悪者のいない世界。

全国350万人の競馬ファンの皆様、こんばんは。
今日は競馬とは全く関係ないけど、ちょっと真面目に創作の話をさせていただきますよ。

漫画や小説など、創作をしている方はたくさんいると思います。物語の方向性やテーマ、伝えたいことなど、その創作ごと・作者ごとに異なりますよね。
そんな創作活動の中でも、「これだけは譲れない!」というポリシーはありますか?
私はあります。
今日はその事について語りたいと思います。

早速ですが、私の創作におけるポリシーは
「悪者を作らないこと」です。
物語の展開上必要な悪役もいると思います。でも、そんな必要な悪役も「嫌われもの」にはしないようにしています。
完全なるヒールがいた方が物語に深みが出るのかもしれません。ですが、自分はそれができないのです。

それはなぜか?

私は自分が嫌いなキャラと長きに渡って付き合う自信がないのです。
自分が嫌いなキャラを物語が終わるまで描き続ける…。想像しただけでちょっとイヤですね。たとえその悪者の出番が一瞬であったとしても、そいつが一時たりとも存在することで、作品を通しで読み返すことができなくなってしまう…。それがイヤなのです。

そう、イヤなのです!!

だから私の作品には完全なるヒールは存在しません。どんなクソ野郎でも、どこか憎めない…。何ならちょっと可愛い…。そんな愛すべきドジっ子おバカさんが好きなのです。

だって、自分のキャラのことを嫌いだったら描くのがしんどいじゃないですか。
嫌いなやつと付き合いたくないじゃないですか。
好きで好きでたまらん、そんなやつとお付き合いしたいじゃないですか。

これは自分だけかもしれませんが、ひとつの作品を作っている最中は その作品に出てくる登場人物たちと深く人間関係を築き上げることになります。物語がスタートした当初は、彼らのことは名前と容姿くらいしか知りません。物語が進むにつれてだんだんと彼らの人となりが見えてきます。自分はあくまで彼らの人生をアウトプットする存在で、彼らの運命を操る存在ではないのです。どちらかというと自分の手のひらで彼らを転がすというよりは、自分とペンが彼らに振り回される…。そんな感覚の中で創作をしています。どう考えても自分からは出てこない言葉を彼らが発することから、自分と登場人物たちは全く別の存在だと思われるのです。もちろん話の内容には自分の体験なども反映されていきます。自分の体験を登場人物たちに追体験してもらうのが、自分の創作の根幹となっているのだと考察しています。

そういうわけで、創作をしている間は作品の中で登場人物たちと人間関係を築いていくわけですから、あまりにも性格の悪いヤツが現れると困るわけですよ。「お前とは付き合ってられん!」となったら、その時点で創作終了ですからね!お互い良い関係を築き上げていきたいものです。創作している間はキャラたちと友達であり家族であり仲間ですからね!

そういうわけで既存の漫画でも救いようがないモノやスカッとする系はあまり得意ではありません。スカッと系が苦手なのは、「スカッ」とする前に一旦不快になるからです。

ではここで私の思う良い悪役をご紹介しようと思います。

モデルになっていただく作品は敬愛する上原きみ子先生の『炎のロマンス』。

女子高生の亜樹が何やかんやで南の島にさらわれて、無理やり島の女王に仕立て上げられて、二人の王子の間で「あぁ~ん!もう、どーしよー!」となる物語です。こう、さらっと書きましたが、本当はメチャメチャ内容の濃い名作なので是非一読してもらいたい作品です!

↑こんな感じ。

さて、この『炎のロマンス』でヒールと言ったらこの二人でしょう。

壺で人を操る薬を焚いているのが島の祈祷師・サモイ、木の上で葉っぱを食べてるのが島の王子の一人・ルイです。
この二人は主人公である亜樹と元々いい感じになっていた もう一人の王子・レドビィへの嫌がらせで亜樹を島に誘拐し、無理やりルイと偽装結婚させて、王位をルイのものにしようと企んでいたのです。
(この島では黒髪の女性を女王にするという風習があり、亜樹はそのため日本から南の島に誘拐されてきたのです。島の女性は亜樹以外皆金髪か茶髪なのです。)

↑縄で縛られてるのがレドビィです。

無理やり女王にさせられた亜樹は何度も島からの脱出を謀りますが、それも全て失敗。そして愛するレドビィも、サモイとルイに嵌められて、一度入ったら死ぬまで出られないという山に送り込まれてしまいます。

で、そんな極悪非道なルイですが、頑張りやさんの亜樹にだんだんと惹かれていき、亜樹のことを本気で愛するようになっていきます。

↑噛み合わない。

本気のルイの求愛にドギマギする亜樹…。しかし亜樹が本当に愛するのはレドビィだけ…。
それからも色々とすったもんだあり、ルイは裏切り者としてサモイから歪まれることになります。そして何だかんだあって、亜樹・ルイ・サモイはレドビィが入った山へ向かうことに…。

サモイが山に放火しました。
樹海も亜樹もみんな燃やしたかったんですね。
亜樹は生きてました。

それからもあーだこーだあり、ルイにとって尋常じゃなくショッキングな出来事が頻発してしまいます。そして彼は…。

ショックのあまり狂ってしまいました。
狂った狂った言い過ぎだろ。

そんな狂ってしまったルイの代わりに、レドビィは王になるため奔走します。しかし亜樹はそれが気に入りません。自分の本心を押し殺して国民のためにだけ動くレドビィ…。それはまるで操り人形のようで、とても人間とは思えなかったのです。

↑ひどいわ。

なんだのかんだので結局二人は和解します。そして狂ってしまったルイはもはや政治能力もなく、サモイにとって利用価値のないただの人形になってしまいました。しかも敵対するレドビィが王になったら自分の居場所がなくなってしまう…。
そしてサモイはまたしても亜樹とレドビィを殺害しようと牙を向けます!!
そこへ立ちはだかるルイ!!!
そして…!!!!

あの極悪非道なサモイを倒すことができました!!
しかし、ルイも刺し違えて、ほどなくして亡くなってしまいます。悲しむ亜樹。しかし悲しんでばかりもいられません。亜樹は島の女王になることを決心し、愛するレドビィと結ばれ、いつまでも仲良く暮らしましたとさ…。
めでたしめでたし。あしからず。

この作品のヒール二人、いかがだったでしょうか?
途中で愛に目覚めて、狂い、死んでいったルイ…。何となく憎めませんよね。
サモイは終始クソ野郎ですが、「もえろ もえろ 樹海も亜樹もみんなもえろ」のシーンがアホすぎて、私は嫌いになれませんでした。


嫌いになれないキャラ、それはきっと、どこか抜けててツッコミ所があるキャラなのだと思います。
事実、ツッコミながら読む漫画ほど楽しいものはないと私は思っています。

悪者のいない世界。
それは非現実的なようで、実世界そのものなのかもしれません。
そんな世界を、これからも書いていきたいです。

終わり!

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