【ショートショート】日曜日から始まる(8)
【創作】スマホが鳴った。洋子が電話に出ると母の妹の由美だった。
「洋子ちゃん、元気してる?お母さんから、聞いた?」
洋子は、
「お見合いのことなら聞いたわ」
とすぐに答えた。
「どう?会ってみる気になったかしら?」
と、由美。
「うん、そうだなぁ。ちょっと最近、がっかりしたことがあってね。新しい出会いがあれば、良いかなって思っていたの」
洋子は見合いに前向きだった。
彼に会えなかったことが気持ちを沈ませている洋子には、何か前向きになれるものが欲しくなったのだ。
「オーケー。じゃあ、私に任せてね。上手くいくように、おばちゃん、頑張るわよ」
電話が終わり、洋子はため息をついた。
『これでいいのよね。あの人を忘れるためには』
洋子は、窓辺に立ち、彼の声を思い出していた。
『何かがあったはずなのに、分からないんじゃ、どうしようもないわ』
何度、同じことを思ってしまうのかが洋子自身、もう疲れてきている。
『新しい所へ進まなきゃ』
※
由美に呼び出されて、洋子は由美の店に来ていた。
「待っててね、彼、もうすぐ来るわよ」
と、言うと由美は笑顔で洋子を見た。
「素敵よ、その洋服。洋子ちゃんは、センスが良いのよね」
とウインクしてみせた。
そんな洋子の服装は、淡いベージュに小柄の花模様があるワンピースだ。袖にフリルがついていて裾にもフリルが付いている。靴はベージュ色のそれほど高くないヒールの革靴だ。
髪は下げて少しだけ縦巻きカールをしていた。
しばらく由美と談笑していた洋子、
よく笑い、緊張感は無いようにというのも由美の作戦だった。
カランカランと、ドアが音を立てたと思ったら、スーツ姿の男性が入って来た。
「こんにちは、初めまして」
よく通る声をしている。
「あら、いらっしゃいませ。
真鍋さんの、息子さんね。えっと、お名前は」
「俊介です。真鍋俊介と言います」
笑顔が素敵な男性だと、洋子は思った。そして、
「初めまして、朝霧洋子です。よろしくお願いします」と、挨拶した。
「さぁ、2人とも、ここに座って。アイスコーヒーでも飲んでちょうだい」
洋子と俊介は、向かいあって座る。
「さぁ、どうぞ、アイスコーヒーを飲んでください」
由美は、ふたりに向かって
「うん、お似合いだわ」
と、嬉しそうに話しかけた。
「俊介さんは、幾つなの?」
「35です。9月に36になります」
「えーっ、若く見えるって言われない?」
「いや、そんなことは無いです」
ひと懐こい笑顔を返した。
「洋子ちゃんは、29だったわね」
「はい」
と、答えた。
年齢的にも良い感じね。
さぁ、コーヒーを飲んだら
あとはふたりに任せるわ。
映画を観るなり、何処かへ出掛けるなり、どうぞ。
時は金なりよ。
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