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大工を育てないと何も守れない・・・

現在、家を建てている棟梁や大工は、すべて「自社の社員」です。
外注や下請けに任せる工務店がほとんどの現在、社員として大工さんを育成しているのは珍しく、同業者からもかなり驚かれます。

創業150年あまり、「大工の店」にこだわっているのには理由があります。

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匠の後継者がいない(10代の大工さんは壊滅状態)

2020年現在、日本全国の大工技能者は55歳以上が18万人です。ところが20代ではたったの3万人、10代に至っては何とわずか2000人しかいません。本格的な木の家の大工さんとなるともっと少なくなります…
これでは、いくら家づくりの注文をいただいたとしても、仕事をする(できる)人がいなくなってしまいます。注文住宅は、考える人、プランを書く人、スペックを語る人、自社のこだわりを語る人、計算する人だけでは建ちません。絶対に大工さんが必要なのです。

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メンテナンス、リフォームができない

大工ではなく、大八、大七(大工=大九と読み替えて、そのレベルに至っていないと揶揄する言葉)のような技術力がない「現場組立員」ばかりになると、技術の結晶である古い日本の家は直せなくなってしまいます。直すというのは新たに造るよりも技術も経験もいるのはどの業種でも共通。腕と経験のある大工さんがいないと、ちょっとした手直しも出来ずに建替えや、やり替えばかりになり、結果消費者が損をすることになってしまいます。

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災害時、家と街を誰が守る?

地震や台風の被害を見るにつけ、我々地域工務店の責任の重さを痛感しています。2018年秋、私たちが営む和歌山地方は甚大な台風被害を受けました。その修復に社員一同で走り回った経験で言うと、社員大工の居るわが社が屋根の応急処置や危険な部分の応急的な修復をどんどん終え、ほぼ1週間で全ての応急処置が終わったのに比べ、社内に大工さんや職人さんの居ないビルダー、工務店、メーカーさんなどは、外部の協力業者さんの取り合いをされ、大変ご苦労されている姿を目の当たりにしました。その時は社内に大工が居ることのありがたさを改めて感じました。
「家」は、人が暮らしていく上で必要な「衣食住」のひとつ。
その家のつくり手を育てることは、社会を支えるインフラでもありますね。

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だから「社員」大工なのです。

創業以来150年以上ずっと大彦は「大工の店」です。そして、ずっと「全棟手刻み」を守り続けています。他の工務店や大工のお父さんがご子息を修行させたり、昔は和歌山各地から大工修行に出てきた若者が材木屋さんや建材屋さんを通じて弊社の門を叩くことも多かったです。国交省支援の国家プロジェクトであった大工育成塾の受け入れ工務店でもありました。今は20代の「社員大工」4名が一生懸命仕事をしており、大ベテランから若手へと大彦の技が伝授されています。大工の技術も時代に必要とされなくなれば、消えていくのでしょうが、私自身は大いに抗いたいし、こういった営みを大切に守り次世代へつなぐ役割があると考えています。 7代目 野上浩幹

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                 https://daihiko.jp/ 大彦株式会社 

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