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お盆と墓参り/ボケ学会

今日でお盆も開けますね。今日は、お盆期間内、ある寺の墓地でのお話をお伝えしてみますね。

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斎藤「今年もお盆が来ましたなー、お隣さん」

小林「そうですね、鈴木さん」

斎藤「いや、家は斎藤 いいます」

小林「こりゃ失礼、斎藤さん」

斎藤「お宅には毎年、来てくれますなー」

小林「あ、家は小林といいます。はい、お盆は、夏休みなもんで都会から孫だの来てくれますかいねー」

斎藤「そうでございますか。小林さん。家はどうなりますか。わたしゃ、線香の煙でむせてしまいますんで花だけでありがたいんですけども」

小林「ああ、分かります。わたしも線香の煙が苦手なんですわ。花でいいですな」

斎藤「ところでお宅にはお帰りにならんとですか?」

小林「なんせ孫だのが来ておりますもんで、賑やかなんですわ。それで、だ〜れも、仏壇に来るもんもおらぬもんで、今年は戻らずにここに居ようかと思うとります」

斎藤「所詮は、新盆だけですわな。
いっぱい飾りもん付けて、『おじいちゃん帰ってきた?』なんて会話してるのを聞きます」

小林「そういうもんですな」

斎藤「ところで、お宅の隣は随分と雑草が生えておりますけど、誰も来ませんのかね〜」

小林「ああ、鈴木さんですな。いつだったか、歌を歌いながら、空に向かっていなくなりました。確か、こんな歌ですわ、『わたしのお墓の前でなかなかでください。そこにわたしはいませんだ、眠ってなんかおらんぞ』とか言う歌でした。いないところを見ると、まだどこぞの空を飛んでるんですよ、あははは」

斎藤「それで誰も来ないということは墓には誰もいないということが分かるんですかね」

小林「そうですね。何か感じるものがあるのやも知れませんね」


斎藤「ありゃ、誰か来ましたぞ」

ふぅふぅ言いながら坂を登って来る者がいた。おばあさんと、息子らしい。

おばあさん「この坂、もう無理だわ。今年で墓参りは、終わりにして来年からは、代行にしてもらうぞ」

息子「ばあちゃんがそれで良いなら構わんよ」

と言って、上へと坂を登って行く。

おばあさん「ひゃー、やっと着いた。のぅ、じいさん、達者でおるか?」

息子「ばあちゃん、あの世に行った人に達者でおるかは、無いべ」

おばあさん「そうかね。私も早くじいさんの所に行きてぇ」

息子「じいちゃん、ばあちゃんは寂しいと。じいちゃんは、寂しく無いと?」 

返事は、無い。

息子「さ、さ、線香、あげるべ」

と息子はおばあさんの分まで線香をあげて両手を合わせた。

息子『結婚出来ますように』

おばあさん『じいさん、迎えに来てくれりゃ』

その後、息子は墓石に満遍なく水をかけた。

花は造花だった。

おばあさん「ほら、枯れない花だ。きれいだべ」

ふぅと、ひと息付くと、ふたりは墓をあとにした。

おばあさん「蕎麦でも食って帰るべ」



山田「あああ、煙くてたまらん。そこに水責めとはなんたることだ」

小林「おお、山田さんでしたか。線香の煙には参りますなぁ。しかし、水までたっぷりと」

山田「お恥ずかしいとこを見せてしまいました。花は造花ですと」

斎藤「家も、花は造花にすると、前に来た時、話してました。枯れないからいいと」

小林「それに、墓参り代行なんてものがあるんですね、知りませんでした」

山田「ありがたいんですかね、こっちは、知らない人間が墓掃除から、お参りまでしてくれるっていうのは、ちょっとおかしな気分ですね」

斎藤「世の中が変わっていくんでしょうよ。まあ、時々、思い出してくれるだけで良いんですけどね」

小林「そうですな」

山田「そうですね」

小林「明日は孫だのが来ますのでうるさくなりますが、ご容赦ください」

斎藤、山田「いやいや、そんなことは気になさらず」

次の日

墓はあちこちに人が来て
とても賑やかであった。

斎藤「いゃぁ、お盆って感じですなぁ」

小林「まさに、まさに」

すると、小林家がやって来た。

息子「ふう、いつもこの坂はキツイなー」

孫1「パパ、おじいちゃんってどこにいるの?」

嫁「この中に眠っているのよ。だから、静かにお話しないと。起きたらかわいそうでしょ」

孫1「ママ、ぼく、静かにしてるよ」

孫2「ママ、あたしも静かにしてる」

嫁「2人ともお利口さんね」

息子「それ、線香あげるよ」

孫1「ぼくもやりたい」

孫2「あたしもやるー」

嫁「はいはい、そっと握ってね。ポキポキ折れないように」

孫1も孫2も、上手に線香を置くことが出来たようだ。

嫁「さあ、そしたら、おじいちゃんに手を合わせてお祈りするのよ」

嫁『マイホームが欲しいのでよろしくお願いします』

息子『家族の健康、お願いします』

嫁「あなたたちは、何をお願いするの」

孫1「ぼく、ロボット、新しいの欲しい」

孫2「あたしはリカちゃんのお洋服」

孫1「おじいちゃんがくれるの?」

嫁「お利口さんにしてたら、おじいちゃんから、貰えるかもよ」

嫁はお花も新しいのに替えてくれた。

息子「さあ、そろそろ行こうか。おじいちゃんに手を振って」

孫たちは墓に向かって手を振る。かわいいものだ。

小林「お騒がせしました」

斎藤「何の何の、息子さん、立派になられましたね。お孫さんも可愛らしい」

山田「生花をあげてくれるなんぞ、お嫁さんも、なかなか立派じゃないですか。胸が熱くなりました」

小林「いやいや、まさか、プレゼントをせがまれるとは笑ってしまいました」

斎藤「サンタクロースと間違えてますなぁ」

そちこちで、墓の中同士の会話が声をあげ、楽しい時間を過ごせたようだ。なんといっても、家の者が墓まで来てくれるのは、うれしいらしい。

お盆も終盤。仏壇に線香をあげましょうかね。


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