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作品の制作スピード


母の制作速度


母は1つの作品を作るのに非常に長い時間をかけていました。
母が作品を作るのを見ていて、そんなに時間のかかるものは私には作れない。と長い間思っていました。
私が本気で「手まりを作る人になろう」と思ったのは、母が他界する半年前でした。

半年間、週に1回母の通院日に合わせて作品を1個ずつ作りました。
その時、母に言われたのです。
そんなに早く作れるなんて他の人に言ったらだめだと。
誰でも作れると思って作品展の直前に作りたいと言ってくる人がいるから。
母の生徒さんの中にはそういう方もいたようです。

1つ作るのに数か月かかる。
このように言われていました。
ある方の作品集にもそのように書かれていました。

母が他界し、遺品を整理したときに見つけた物がありました。
母の作品にそれぞれ作り始めた日と出来上がった日を書いたメモが入っていました。
これを作るのに3か月かかった、半年かかったと書いてありました。

その時はまだ母が作った作品を再現することはできませんでした。
母が他界して2年ほど経過し、母の作った物と同じデザインを作る事ができるようになりました。
内心、母の作った物を見ながら、私はこれ初めての時2週間で作ったよ。なんで半年もかかるの?
そのように思ったのです。

フルタイムでお仕事をしていて、週末しか作品を作る事が出来ないというのであれば、半年かかっても仕方がないと思います。
でも当時の母はすでに仕事をやめていて、1日中作品制作をすることができる状況でした。

お裁縫の学校


私は高校時代、洋裁の学校に行くつもりでいました。
でも3年生になり洋裁より和裁をしたいと思い、和裁の学校へ行きました。
どちらを選択したにしろ、課題が厳しいと聞いていました。
私が行った全寮制の学校も課題が厳しかったです。

所定の時間で、きれいに早く縫い上げる必要があります。
私は半年で脱落して帰ってきました。
学校としては、3年生で和裁士2級、4年生で和裁士1級の技能をとることを目標としていました。

実技試験では前日に裁断とヘラ付けをしておきます。
ヘラ付けのすんだ着物を試験場へ持ち込みます。
2級では単衣(ひとえ、裏のない着物)、1級では袷(あわせ、裏付きの着物)を朝9時から縫い始め夕方5時に完成させます。
つまり和裁士の検定で求められるのは、早くきれいに縫い上げることです。

この全寮制の学校を脱落し、家から通える和裁の学校へ行きなおしました。
こちらの学校は丁寧に縫い上げることだけを求められました。
スピードは求められず、各々の速さで縫っていました。
1枚を仕上げるのに1週間で仕上げる人もいれば2か月前後かけている人もいました。

1枚の縫い賃は着物の種類で概ね決まっています。
生活するために1か月必要なお金は大体決まってきます。
その金額を稼ぐためには、単衣の着物を縫った場合、1か月に所定の枚数縫わないと稼ぐことができません。

つまり欲しい金額を頂くためには、〇枚縫う必要があり、その為には1枚を〇時間で縫わないと必要なお金を得ることができません。
本業としてお仕事を行うためには、所定のスピードで仕事をこなす必要が出てきます。

私の制作スピード


お裁縫の学校の厳しさを知っているので、どうしてもそのスピードを基準に見てしまいます。
趣味でお稽古で作るのであれば、どれだけ時間をかけても問題ありません。
しかし職業として作るのであれば、やはりそれなりのスピードで作らないと、と思っています。

現在通常の作品と、少し時間のかかる作品を交互に作っています。
通常の作品は3日前後で仕上げています。
オーダーが入った時、表向き納期1か月としています。
これは様々なスケジュールの合間に作るからです。

うっかり納期1週間などと言ったとき、その週が何らかの都合でほぼ作品制作に使えない時があります。
そうなると1週間後に納品は不可能になります。
打ち合わせに1週間ほどかかってしまう事もあります。
納期1か月としておけば、余裕で納期を守ることができます。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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