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観る将歴30年のつぶやき「ウクライナ侵攻に思うこと」

 以前も書いたが、私は将棋の対局サイトには、真夜中から早朝にしかインしない。
 と、言うか、イン出来ない環境にある。

 理由は、仕事と介護のためで、対局中に急遽落ちるのも対局相手に失礼だからだ。
 なので、家人が寝静まっている時間帯にコッソリ将棋を楽しむことになる。


 対局サイトと書いたが、主に入るのは81道場だ。
 これにも理由があって、他の対局サイトではなく81道場が都合が良いのだ。

 対局サイトには、大抵、インしている人の多い時間帯がある。
 将棋ウォーズなら夜9時前後だろうし、将棋俱楽部24も概ねその時間帯に人が多い。

 一方、インしている人が少ない時間帯も存在する。
 それが、真夜中の3時から朝5時くらいまでだ。
 そう、ちょうど私がインする時間には、人が極端に少なかったりするのだ。

 しかし、81道場は真夜中の3時から朝5時くらいにも結構人がいたりする。
 これは、81道場には世界の将棋愛好家が集まるからで、日本人が寝静まっているような時間に将棋を指している人がいるためだ。

 必然的に、私は外国の人(外国在住の日本人もおられるので、必ずしも外国人ではないが……)と対局することが多くなる。

 かく言う今も、メキシコの方とドイツの方と対局した。
 棋力はお二方とも二段。
 メキシコの方とは簡単に感想戦もしたが、日本語は全く分からないのだそうだから、きっとメキシコ人なのだろう。
 どういういきさつで将棋と出会い、二段の棋力にまでなったかは分からないが、定跡を一生懸命勉強し、自分なりに考えて対局しているのが見て取れ、
「日本人でも外国人でも、学び方はあまり変わらないなあ」
と思いながら対局していた。


 今まで、何か国の人と対局しただろう……?
 アメリカ、フランス、ポルトガル、ドイツ、オランダ、ポーランド、中国、台湾、韓国、ブラジル、イタリア、メキシコ、スウェーデン、ベトナム、コロンビア、スペイン、デンマーク、ロシア、ベラルーシ、イギリス、トルコ、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチンなどなど……。
 多分、私が忘れているだけで、他の国の方とも対局していると思う。

 まあ、多分、イン時間のせいで、私は普通の日本人対局者より多く外国の人と対局をしているはずだから、これは驚くにはあたらない。

 ただ、外国の方と多く対局しているせいで、国旗には相当詳しくなった(笑)。
 ベラルーシの国旗なんて、それまでは見たことも無かったが、何人ものベラルーシの人との対局をしている内に、自然と分かるようになったし。
 こういう意外な知識が身に付くのも、81道場の魅力の一つだろうか?


 外国の対局者は、やはりそれほど棋力が高くないことが多い。
 これもまあ当然のことで、競技人口が少なければ頂点も低めになるということだ。
 実際、級位者がかなり多く、私に挑んでくる半分以上は級位者だったりする。

 日本人の級位者は、高段者にあまり挑んでこない。
 これは、遠慮しているのと、負けるのが嫌だから(笑)。
 どちらの比率が多めかは人によるが、日本は将棋を学ぶ環境が調っているので、敢えて高段者に挑戦する必要もないのもある。

 しかし、外国の方はそもそも高段者と対局する環境が無いため、勉強のためにガンガン挑戦してきたりする。
 私はどんな手合いの人でも対局を受けるので(こちらから挑戦することは滅多にない)、外国の方もそれを知っていて挑んでくるのだ。


 そんな外国人の対局者の中に、ウクライナの人がいた。
 棋力は初段に少し足りないくらいで、基本的には居飛車党の人……。

 もう、この人とは何局くらいやっただろう?
 数えたことはないが、多分、100局はゆうに超えるくらいは対局をしている。

 つい二週間前くらいにも対局していて、
「ああ、ウクライナは今大変って聞いているけど、この人のいる地方は比較的安全なんだろうな……」
と、思いながらその時は指していた。


 しかし……。
 ここのところ、そのウクライナの人が81道場にインしなくなった。

 どうしてインしなくなったのかは分からない。
 ウクライナから避難してネット環境が調っていないからなのか、それとも呑気に将棋なんて指している場合ではないからか……。

 何れにしても、何らかの変化がその人に起こったのだろう。


 ロシアの侵攻はいつ収まるとも知れない。
 その間中、ウクライナの人は普段の生活に戻ることもない。

 と言うか、侵攻が終わっても日常を取り戻すかどうかは定かでない。


 いつか、また、ウクライナの人が早朝に挑んでくることを祈っている。
 日本でのほほんと将棋を指している私には、それしかできないから。


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