1年間の留学、15,000円で出発したら…②~飛行機・到着編~
12時間ほどのフライト。
機内食が配られる時間になり、CAが近づいてくると凄くDOKIDOKIしたことを覚えている。
そう。
" Fish or Chicken??"
の質問が来る、例のアレである。
僕は、順番が来るまでの間、ポーカーフェイスで機内のモニターで映画を見ていたが、もう話は頭には入って来なかった。
「絶対にチキンって言うんだ!」と決めて、頭の中でイメトレを繰り返していたからだ。
なんせ、英語の勉強をロクに話した事はないのだ。
頭の中で、
「アイ ウォントゥ ハヴ チキン」をずっと頭の中で反復させ、しかも笑顔で言おうとまで決めていた。マク○ナルドのバイトの面接なら即合格だろう。
しかし、どれだけ練習しても、実戦は思い通りには行かないものだ。
CAのお姉さんが来て、私に何かを話しかけてきた。
全く聴き取れなかった。
なので、一通りお姉さんが話した後、さも私は聞き取れたふりをして言った。
「チキンプリーズ」
そしたら、お姉さんが困った顔して、何やら言っていた。
身振り手振り付きで。
そこで、うっすらとだが理解できました。
お姉さん「チキンが人気で、もうさ、魚しかないんだけど、いい?いいよね?食べれるだけありがたいってポジティブに考える人の方が出世すると思うよ?だから魚食べろこの野郎」
と、おそらくそんなことを言っていた。
そして、私に、ほかほかアイテム・アルミに包まれた魚の機内食をくれたのだった。
私は、自分の望む機内食を食べるには、前列の席に座っていた方がいいという事を初めての海外旅行で早くも学んだ。
なんせ15,000円で旅をしているのだ。
貧乏人根性が染みついている私は、少しでも多くの学びを得ようと必死である。
(今、その熱い感情はどこへいtt
さておき。
初めての海外。
全てが、
目に飛び込んでくる景色は、全てが新鮮だったのを覚えている。
ナチュラルボーンの金髪ギャルとか、
日本語がない機内アナウンスや掲示板とか、
アジア人は大体中国人に見られがち、とか。
イギリスの窓口、ヒースロー空港に到着した時は感動だった。
「ボーンアイデンティティ(私が好きな映画)に出てきたあの空港だぁーーーきゃぁーーーー」と、興奮を服の下に閉じ込めて、スーツケースをごろごろ引っ張って歩いたのを覚えている。
しばらくすると、後ろから日本語が聞こえてきた。
「あの、ぼ、ボランティアの方ですか??」
と、同世代くらいの女の子。
声からは、何やら一人で外国にいることへの心細さのようなものが伝わってくるようだ。
私「はいそうです」
女の子「わぁーよかったぁ。私もなんです」
私「あ、そうなんですね。じゃぁ、ロンドンまで一緒に行きましょうよ」
直前の5行だけ見れば、福岡恋愛白書のワンシーンが始まりそうだ。
しかし、この後、私はやってしまうのである。
女の子「何か公共機関の移動は、ICカードみたいなのがいいらしいですよ。安いらしいです。空港直結の駅で買えるらしいですよ」
私「へえー、じゃ買ってみます」
さて、ここで問題です。
私の所持金はいくらだったでしょうか?
そうです、100ポンドですね。
では、引き続き本編をお楽しみください。
【場面は駅員との会話へ(英語で)】
私「あの、何かICカード欲しいんですけど…」
イギリス駅員「☆_%&#%%?」
私「は、はい?あの、IC…カード…ほしいおうぅ」
イギリス駅員「だから、ペラペラペラペラ」
私「(ええー、マジで何言うてるか分からん…)だから、ロンドン!カード!ハウマッチ??」
と、まぁこんなやり取りが5分ほど続きまして、
恐らく、デポジットで5ポンド、目的地まで何ポンド、普段も使うなら何ポンドみたいな説明をしていたんだろう。
私は、後ろに並ぶ人のプレッシャーと、コミュニケーションが取れる事はないという諦念から、初めて海外でやりに行くことになる。
「よし、とりあえず全額ICカードにベッドだ」
(ざわざわざわざわ ザワ
ざわざわ ザワザワ ザワザワ)
今でこそ、電子マネーは普及しているが、この話は2009年、しかも外国である。なけなしの金でイギリス留学を決め、兄に金を借り、ちょっといい枕が買えるくらいの金額だけ持って、たどりついた異国の地。
そんな中、財布の中身全てを聞いた事のないICカードへ入れる伊東カイジ、もとい、私の「もういいや」感にも似た勇気を誰が責められようか。
ここで言い訳をしたい。
この世には「パーキンソンの法則」というものがあるらしい。
分かりやすく言えば、人間は、収入があった分だけ、支出に回す、という法則である。
年収300万円の人間も、600万円の人間も、貯金している金額はあまり変わらないとかいうあれだ。
つまり、所持金15000円を全て支出(ICカード)に回すという私の行為は、
じつはこの「パーキンソンの法則」仕業だったのだ。
だから、一見やってしまってるようで、実は、自然の摂理なので、私はそこまで人として逸脱したことはしていないのである。(苦しい)
話が逸脱してしまった。
そんなこんなで、いきなり所持金がICカードに変わった私。
話を終えると、先ほどの女の子が待っていた。
女の子「長かったですね」
私「ああ、まじで何言ってるか分かりませんでした。ぼく、もう凄い不安です、イギリス生活」
女の子「ええー、だいじょうぶですよお!!!」
そして、私の当初の所持金とICカードの話をした。
女の子「ええー?だ、だいじょうぶなんですか・・・?」
似たような単語の並びなのに、たった3行で女の子の引き気味の感情と、私への呆れ具合が見事に皆様へ伝わったかと思う。
そして、ホームステイ先へ到着した。ここで1カ月を語学学校へ通う為に過ごすのだ。
ちなみに、ホームステイ先から、語学学校までは、徒歩5分という好立地だ。
もう、電車を使う事はない。
つまり、電車意外のICカードはもう使う必要がない事が、早々と判明した。
私がすぐに最寄の駅まで行き、「ICカードの中身を現金にして返して下さい」と泣きついたのは言うまでもない。
そして、いよいよ、翌日から語学学校へ行く。
「外国で言語を覚えたいなら、日本人と一緒に過ごさない方がいい」
日本を発つとき、その言葉を胸に秘めた私が、日本人だらけのクラスの語学学校へ行くとどうなるか?
答えは、「めちゃくちゃにとがる」である。
(続く)
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