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『スティルウォーター』 レビュー

『スティルウォーター』が良い作品だったのでレビュー的なものを書いてみた。
以下があらすじ。

マット・デイモンが主演、アカデミー賞受賞作「スポットライト 世紀のスクープ」のトム・マッカーシー監督がメガホンをとったサスペンススリラー。
逮捕された娘の無実を証明するため、異国の地で真犯人を捜す父親の姿を描いた。
留学先の仏マルセイユで殺人罪で捕まった娘アリソンの無実を証明すべく、米オクラホマ州スティルウォーターから言葉も通じない異国の地へ単身渡ったビル。
現地の協力者を得るも、ほとんどの地元民はよそ者のビルに口をきこうともしない。
何者かの襲撃を受けるなど自らの身にも危険が迫る中、ビルはわずかな手がかりを頼りに前進していくが……。
娘のアリソン役は「リトル・ミス・サンシャイン」「ゾンビランド」のアビゲイル・ブレスリンが務めた。(引用:映画.com)


サスペンス・スリラーと書かれているが、どんどん展開していく物語を期待したらきっと肩透かしを食らうだろう。
もちろんサスペンス・スリラーなのだが、根幹にあるのはヒューマンドラマでそれが140分続く。
これだけ聞くと、自分の集中力が続くのか、途中でお腹鳴らないかな?とか今日何食べようかな?とか余計なことを考えてしまうのではないか?と見る前は思っていたけど始まってしまうと、最初から最後まで1分も集中力を切らさず見ることができた。
これは役者陣の演技力が凄すぎたからだろう。
特に主役のマット・デイモンとマルセイユ訪問先で出会う少女をマヤ演じたリル・シャウバウの演技は素晴らしく良かった。
この2人のシーンが多いのもずっと見てられた要因だと思う。

そしてストーリーとしては引用したあらすじの通り、マット・デイモン演じるビルが留学先のマルセイユで殺人罪で捕まってしまった娘・アリソンの無実を証明するためにマルセイユを訪れる。
あらすじに書いてある、「現地の協力者」というのが、マルセイユを訪れた際にたまたま出会った少女マヤ(リル・シャウバウ)とその母親のヴィルジニーであり共に生活をしながら娘・アリソンを救うために活動する、というお話。

その表面上走る、サスペンス・スリラー的なストーリーの根幹でじっくりと動くのがアメリカ文化で育ったビルがフランス文化で育ったヴィルジニーやマヤとの異文化交流を経て、違いを受け入れ理解し、変わっていくストーリーだ。

この異文化交流と家族愛みたいなものを場所を変えること、撮り方を変えること、そして何より役者陣の圧倒的な演技で見せられたことで劇的な展開やスーパーヒーローが誕生しなくても作り上げられたこの作品は本物に素晴らしいと思う。

ビルがマルセイユで新たな幸せを見つけたが、元々マルセイユに来た理由は娘・アリソンの無実の証明。そこに対する執念も変わらず持っていたビルはとんでもない行動に出る。

最後にビルが地元スティルウォーターに戻って見たいつもの風景に対して言った「全部違って見える」が何よりも印象的。
自分のやったこと、そしてそれにより得た結果全てが乗っかった台詞。

ビルがなぜいつものありきたりな風景に対して「全部違って見える」と言ったかはぜひ作品も見て感じてほしい。

少し話は逸れるが、マルセイユといえばサッカー好きとしては同名のサッカークラブはもちろん知っているだろう。
もちろんこの映画でもいろんなところで名前が出てくるしスタジアム観戦のシーンはすごく大事な場面だ。
マヤがマルセイユの選手名を言うセリフでペイェに並んで酒井宏樹の名前が出てきたのは日本人としてシンプルに嬉しかった。
それだけ酒井宏樹がチームの中心人物だったことがわかる。
もう最近日本人を獲得する欧州のチームはスポンサー欲しさとか放映権の話ではなく、単純に選手の能力の高さを評価して獲得していることが多くなってきていると思う。

だいぶ話が逸れたが、『スティルウォーター』地味な存在だがかなりの良作なのでぜひ見てほしい。可能なら劇場で。

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