背押された大きな荷物は置いてこうぜ
2021年2月3日。Suchmosが活動休止を発表した。
公式のメッセージには
「俺たちSuchmosは、修行の時期を迎えるため、バンド活動を一時休止します。」
とあり、あくまでも”一時休止”であり、また戻ってくる前提の一時的な休止を強調した。
Suchmosの仲良いアーティスト達のメッセージを見ている限り、休止期間は長いもののように思える。
僕も正直そう思っている。
Suchmosはとんでもなく凄いスピードで駆け上がってきたバンドだ。
Suchmosは2013年に結成され、2015年4月にEP『Essence』でデビューした。
その後同年7月に1stアルバム『THE BAY』をリリース。
僕は『THE BAY』リリースされて少し経った10月ごろに彼らの存在をタワレコで知った。
2000年代後半からの日本の音楽はフェスで勝つことが売れること、大きい会場でライブをできるようになる条件だった。フェスで勝つということは初めて見た人にも盛り上がってもらう必要があるので、分かりやすさが重要だった。その結果、曲が何だろうと盛り上がる単調な4つ打ちばかりが蔓延した。2010年代に入ってもそれは変わらず、それどころか4つ打ちも高速化していき何が行われているのか謎の音楽ばかりだった。笑
僕は日本の音楽より海外の音楽を多く聞くようになっていった。
そのつまらなくなってきた日本の音楽にカウンターを食らわせたのがSuchmosだ。
2015年リリースされた彼らの1stアルバム『THE BAY』は2000年代、2010年代前半に蔓延した単調な音楽をぶった切るミディアムテンポが多く横ノリな曲に僕は衝撃を覚えた。
熱狂的は音楽好きやファッション関係の人にもウケ、じわじわ認知度を上げていった。
そして2016年1月リリースされた、Suchmosの名を更に知らしめる形になった『STAY TUNE』。
僕はこの曲が収録されたEP『LOVE&VICE』先着購入者限定の渋谷をタワレコの地下にあるライブハウスで初めてSuchmosのライブを見たが、その時の光景は今でもしっかり覚えている。日本のアーティストではなかなか感じないバンドのグルーヴ感、ボーカルYONCEの歌の上手さに驚いたし、お客さんそれぞれが自由に踊りながら楽しんでいる様子も日本とは思えず感動した。
僕はこのライブ後、日本の音楽シーンが久しぶりに変わると確信した。
2017年にリリースされた2ndアルバム『THE KIDS』はバカ売れした。
このアルバムはヒット曲『STAY TUNE』が収録されたが個人的には『A.G.I.T.』と『MINT』という大きい会場で鳴らすべき曲が収録されたことに大きな意味、というか彼らの強い意志を感じた。
ずっと言っていた「横浜スタジアムでライブする」を本気で狙いにいった曲だからだ。
1stアルバムのような曲は秀逸だが、スタジアムの後ろの席までは届かない。スタジアムロックが欲しい。もうこの頃には横浜スタジアムは遠い夢ではなく、達成可能な目標と確認していたから2ndアルバムのタイミングで自然な流れで作られたのだろう。
ただ、今思うと急ぎ過ぎたのかもしれない。とも思う。
この頃には彼らの音楽はフェスキッズにも聞かれライブに行くとそのノリの人達も増え、また、彼らのビジュアルやファッション性から、Suchmosのメンバーが思い描いていた形と少し違う形で消費され始めた。
それでも彼らは横浜スタジアムに向け大きい会場で鳴らすことを意図した曲を作り続けた。
2018年にリリースされたミニアルバム『THE ASHTRAY』は初期のSuchmosの曲を感じさせるのは『808』くらいであとはスタジアムに向けた曲が並んだ。
2018年に2015年のことを初期というのも違和感があるが、それくらい凄く早いスピード感で彼らは変化し続けた。
DJのKCEEとボーカルのYONCEはギターを弾き、楽曲だけでなく、曲に合わせて楽器も変化した。
個人的に『VOLT-AGE』は大名曲だと思う。
『THE ASHTRAY』はoasisを彷彿とさせる曲が多く名盤だと思っている。
この年はフジロックのグリーンステージに出演したり、横浜アリーナ2days、紅白歌合戦に出演など、大躍進の一年。
フジロックのグリーンステージは彼らの目標の一つでもあり、終始テンションは高かったのを覚えている。ただベスト盤のような内容ではなく今の彼らのモードで賛否両論でもあった。
