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観る将歴30年のつぶやき「そんなことはあり得ないっ!」

元奨励会員アユムの将棋実況
@ZpikT1

囲碁将棋チャンネル様や毎日新聞社様には盤面を映さない評価値放送に関して問題無いという見解を頂いていて、銀河戦や王将戦の棋譜使用料はお支払いしていて、
放送の中で可能な限り「棋譜が観たい方はこちらへ!」と宣伝していましたが
やめた方が良いという意見が多ければ
少し考えたいと思います。



てめえ

@ZpikT1さん
申し訳ないですが、問題ないという見解を頂いているとはとても思えません
根拠は、日本将棋連盟の棋譜利用のガイドラインに、ハッキリ抵触しているからです
王将戦に関しては文字情報や音声も棋譜利用にあたると書いてありますし、対局中の棋譜利用はお断りしますと書いてありますので


 上記二つの文章は、Twitterからコピペしたものだ。

 上のがユーチューバーであるアユム氏のツイート。
 下のは私がそれに返信したものだ。



 私が根拠として挙げている日本将棋連盟の棋譜利用のガイドラインは、これです。

 「王将戦における棋譜利用ガイドライン」のところをご覧ください。


2.「棋譜」とは
公式記録に基づいて公式戦対局の指し手進行を再現した「盤面図」(静止画・動画を問わず)、および、符号・記号による「指し手順の文字情報」を含めて「棋譜」といいます。

3.「棋譜の利用」とは
商業的利用であるかどうかを問わず、棋譜を使って、公式戦対局の指し手順を、文字情報、図面(静止画または動画)、音声、盤面、ディスプレイ、集団演技等によって、刊行物、頒布物、放送、公衆送信、上映、上演等の媒体上に再現することをいいます。 主催者の許諾を得た放送配信事業者(囲碁将棋チャンネル)の中継する対局の映像をもとに自ら棋譜を作成することも「棋譜の利用」にあたります。

4.「棋譜」の利用許諾
  (1)「棋譜の利用」に当たっては、利用の範囲、形態、期間、商用/非商用にかかわらず、8項に掲載するURLからお申し込みください。内容を確認のうえ、主催者から利用の可否と利用条件(利用料を含む)をお知らせします。
  (2)利用料は商用、非商用で異なります。また、当該対局から2カ月が経過した後に利用料を引き下げるか、もしくは無料とします。
  (3)SNSやブログ、動画サイトでの「棋譜の利用」は、次項の「私的利用」にはあたりません。なお、情報発信者が広告収入を得るか否かにかかわらず、当該サイトの閲覧が無料である場合に限り、「非商用」とみなします。
  (4)対局中の「棋譜の利用」はお断りします。ただし、挑戦手合では、1日目の対局を対局2日目に利用することは可とします。


 私がガイドラインに抵触しているとしているのは、4.(4)に、対局中の「棋譜の利用」はお断りします、とハッキリ書かれているから。

 王将戦の棋譜の定義には「指し手の文字情報」も含まれているし、
「主催者の許諾を得た放送配信事業者(囲碁将棋チャンネル)の中継する対局の映像をもとに自ら棋譜を作成することも「棋譜の利用」にあたります。」
と書いてあるからには、評価値放送で棋譜の符号を再現する行為は、正に「棋譜の利用」そのものとしか言いようがない。



 だとすると、アユム氏の、
「囲碁将棋チャンネル様や毎日新聞社様には盤面を映さない評価値放送に関して問題無いという見解を頂いていて、銀河戦や王将戦の棋譜使用料はお支払いしていて……」
という主張は、どういうことなのだろう?

 本当に王将戦の主催者である毎日新聞社が、アユム氏に問題無いという見解を示したのなら大問題だと思うのだが?



 王将戦の棋譜利用のガイドラインは非常に厳しいものだ。
 業界で一番厳しいと言って良い。

 正直なところ、個人的には、
「こんなに厳しくしなくたっていいのでは?」
という想いがあるくらい……。

 このガイドラインが示される前までは、局面図を幾つか載せるくらいのブログや記事は許されていた。
 ブログや記事が、
「将棋文化の発展に寄与したい」
という気持ちの発露だとみなされていたから。

 しかし……。

 心ない発信者が棋譜の利用を濫用し、とうとうこんな厳しいガイドラインが出来てしまったという経緯がある。

 つまり、YouTubeのリアルタイム実況も、ガイドラインを厳しくした要因の一つになっている。


 ユーチューバーとしては、ガイドラインが出来たことによってリアルタイム実況が認められなくなってしまったため(それでもやっている人もいるようだが……)、評価値実況という手法を考えついたようだ。

「図面や画面を載せなきゃ良いのでしょう?」
という理屈であろうが、それは前述したように通らない。

 対局者の名前や棋戦名をハッキリ示し、その上で文字情報をリアルタイムで実況している以上、明白に「棋譜の利用」に該当しているからだ。

 私は特に専門家でもないが、ガイドラインを常識的に読めば、どう考えても棋譜の利用の許可が下りるとは思えないのだ。



 では、アユム氏の「問題無いと見解を頂いていて……」は、何処から出てきたのだろう?


 可能性は二つあると思う。

 一つは、アユム氏が私的に付き合いのある毎日新聞社の誰かが、個人的な見解ということで、
「問題無い……」
とアユム氏に言ったケース。

 ですが、これは毎日新聞社の意向では全く無いことは言うまでもないです。

 二つ目は、アユム氏が勝手にそう思い込んだケース。

 今の時代は、ネット上で探せば自身に都合の良い論がいくらでも転がっているので、それを信じ込んでしまったことは考えられます。

 しかし、当然のことながらこれも不可。

 もう一方の主催者である日本将棋連盟が公式にガイドラインとして載せている以上、身勝手な論は無法としか言いようがありません。



 個人的には、
「棋譜の利用のガイドラインはもっと緩くすべき」
だと思っています。

 しかし、リアルタイムで棋譜利用することは、間違いなく主催者の放映権を侵害しており、そこを変えて欲しいと思ってはいません。


 それにしても……。

 ユーチューバーが棋譜の利用の濫用をしたから厳しくなったのに、一般の人の棋譜の利用が制限されるって、本当に理不尽な話ではないでしょうか?

 私だって、藤井四冠の棋譜をブログに載せたいですよ。
 素晴らしい指し手の数々に、感動することしきりですから……。

 ですが、それを皆がやったら、主催者の権利は守られない。
 だから、皆、我慢している。
 図面を示し、どんなに素晴らしい手であったかを解説するのを……。



 私はアユム氏を批判したい訳ではありません。

 ですが、ガイドラインは多くの将棋ファンの協力のもとに成立しているということを分かってもらいたい……。

 ただ、それだけです。

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