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『二木先生』読了

以前買った、夏木志朋先生の『二木先生』を読んだ

高校でクラスのリーダーからいじめに遭っている主人公が、ある出来事をきっかけに、担任の美術教師である二木先生に関心を持ち、先生の秘密を解き明かすお話

周りの会話と噛み合わず、どこか「普通でない」自分に気づき、それを才能と信じたいが、なかなか自信が持てない主人公

公私をわきまえ、生徒の前では良い先生として振る舞うが、裏で主人公に秘密を暴かれ、再び自身と向き合うことになる先生

主人公の持つ「普通でない」性質は、周囲から疎まれ、見下されていたが、主人公の自己認識の変化によって、少しずつ成長するための要素になっていく

先生の隠された秘密は背徳的で、切実で、どうしようもない一つの人間性だが、その本質について何度も議論が重ねられ、色んな解釈が見えてくる

ある時は、若者の将来や夢について語り
またある時は、容赦のない社会について語り
二者が正々堂々と衝突する現代物語

個人的には、先生が苦しい時にタバコを吸ったり、主人公が創作に集中するあまり現実生活に支障をきたす描写が、人間の弱さや暗さ、不器用さを示しているようで好きだけれど

『二木先生』に表れた人となりは、率直で、毒舌で、筋道を重んずる強さがあって、皆が薄々感じていたことを綺麗にまとめて言ってくれたような、清々しさがあって、それもまた良いと思った

そして、猫も良かった

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