そのせいか分からないが、この日はライブの内容より、YONCEの天然MCばかり広がっていった。笑
「ありがとう 木々たちよ」
「サンキューベリマッチ ワタシニホンジン」
こんな天然MCもあれば紅白では
「臭くて汚ねぇライブハウスからきました」
とかっこいいが笑えることも言う。
曲よりもMCが広がり、それだけこの頃の彼らの曲は一部の音楽ファンにしかウケてなかったのかもしれない。
そして横浜アリーナでは翌年9月に横浜スタジアムワンマンが発表された。
横浜スタジアムに向けてリリースされた彼らの3rdアルバムは『THE ANYMAL』は衝撃の内容だった。
『THE ASHTRAY』の頃の楽曲を更にこねくり回した間違いなく今までのSuchmosファンにはウケないアルバムを作ってしまった。
間違いなく良作だが、難しいアルバムだ。
『THE KIDS』のヒットと共に彼らのアイデンティティは勝手に作り上げられた。そしてリスナーのリクエストとSuchmosがやりたいこととのギャップはどんどん大きくなっていった結果、Suchmosのメンバーの混沌とした心情が『THE ANYMAL』に反映された。
アジカンが『ソルファ』をリリースした後にこねくり回した『ファンクラブ』をリリースしたことを僕は思いだした。アジカンの場合は周りに止めてくれる人がいて今リリースされている音源でとどまったと思われるが、制作中は凄く長尺な曲やら組曲のような曲も出来ていたという。
Suchmosはおそらくそのこねくり回したままリリースしたのだと思う。
彼らの「変わり続ける。変わらないために。変わり続けて何が悪い」という姿勢が周りの意見も押し通した結果だろう。
ただこの姿勢こそがSuchmosの最大の魅力である。
歌詞もかなり混沌とし歌詞が多く、かなり精神的にきていたのだと思う。
その混沌とした難解なアルバム『THE ANYMAL』を引っ提げアリーナツアーをめぐり、2019年9月の横浜スタジアムを迎えた。
2019年9月8日Suchmosは横浜スタジアムのステージに立った。
台風直撃は彼らの心を映していたのかもしれない。
今のモードを維持しつつも過去の曲もたくさんやってくれかなり良いライブだった。
過去の曲と言ったが2015年の曲のことだ。
2019年に横浜スタジアムに立ったことを考えると約4年でスタジアムでライブをやったことになる。
正直このスピードは異常である。
音楽は音速のスピードで多くの人に伝わったが、その速さにSuchmosのメンバーの体は正直ついていけなかった。というかついていけるはずがない。
Suchmosという装置はとんでもない早さで大きくなりすぎたのだ。
オーバーヒート寸前、いやもうしていたのかもしれない。
オーバーヒートさせながらも無理やり稼働させていた状態だったのかもしれない。
2020年、新曲だけのオンラインライブというのをやったが、特にその新曲のリリースもなく2021年を迎え2月3日活動休止を発表した。
装置を冷やす時期がきたと判断したのだろう。
Suchmosとして長く活動するために必要は時間なのだろう。
初めにも書いたが活動休止期間はそこそこ長いものだと僕個人的には思っている。
Suchmosが変えてくれた今の日本の音楽シーンには、Suchmosに続いたアーティスト達が多くいる。
今は背負わされた大きな荷物は置いてゆっくり休んでほしい。
まさにSuchmosの名曲『Life Easy』の歌詞をそのままSuchmosに贈りたい。
”Yes, yes yes my life easy
荷物は要らない 置いてこうぜ
自分の言葉で sing along sing along
We gonna take a this chance 踊ろう 踊ろう come on
Faith is the key 信じることが真実さ
誰のためでもなく自分のために生きよう"
圧倒的な音楽で帰ってきてほしい。
リスナーにSuchmosっぽくないとかなんとかかんとか言わせない圧倒的な音楽で。
Suchmosの活動休止になんとなく思ったことをバーっと書いたので文章が変なところもあると思うのですが、長々書いてしまいました。
後日修正するかもです 笑
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?