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サバイバル意識の抵抗

けっこう大きめの神秘体験をしたその数時間後、とても私を揺さぶってきた出来事があった。
当時私はある人に犬のトレーニングを教わっていた。そしてそれは私の人生で大きく繰り返した失敗の集大成のようなものだった。詳細は長くなるので省くけれど、とにかくそのトレーナーからこんな内容の長文メールが来たのだ。

あなたは正解をわかってない。だから私が正解を教えているのだ。
あなたは私に従うべきであり、自分で勝手に判断すべきでない。
判断するのは私の役目であり、正しい判断基準を教えているのだ。
あなたは間違っている。
それでは犬がかわいそうだ。
努力が足りない。もっと犬のことを考えるべきだ。
私の指示に従えないのであれば、私はもう教えられない。
あなたを大事に思うからこそ、言いたくないことも言っている。
あなたが私に報告すべきは、ちゃんと自動車免許の更新に行ったかどうかだ。

そういった私を非難する激しい言葉が延々と綴られていた。
読みながら怒りが湧いてきたのだが、どう考えても最後のはおかしい。もちろんこの自動車免許の更新について言及してきたのにはそれなりの流れはあったのだが、いやいやいやいや、犬のトレーナーにそこまで指図される謂れがない。犬と免許更新は全く別物だ。おめーは私の生活全てに口を出すつもりか。

そしてついさきほど、私は自分の意識しか認識できないこと、自分の意識が映っているだけだということを、あんなにはっきりと見た。ということは、だ。

そう思っているのは紛れもなく自分だ、ということだ。

愕然とした。


私は、免許の更新に行くかどうかさえ、誰かに決めて欲しかったということだ。どこまで自分で判断することを放棄しているのか。何が正解なのかわからなくて、その正解を指し示してもらって、その通りにしていれば大丈夫なんだと、確かにどこかで思っていた。

ちがう。

正解は外にはないのだ。だからこそそれで失敗してきた。そうやって私に正解を教えてくれようとした人たちを、私は尊敬しながらも目の上のたんこぶだと思ってきたのだ。初めは認めてもらう嬉しさがあっても、徐々にたんこぶは肥大化していき、窮屈になって、うんざりして、それでも従うべきなのかもしれないと、・・・そう思ってきた。あなたのことを思うからこそ、という言葉に、ああ、こんなに自分のことを心配してくれているのだからと、その通りにした方がいいような気がしていた。

ちがう。

私は自分が間違っていると思っていた。だから正解を教えてやろうじゃないかという人が現れる。ところが自分は間違ってるという認識があるがために「あなたは間違っている」と言われ続けたのだ。そして「あなたのことを思うからこそ」と言う言葉に弱かったのだ。

それは、幼い頃の母と私の関係の焼き回しだった。

間違っていると思うのはやめよう。正解は私の中にある。誰かの言う通りにするのはやめよう。判断することを誰かに委ねるのはよそう。自分自身のことも、私の犬のことも。私は自分を信頼しなくては。

で、トレーナーはこちらの言うことにすべて従えないのであれば、自分はトレーナーを降りるとある。これは私のサバイバル意識からの脅しだ。「言うこと聞かないと知らないからね!」という母のセリフが脳裏に浮かぶ。幼い私は母の言うことを聞かないと家を追い出されてしまうという危機感を持っていたのだ。現に何度も締め出された。もちろん本当に見捨てられると言うことはなかったのだが、私は見捨てられる恐怖を味わっていた。そして言うことを聞いたからこそ見捨てられることなく生きているのだとサバイバル戦略を構築した。

トレーニングやめることを伝えようと思った。全部には従えないよ。たかがトレーニングをやめるという連絡をするだけなのに、私はそんなことしたら見捨てられて今後一切のサポートが打ち切られ二度と助けてはもらえないという強迫観念に苛まれていた。「あなたは間違っている。私の言うことを聞いてれば大丈夫なのに。今からでも謝れば許してあげる。」「あなたはとんでもない選択をした。どんなことになっても知らないからね。」トレーナーが実際に言ったわけでもない言葉が、トレーニングを断ってからもしばらく私の中に鳴り響いてたいへんだった。私は見捨てられることをこんなに恐れていたのだ。ま、小さい頃に植えついたものだから、そう思っても仕方ないね。

強迫観念はなんだかんだフェードアウトしながら半年くらい続いた。

意識が拡大すると、サバイバル意識は抵抗する。
それはこれまで築き上げてきた戦略を放棄することを意味するからだ。
それが現実にはこんなふうに現れることがある。

そしてわからない意図がとんでもなくあるということにも気づいてしまうのだ。3ヶ月で覚醒するのは諦めた。通信講座の講師の方にも言われた。

急がなくて大丈夫です。この工程だけで普通なら2転生ほど費やします。だから気長にいきましょう。


ああ、先は長そうだ・・・。


つづく

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