来、魔王達はその社会に振り回されるようになったのだ。
恐慌
これが一旦起こると、あれだけがっちゃガチャ動いていた生産設備が一斉にストップする。作ったものが売れなくなり、あらゆる物品の値段が暴落する。だけど、売らないことには魔王達は生存することも出来ないから、元値を割ってでも、買ってくれる者が出てくるまで値下げをせざるを得ない。作った生産物どころか、作るための生産手段でさえ破壊される。まあまるでペストみたいな伝染病だな。あれほど誇った文明はどこへやら、かつての野蛮状態に後戻りしたようになる。飢饉が起こる。戦争も起こる。商工業も破壊される。なぜだ?

社会があまりにも多くの文明を、生活資料を、工業を、商業をもってしまったからだ。社会に奉仕するための生産力は、魔王の文明や社会関係を促進させる役には立たない。むしろ生産力が大きくなりすぎて、生産関係が邪魔になってきたのだ。
さて、魔王はどうするのか・・・一方では生産力を破壊する。作ったって元が取れないのだから、維持するだけ無駄である。スクラップにすればまだ売れる可能性がある。他方で、新しい市場を無理矢理でも開拓し、旧市場にダンピングと言われようと安価に出荷して、恐慌を終わらせる。
しかしながら、そのようにして”克服”した恐慌は、さらに強力な恐慌を引き起こし、それを防止する手段を減少させることになる。
魔王達が征服のために使った武器達に、魔王達が打ちのめされている。
だが、魔王達は気づいてない。自分に死をもたらす武器を鍛え上げたばかりで無く、その武器を使うべき人々をも作り出した。すなわち近代的労働者、勇者プロレタリアを!

(以下、気分が乗ったら続く・・・・

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