「トレパク問題」について

この問題が起こった時、僕は旅行中でした。
その最中に散々いろんな人が意見を出し合い、ダメージ受けてる人もたくさんいたので敢えて今さら僕は言及しないでおこうと思ってたんですが、商業イラスト業界の端っこで15年以上やってきた側からの見解を聞かせてほしいとの要望をいただいたので、散々悩んだ挙句僕なりにできるだけ明るく意見をまとめてみようと思います。

「トレパク」とは

そもそも「トレパク」とは、“トレース”と“パクリ”を合わせた造語
トレースは他の作品を上からなぞること。
パクリは他の作品の絵柄や特徴を盗用すること。
なので「トレパク作品」とは“他の作品を(部分的でも)上からなぞって描いた作品”という認識です。

しかし最近では「トレパク」という単語が一人歩きしていて、トレースしていないパクリ作品も「トレパク作品だ」と混同して使用されています。
ここは正直モヤっとするところです。笑

話題の作品について

上記の概念をベースに考えると、今回話題になった作品はいろんな検証画像を見てもトレースはしていないと個人的には思います。
ただ、絵柄・構図・服装・ポーズ・小物に至るまでかなりの部分で酷似したところが多い作品だとは感じました。
「影響を受けた」とご本人は説明していますが、それにしては元絵を見ながら描かないとあそこまで酷似はしないはず。
なのであの作品に関する僕の判断は「トレースはしてないけどパクリ作品」ということになりました。

「パクリ」の境界線

トレース作品は“なぞって描く”ので重ねて検証すれば一目瞭然。
クリエイターの方々が心配だと声をあげているのが「パクリ」のラインだと思います。

ここはとても難しく、見る人の判断によって意見が分かれる曖昧な部分。
僕の見解としては『見た人の大多数が“酷似している”と判断する作品』がパクリに当たると思っています。

本来であればその判断は各個人に委ねられるんですが、ネットでは誰かが声を挙げると「確かにそーだ!」と単純に大勢が流され一気に広がります。
この部分ではSNSとの相性は本当に合ってないなぁ…と感じてます。

イラストに限らず、どの業界でも基本はいろんな要素をパクって集めて再構築して作るのが基本。あらゆる文化が成熟した現代では全くのゼロからオリジナルを創作するのはもはや不可能とさえ言われています。


「パクリ」と言われないために

パクること自体は悪いことではありません。
1点や2点の少数を元にオリジナルのアイデンティティごとパクるのが良くないことなんだと思います。

ではどうするか、、、
『いっぱいの作品から少しずつ要素をパクる』です!笑

「パクる」という単語が響きよくないので言い換えます。
なるべくいっぱい資料を集めて、部分部分で参考にしながら構成する。
僕はイラストではなく写真を資料としています。
もっと言えばその資料写真も主に“著作権フリー”から選定してます。
写真であればタッチやデフォルメ具合などが影響を受けている作家に似ることはあってもトレースを疑われるような酷似はしない。
なにより写真から絵を描くと、観察力が身につくし、実写から拾う線捨てる線の判断が研ぎ澄まされていきます。
イラストを参考にするとどうしても元絵に引っ張られるので酷似する可能性が高くなるのはお分かりかと!
僕がイラストを参考にするときは、仕上げのエフェクトや色味、線の処理や塗り方、トリミングやアイキャッチの置き方など技術的な部分です。

「トレパク」は悪なのか

先に言っている通りトレースもパクリも立派な技法のひとつであり、そのこと自体は悪ではありません。

『著作物からトレース(パクリ)を行なって多数の人が印象が酷似していると判断する作品を作り、それによって金銭の授受が発生(間接的も含む)し、著作権を侵害する行為』

この行為が「悪」とされているんだと僕は認識しています。
話題の件がこれにあたるのか、などの問題は僕は専門家でも当事者でもないのでこれ以上の言及は控えさせていただきます。

不安な作家さんたちへ

この問題は制作する者として常につきまとってくる、モラルや認識の違いで意見が分かれるグレーなエリアなので正解が難しいこと。
結局のところそれぞれ各自が経験したり、いろんな情報見聞きして自分なりのラインを引くしかないんですよね。

“特定の作品を参考に描く”ことをしない限り、基本的にこんな問題になることはないのでみんな安心して大いに楽しく制作を続けてほしいと思います!

ごく一部の人が「これパクリじゃね?」と言いがかりをつけてくることもいつかはあるでしょう。ネットやってたら誰しも避けられないことです。
制作過程に問題がなく自信持って取り組んでいれば「え、ちげーし。」で済むことなので、あまり深刻に考えずどうか伸び伸びと活動を楽しんでください!

それでも人間は間違える生き物。
そんな時は適切は速度で適切な方向に、誠実に「ごめんなさい!」と言える人間でいたいと僕は思ってます♪

みんな真剣に向き合ってるから悩む。
でも…絵を描くのってやっぱり楽しいでしょっ?

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