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国立民族学博物館(大阪)

日本にある国立博物館は、国立文化財機構が運営するものが東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館の4つ。その他にも、国立アイヌ博物館(北海道)・国立工芸館(石川)・国立科学博物館・筑波実験植物園(茨城)・国立科学博物館(東京)といった博物館があるそうです。

また、それらとは別に「国立」が名前にある博物館として、大阪には国立民族学博物館があります。

国立民族学博物館は、1970年の大阪万博開催地跡にある万博記念公園の中にあり、博物館自体もじっくり見ると軽く半日はかかってしまう楽しい博物館です。

丁度子どもが学校で公害について学習し、水俣病に関心をもっていたことから、GWに国立民族学博物館へ案内しました。みんぱく創設50周年記念企画展「水俣病を伝える」と、みんぱく創設50周年記念特別展「日本の仮面――芸能と祭りの世界」、そして何よりも常設展を案内するという盛りだくさんな内容のため、それぞれに時間をかけることは出来なかったのですが、興味の種さえ撒いておけば、あとは大きくなったら自分で行くでしょ、と思っています。

万博記念公園および国立民族学博物館は、母方の祖父母宅や通っていた大学院に近いこともあって、一時期は年に数回訪れていたのですが、よく考えると2007年のジェットコースター事故以降は足を運んでいませんでした。20年近くぶりに訪問しましたが、当然のようにいろいろ変わっていました。

万博記念公園の中ではいくつかの催し物があったりしましたが、博物館だけに用事がある私たちの場合、博物館の観覧券を購入すれば公園は追加料金なしで通過できます。さらに、「高校生以下の方が万博記念公園内を通行される場合は、同園各ゲート有人窓口で、みんぱくへ行くことをお申し出いただき、通行証をお受け取りください。」とあり、子どもはそれに該当するので、ゲートで通行証を受け取ることにしました。

窓口のスタッフさんにその旨を伝えていたところ、私たちが見えなかったらしい中年男性が同じスタッフさんに用事があって声をかけたのですが、そのような場合であってもスタッフさんが慌てず、先に用件を話していた私に対して、「(この人)お連れさまですか?」と尋ね、「全く関係ない人です。」と答えると、「こちらの方の次に用件をうかがいます。」とバシッと言ってくださって頼もしかったです。仕事の場面でもそうですが、その場にいる女性や子供を透明人間扱いしたり、こいつらよりも自分が優先されるべきだと言う感じで割り込む中高年の男性にたまに遭遇して、「え?」と思うことがあるのですが、こちらのスタッフさんの対応は格好良かったです。

正面玄関から太陽の塔の向こうに行く感じで歩くこと多分15分程度で博物館に到着しました。近くにはバラ園があってちょうど良い感じにバラが咲いていました。

バラのシーズンでした

どこかのインターっぽい年齢が多様な一群と前後する感じで、まずは日本の仮面展。雅楽や能楽、各地のお祭りで用いられてきた仮面から、仮面ライダーまで、人々がハレの場で仮面を身に着けることはどのような意味があったのか、仮面をつけた人はどのような存在になるのか、といったことを考えつつ、大量の仮面の前を通り過ぎました。各所に警備員さんを含むスタッフさんが巡回していましたが、人が少ない時期にこの展示を見ていたらちょっと怖いかもしれません。

仮面展の最後の写真撮影OKコーナー。耳がユニーク。

その後、常設展コーナーへ。「水俣病を伝える」は常設展コーナーの一角にあるそうなので、入口付近のオーディオブース(贅沢なほど画像資料があって、これを見るだけで半日以上楽しめそう。しかもブース部分のデザインもユニークです。)でひとつだけ画像資料を見てから、順路にしたがってオセアニアコーナーから見て回ることにしました。

復元品とはいえ、原寸大に近い展示物などが集められているので、昔からそうですが、おもちゃ箱の中を行くようで楽しいです。

迫力のあるトーテムポール

前に来た時のかなり遠い、うろ覚えの記憶を紐解くと、前は主にエリア別の展示だったような気がするのですが、今はエリア別に比べて楽器や言葉といったテーマ別の企画が増えていたり、体験コーナーがあったりして、訪問者を増やすための工夫がされている印象を受けました。


どことなくユーモラスな骸骨人形
何度か世界は滅亡しているらしい

「水俣病を伝える」コーナーは、最近でも、環境省大臣(今回だけではなく長年そのような慣行が環境省職員によってなされていたらしい)側が被害者の聞き取りの場で信じられない対応をしたことが報道され、公害などに関して被害をなかったことにしたり、矮小化したり、過去のことだからと言って切り捨てようとする政府側の姿勢は四大公害の時代とそう変わらないなと思いましたが、被害を無かったことにはしてはならないし、被害者は十分に救済されなければならないし、同様のことが再発してはならないし、そして同時に、もともとの水俣の美しい自然を誇ることができるような取り組みが行われる必要があるといったことを、水俣病を伝え続ける活動や研究に関する展示を見て思いました。

なお、この企画展を見たいと言っていた子どもが一番関心をもったのは、水俣病発生地の泥を詰めた瓶だったらしく、地震が発生してあれが割れたら自分たちも水銀を重度に摂取してしまうのだろうか、などと心配でたまらなかったのだそうです。地元の四日市公害に関しても四日市市立博物館で被害者が被害救済と問題解決に向けての法廷闘争その他の活動をした様子を学ぶことができ、何度か連れていったことがあります。子どもは、その展示を見てもまた空気が汚染されたらどうしよう、息苦しくなったらどうしようと心配になる人なので、そのような心配をするのも当然かなと思いました。

また、水俣病に関するコーナーの手前の「言語」体験コーナーがあるのですが、子どもが気に入ったのはそのコーナーで、いつか友人を連れてここで楽しみたいと言っていました。三重から国立民族学博物館はちょっと距離があるので、気軽に友人たちと来ることは難しいだろうなと思いつつも、「そうだと良いね」と言うしかありませんでした。


インドのコーナー。ドゥルガーさん?
東南アジアの布を眺めつつゆったりするコーナー
モン族の文化と暮らし

ボリュームのある常設展のデメリットは、贅沢な話ですが、あまりに展示物が多いため、順路通りに進むと、最後の日本コーナーあたりで力尽きてしまって、展示物に対する気力が失われてしまうことだと思います。そういえば前もその前もそうだったなと思い出したのが日本コーナーで、次来るときは順路を多少無視して日本コーナーメインで見た方が良いんじゃないかと思ったりしました。


アイヌ文化と暮らし

民族学博物館なのでそうだろうと予想していましたが、パレスチナの問題や、日本の移民の問題などもしっかり展示がなされていて、近畿の小中学生はみんなこの博物館に来たら良いなと思いました。

後日、別の博物館の展示を見ていた時に子どもが、「歴史民俗博物館ってこの間行った大阪の?」と尋ねるので、「いや、それは大阪じゃなくて千葉」と答えましたが、まだ行ったことがない千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館にも行ってみたいです。