『ドードー鳥が見た夢は』act5

act5.クマのじいさまの家

セットは怪しげな家。中央では怪しげなじいさんが作業している。
照明も怪しげに。要は怪しけりゃOK。
クマ、京也、袖から登場。京也はキョロキョロしている。


クマ「ほら、じいさまがいた。何か作ってるね」
京也(キョロキョロしながら)「おい、やっぱり帰ろうぜ」
クマ「何で?」
京也「怪しすぎるだろ、ここ…」
クマ「人のじいさまの家にたいして失礼なこと言うなよ。いいから行くぞ」

二人、じいさんに近づく。

クマ「じいさま!」(じいさんの肩を叩く)
じいさん(びっくりして)「うわぁ!!…なんじゃ、クマ坊か。脅かすんでない!!」
クマ「へへへ、ごめん」
じいさん「全く心臓に悪い。死んだらどーするんじゃい」
クマ「じいさまはこんなことで死なないでしょ。昔、インド象に踏まれても死ななかったじゃん」
じいさん「そんなこともあったのぅ…」
クマ「だからじいさまは死なないよ」
じいさん「そうか。ワシは死なないのか」
クマ「そうさ、死など!」
じいさん「恐るるに!」
クマ・じいさん「足らず!!!」(楽しそうに)
じいさん(コロッと態度を変えて)「ところで急にどうしたんじゃ?ワシに何か用か?」
クマ「そうだった、用があるんだ。あ、こいつ、僕の友達の京也君」
京也「どうも」
じいさん「ほう。いつも孫と仲良くしてくれてありがとうございます」
京也「いえいえ、こちらこそクマ君にはお世話になっています」
じいさん「そうですか。それはそれは…」
クマ「まあ、あいさつはそのくらいにして。話を進めるよ。じいさま、今日僕が来たのは京也の兄貴について相談したいからなんだ」
じいさん「京也君のお兄さん?」
京也「はい。最近オレの兄貴、夜中にうなされているんです」
クマ「悪夢によるものだと考えているんだ」
京也「その悪夢をどうにかしたいんです。じゃないとオレ眠れなくて」
クマ「そこでさ、この間じいさまが発明したやつで夢に関するのがあったでしょ?それを使えないかなぁと思って」
じいさん「夢?おぉ!アレか!うむ、使えると思うぞ!ちょっと待ってな、今持ってくるんでな」

じいさん、奥に引っ込み、ゴソゴソやる。そしてガラクタを抱えて戻ってくる。

じいさん「これじゃこれじゃ。『夢共有機』!」

じいさん、ガラクタを机の上に置く。ガラクタは帽子からコードが出ていて、その先端に吸盤がついている。下図参照。

京也「夢共有機?」
じいさん「そうじゃ。これは他人の夢を共有できる発明なのじゃ」
クマ「まぁそのまんまだね」
京也「それでどうやって夢の共有を…」
じいさん「まぁ、原理は多少難しいがの。まず夢というものは睡眠状態で脳だけが覚醒していることによって起こる現象じゃ。レム睡眠というものを聞いたことがあるじゃろう?あれは浅い眠りを指すんじゃ。つまり体は寝ているが頭だけは起きている状態じゃな。よって夢を見ている間、人間の脳は活発に働いている。脳が活発であるということはそこから発する電気信号も増えるということじゃ」
クマ「ふぅん」
じいさん「そこでワシは考えた。その電気信号をキャッチしてそれを他者の脳に送り込むことができたら夢を共有できるのではないかと、な。お二人さん、ウソ発見機はご存知かな?」
クマ「うん、知ってるよ。頭とか手に変な丸いのいっぱいつけて、機械につないで、ウソつくと何かギュンッてなるやつでしょ?」
じいさん「まぁ、そんな感じのやつじゃ。あれも脳波、電気信号を利用してウソを発見するのじゃ。人間はウソをつくときに普段よりも脳が興奮する。それをあの丸い吸盤で感知して、画像化することによりウソを見抜くことができるのじゃ。ワシの発明もそれと大体同じ原理を用いておる。」

じいさん、ガラクタを手に取り、二人に見せる。

じいさん「この吸盤はウソ発見機の吸盤と同じようなものじゃ。夢を共有したい相手の頭に貼りつけて使う。で、この吸盤がキャッチした信号はここのコードを通って帽子に到達する。ホレ、この帽子の中を見てみ」

二人、帽子の中を覗く。

京也「あ、この中にも吸盤がある」
じいさん「その通り。さっきの吸盤が入力用だとすると、この吸盤は出力用ってワケじゃ。お前さんたちがこの帽子をかぶることによって、相手の電気信号が二人の脳に伝わる。そうすることで夢を共有することができるのじゃ」
クマ「なるほど」
京也「でもコレだと兄貴が見ている夢をオレたちが見るってことだから…夢自体をどうにかできるってワケじゃないのか」
じいさん「まぁそうじゃなぁ。しかし、夢というものは多少なりともその人の抱える不安、感情を反映するものじゃ。だから夢の内容から推測して現実世界での不安やストレスを取り除くことも出来るんじゃないかのぅ」
京也「たしかにそうかも」
クマ「そうすりゃ唸りも治まるかもしれないな」
京也「うん」
じいさん「じゃ、そういうこった。使いたいなら自由に持っていってええぞ」
クマ「わかった。じいさま、ありがとう!」(ガラクタを受けとる)
じいさん「あと、コレが説明書じゃ。よく読むんだぞぃ」(紙を差し出す)
京也(紙を受け取って)「はい」
クマ「よし、じゃ、京也、早速今夜にでもコレを試してみようぜ!」
京也「そうだな。一刻も早く寝不足から解放されたいしな!」
クマ「うし。そんじゃ僕、今夜はおまえの家に泊まるよ。僕もコレ使ってみたいからさ」
京也「おう、いいぜ」
クマ「そうと決まったらお泊まりの準備しなきゃ!じゃあ、じいさま、また来るよ」
京也「ありがとうございました」
じいさん「おお、気ィつけてな。またいらっしゃい!」

京也、クマ、退場。
暗転。

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