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「パンデミック条約」~新型コロナの後遺症

■WHOに世界最大の法的権限を与える?

WHO(世界保健機関)はここ2~3年、権限強化の改革を進めてきました。

WHO憲章に基づく国際保健規則(IHR)の変更と共に、これを補完する「パンデミック条約」(WHO CA+枠組条約)を制定しようとしています。

■「パンデミック条約」「IHR」の草案概要

●各国政府を介さないWHOによる世界統治(国家主権の無効化)
●加盟国を監視
●経済活動、メディアやSNS(インフォデミック)コントロール
●加盟国やその国民を強制的に従わせる(法的拘束力)
●WHOの発案・発動は自由、WHOを監視・検証する機関は設けない
●加盟国の治療法を決定し、指定する薬やワクチンの接種義務化
●加盟国のロックダウンなどを決定、ワクチンパスポート義務化
●発案・発動はパンデミックが起こる前でも可能
●土地の利用法指定(人獣共通感染症対策として農地・畜産業制限)
●環境対策を指定(温暖化防止策など)
●指定する男女平等・ジェンダー・多様性への取り組み実施
●事務局長の任期を延長
●各国の負担額を2割増加(将来対策に11兆円)

[外務省]パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(いわゆる「パンデミック条約」)の交渉

<大まかなスケジュール>

2020年11月…G20でパンデミックの国際法に言及
2021年5月…WHO強化作業部会を設置
2021年5月~2022年5月…第1~9回WHO強化作業部会
2021年12月~2022年5月…第1~10回非公式協議
2022年5月31日第75回WHO総会IHR第59条変更
2023年9月20日…国連が「パンデミック条約」とIHR変更の支持を宣言
2023年12月1日…第59条改正の拒否期限

2024年1月…第154回執行理事会でIHR変更の成案
2024年5月…第77回WHO総会で変更IHRの決定
2025年6月…変更IHR発効

■何のための変更?

一言でいえば、米国に集権するための条約です。
良い面もあるのでは?と思うかもしれませんが、米保健福祉省(米HHS)による3万3000のパブリックコメントでは99%が強い危機感をもって反対しています。

日本では反米的な報道が極端に少ないので、WHOや米CDCなどの発表を鵜呑みにしがちですが、「WHOは特定の民間企業への利益誘導のために存在する機関で、今回のパンデミックにおいても公衆衛生を目的とした働きを全くしていない」というのが、世界における一般評価です。

実際、米企業等がスポンサーなので、公的な組織とは言い難いですが、各国のパワーバランスもあってWHOの発表は公的見解として扱われることが多いです。

米共和党、欧州、その他の国も草案に反対していて、脱退もあり得るとの考えを示していますが、米バイデン政権や米HHS、国連は、米国が主導権をもって強制的にこの改正を進めていくべきだという方針をとっています。

日本は賛成・推進派です。
この草案は政府間交渉会議(INB)が共に作っていて、日本は副議長です。
2023年5月のG7保険相会合で「パンデミック条約の制定を促す」と宣言し、2023年9月1日には「内閣感染症危機管理統括庁」を作りました。
日本政府は現米政府(米民主党)に歩みをあわせています。

■国際保健規則(IHR)を変更する理由

「パンデミック条約」を制定するには加盟国3分の2の賛成が必要ですが、米HHSは半分くらいしか賛成は得られないだろうと予測しています。
そこで重要になってくるのが国際保健規則(IHR)の変更です。

IHRの変更は過半数の可決で実行できます。直接的に「パンデミック条約」が制定できなくても、IHRを変更すればWHOの権限強化を行えます。

IHRの変更部分は300箇所以上とも言われていますが、10月時点での一例でいうと、第3条原則「人間の尊厳、人権及び基本的自由を尊重する」という部分を削除しようとしています。

そんなことが許されるのかと思う人もかもしれませんが、既にIHRは一部変更されています。それがスケジュールにある2022年5月の第59条変更です。
第59条は「発効、拒否又は留保のための期限」を定めています。こういった変更に対する拒否や保留を表明できる期間のことですが、これが短縮されました。

<改定規則の拒否又は保留>18か月→10か月以内 ※8か月短縮
<改定規則の発効>24か月→12か月以内 ※12か月短縮

この短縮規定を拒否できる期限は、2023年12月1日迄です。
期限が迫っていますが、拒否しても意味がないかもしれません。既に過半数の賛成を得て規則が変更できているからです。米HHSの読み通りであり、加盟国に不利な変更でもできることが証明されたので、全体変更も可能だと思います。

現時点では、変更を止めるのはかなり難しいということです。
米国に主権を渡すことに反対ならWHOから脱退するしかありませんが、先ほど説明した通り日本は推進派なので、日本国民がこの変更に反対するには、政権交代を目指すしかないかもしれません。

■「陰謀論」は本当に妄想なのか?

米民主党寄りのメディアやWHOは、「変更に対する危惧や批判は陰謀論」「そういった偽情報の取り締まり強化が必要」だと言っています。

すでに有名なSNSなどでは「新型コロナ(COVID-19)」「(mRNA)ワクチン」などの単語を使用するだけで、アカウントを消されたり、シャドウバンされることが分かっていますが、更にこういった言論統制の強化が必要だと主張しています。
でも、米国やWHOの情報だけが正しいとする根拠が不十分です。

変更に反対する国や人々は、「米国や政府、利権組織による印象操作やフェイク情報こそ規制すべきだ」と主張しています。
その主張にも多分に理があるように感じられます。

「パンデミック条約」「IHRの変更」の根拠となっている「ワンヘルス」というのは、ロックフェラー大学で行われた感染症に関するシンポジウム(WHOや米CDC等)が起源で、『マンハッタン原則』の「One World、 One Health」という思想に基づいています。=「SDGs

WHOは「陰謀論によって目的が歪められている」と言います。
こういった思想には、否定しにくい綺麗事も多分に含まれているので、見る角度を変えると、素晴らしい取り組みのようにも感じられます。

でもその主張は論点のすり替えです。問題は、理想が正しいかどうかではなく、権力を監視し、コントロールする機関や仕組みがないことだからです。

たとえば、WHOが指定するワクチンに効果がなかったり、有害であった場合、誰がその事実を認定し、賠償するのでしょうか。

本来は、それがWHOの役割です。だから、政治や医療・製薬業界との癒着、民間企業との繋がり等を持ってはいけないのですが、実態は違います。

百歩譲って、付与する力に見合ったペナルティがあるなら、議論の余地はあるかもしれません。
それでも権力の統合は好ましくありませんが、実際はそれさえありません。WHOが認めた経済活動でどれだけの生き物が命を落としても、戦争が起こっても、感染源や対策を間違えても、WHOは責任を取りません。
透明性の確保、国民が捜査をする権利、厳しい罰則がセットでなければ、WHO(全ての巨大組織)は正しく機能しません。

世界政府が必要だとしても、米国やWHO、国連で良いのかという問題は別にあります。経済活動から切り離せないのだとしたら、各国が州や自治体のような立場になってしまうかもしれません。
「日本は米国の末州になっても良い」という人もいますが、買われる国の人権は平等に扱われません。
日本で働く平均的な労働者の年収は、大企業の経営者よりも低いですが、その差を作っているのは労働時間や労働力ではありません。ルールを作れる立場かどうかです。

WHOや米国に人権を預けても良いと思っている人は少ないとは思いますが、完全に否定しきれない人もいると思うので、WHOが根拠としている新型コロナのパンデミックやウクライナ戦等について、記事を分けて留意点を説明したいと思います。



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