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サカナクションのライブの凄さは徹底した予定調和にある?

サカナクションのライブにはワンマン、フェス含め何度も足を運んで何となく思っていたがサカナクションは予定調和と違和感を作ることを意図的に行っていると思う。

ゴールデンウィークにサカナクションは去年に引き続き緊急事態宣言中で外出自粛している人も多いということで映像作品として販売しているライブ映像を無料で配信していた。今回は去年視聴者の度肝を抜いたオンラインライブ『SAKANAQUARIUM 光ONLINE』の無料配信もあった。


映像作品も持っている自分は割と冷静に見ていてサカナクションのライブが凄い理由が分かった。


サカナクションのライブといえば、レーザーや映像でのド派手な演出は勿論のこと、毎回オーディエンスを驚かせる練りに練られた演出が特徴だ。

更にセットリストの組み方もオーディエンスがピークに盛り上がるパート、ゆるく踊れるパート、聞かせるパートなどパートも分けられその中身も緻密に作られている。これらが当然サカナクションのライブの凄さ、盛り上がる理由だが、それに加えてサカナクションのライブの凄さを作る要因に山口一郎の発する煽りにもあると思う。特にこれは盛り上がるパートに現れるがこれがあるおかげで曲が0秒目から盛り上がることに成功している。

“夜の踊り子”を演奏する前には「みんなまだまだ踊れる?」と言ってイントロが鳴る。

“アイデンティティ”の前には「アイデンティティいくぞー!」「準備はいいか!」と言って『アイデンティティがない生まれないラララ』と歌う。

“ルーキー”では間奏から『ミエナイヨルノツキノカワリニヒッパテキタアオイキミ』のコーラスとラストのサビの前にあるパートにワンマンなら山口一郎が「幕張メッセ―!!!!」など会場名を叫び、フェスなら「フジロックフェスティバール!!!!」などとフェス名を叫ぶ。

ちなみにこの間無料で配信された『SAKANAQUARIUM 光ONLINE』では「SAKANAQUARIUM 光オンライーン!!!!」と叫んでサビに入った。

『ミュージック』でもラップトップ横並びのパートからバンドセットに転換してサビに入る前も山口一郎は「行くぞー!!!!」と叫ぶ。

これらはサカナクションファンなら知っていることだと思うが、これを山口一郎は同じ言い方で毎回言い続けている。これが何を意味しているか。

イントロが鳴る前、サビの前にオーディエンスの盛り上がる準備をさせ爆発的に盛り上がらせることができる。

何度もサカナクションのライブを見ていて確信した。これは戦略的な煽りだなと思う。

日本のアーティストで「いくぞー!」や「いけるかー!」など曲前、サビ前に叫ぶ人は多いが、どの曲(パート)で、どの言い方で煽ると決めて煽っている人はほぼいないような気がする。

サカナクションを自分が初めて見たのは記憶が正しければ2010年の新木場Studio Coastで行われたストレイテナーと対バン。
この頃は今のように山口一郎が煽ることはなく、その都度その都度でオーディエンスを盛り上げていたように記憶している。
今のフェスのトリの常連で居続けているサカナクションになるまでに多くのアーティストのライブを観察し、分析した結果、意図的に編み出した手法と言ってもいいだろう。

サカナクションの曲はサビ前にはサビがくるぞ。盛り上がる準備はいいか。と言わんばかりのフレーズを挟むことが多い。これも曲作りの時に意図的にやっていることがドキュメンタリー映像などからも分かる。
そういう意味ではかなり説明的なバンドであると思う。

日本のアーティストの多くが説明的で分かりやすい曲を作ることが売れるための鉄則になっているが、サカナクションはそれを徹底していることが今の立ち位置にい続けている理由である。

そしてライブでの立ち振る舞いも曲作りでサビ前にサビがくることを説明するフレーズを入れることと同様、ライブで誰にでも分かりやすく爆発的に盛り上がれるような立ち振る舞いを意図的にしている。

そしてそのサカナクションが意図的に作っている予定調和があるからこそ、驚きの演出も活きてくる。
大きな幕を使った演出やメンバーを囲んでいた壁が動き光が差し込んできたり、Rhizomatiks演出のオンラインライブならではの映像演出など予定調和ではない「良い違和感を作る」こともサカナクションは徹底している。

これらのサカナクションの徹底した予定調和と良い違和感が彼らの成功に繋がり今の立ち位置に居続けている理由であろう。


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