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第二次くりそらの乱 対ぽめひくん戦について

 電子れいずさん(以下電電)と、くりそら団の渉外担当まじくりさんとで企画された、第二次くりそらの乱。その乱に参加し、わたしは電電軍のぽめひくんと対局することになった。それについて思うところをダラダラと書く。6千字少し。

第二次くりそらの乱

 ことの起こりはV群雄割拠戦である。この頃のわたしは正式に団に所属はしておらず、裏でどういう契約があったかは不明だが、くりそら団が味方したにも関わらず電電軍が優勝できなかったのは電電がだらしなかったせいだ! という説得力しかない理由でもって第一次くりそらの乱が勃発した。

 そしてこの反乱において、くりそら団は敗北した。団長と電電の直接対局こそ制したものの、総合力で敗北という結果であった。
 団として、このままでいいのか? という声はあった。経緯は、以下の画像に詳しい。こうして第二次くりそらの乱が勃発することとなる。誰がこれ書いたの。センスの塊かよ。

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ポメヒ・ナナロクフ・タタキノフ

 第一次くりそらの乱については省く。第二次の乱で、わたしの相手となったのは、ぽめひくんだった。名前が長いし、普段からぽめひくんと呼ぶので、ここでもそれで統一する。
 彼は、将棋系Vの一人である。将棋の実力、企画、PV等の技術面などなど、多才にして実力者、将棋系Vの中心人物の一人と思っている。
 今回はれいず軍の一人としてなので、将棋面だけを、わたしの知っている範囲で書いていく。
 24では最高レート2000越え、現在レートは1800越え。生粋の居飛車党で、横歩、相掛かり、角換わりを好んで指している。矢倉も指すかもしれないが、確認はしていない。対振り飛車では、左美濃や穴熊を多用している。
 将棋の作りは、非常にまっすぐで、筋の良さ、鋭さ、粘り強さを備える(配信枠ではときどき見落としがあるが、配信の勝手もあるので、仕方のないところである)。
 勝手なイメージだが、プロ棋士の郷田さんのような感じだろうか。
 強い。
 ポメヒ・ナナロクフ・タタキノフは、強い。

#ぽめ最強

 くりそらの乱の前に、ぽめひくんの主催でぽめ最強戦(21/09/25)というものがあった。りしょーぎのサービス、アリーナを用いた大会である。最強戦の風景、開催理念は下記リンクから。

 このぽめ最強戦、アリーナ形式では、狙った相手と戦うということはできない。おそらくだけど、その時どきで順位ごとに上から自動マッチングさせていくのではないかという予想を聞いたが、ともかく狙った相手と当たれるわけではない。そのアリーナにおいて、わたしはぽめひくんと対局した。彼とは初対局である。
 対抗形のぽめ穴熊を警戒して、銀がスルスル出ていく用意の作戦の一つだ。わたしは対穴熊において、古い66銀型、藤井システム調、そしてこの銀が出ていくやつを採用している。この対局は優勢を築いたはずだが、終盤力で負けた。わたしの、良くなってから失速する悪い癖が出た将棋であった。勝てたはずの将棋を落とす、非常に悔しい思いをした対局であった。

事前準備①対局カード決定

 こういうイベントを観戦して楽しんでいるだけだとわかりにくいが、くりそらの乱に関しては、実は8月中から画策されていて、同月中には開催決定、メンバー選定は9月上旬と、ぽめ最強戦の開催よりも先に決まっていた。わたしの対局相手がぽめひくんと決まったのも、9月上旬だったように記憶している。
 電電軍はVの軍団というわけではないのだけど、V棋戦でいうところのA級上位、あるいはS級を連れてこい、と内心思っていた中での、彼との対局決定であった。彼の21年7月のデビュー以降(それ以前の活動についてはよくわからない。衝撃的なデビューであったように思う)、配信を楽しんだりしていたが実際に対局したことはなかった。今回の乱で具体的な注文はしなかったが、電電、よく当ててくれたな、という気持ちであった。言う機会を失ったのでここで言っておく。電電かわいいよ電電ありがと。
 ぽめひくんは、わたしのほうから配信枠でも配信外でもあまり積極的に指そうと言うことはなく、そのくせ、いつか指したいと思っていたうちの一人なので、本当にいい機会を頂いた。

事前準備②戦型・作戦決定

 相手が決まって次にすることは、当然戦型予想である。前述の通り、ぽめひくんは居飛車党である。一方のわたしは、振り飛車を採用することが多いが居飛車も指すといったもの。順当にいけば対抗形、相居飛車であれば誘えばわたしの誘導したい戦型に乗ってくれることだろうとは考えた。
 横歩取りを採用しようと思った。
 ぽめひくんの参加しているV棋戦では、振り飛車党が多い。その上居飛車党と当たることがあっても、角換わりや相掛かり調力戦が主流で横歩取りになったことは、記憶にはない。せっかく当たれるのだから、相手の好きな戦型・得意な戦型でやってみたい、自分がどこまで通用するか試したいと思うのは、将棋を指している人には、よくあることだと思う。
 ただし、問題があった。それは、わたしが横歩取りを指さないということだ。
 先手番で、▲7六歩△8四歩の開始の場合、多くは▲6六歩か▲6八飛を選ぶ。もちろん他の手も指すが、▲2六歩はあまり指さない。
 後手番で▲7六歩▲2六歩を見たときは、だいたい△3四歩△4四歩を採用している。
 また初手番に、▲2六歩または△8四歩を採用することはあるが、その場合は▲7六歩や△3四歩は相手次第だがあまり突かない。相掛かりや角換わり志向、角換わりは特に右玉志向である。
 横歩取り調の出だしであっても、15手目、わたしは横歩を取らずに▲2六飛と引く。あくまで相掛かり志向であり、横歩取りを指したことはほとんどない。以前に横歩取り△4五角の練習をしたいひとにつきあった時くらいだろうか。
 横歩取りをやってみたい。ここまでは良かったが、その下地がわたしになかった。

事前準備③作戦の練り上げ

 横歩取りを採用することに決めたが、課題がいくつかあった。
 横歩取りに誘導できるのか。横歩取りの知らん殺し対策ができるのか。大きくはこの2点であり、細かく見るとさらにいくつかある。以下、それらを見ていく。なお、これらの課題解決には、団長のくりそらさんに大いに協力していただいた。やっぱり団長なんだよな。
 以下横歩の変化に関してダラダラ書いていくのだけど、横歩知識は今回ほぼほぼ初めて仕入れたもののために間違っているところもあると思うので、そこらへんは大目に見てもらえるとありがたい。

1横歩取り誘導

 ぽめひくんの配信で対局を見ることはあったが、自然と集中するのは中盤や終盤であり、序盤に集中することはあまりなかった。24の棋譜を漁った。
 その結果、先手番なら最初の二手は▲7六歩と▲2六歩がセット、後手番なら△8四歩が高確率で採用されていることが確認できた。後手番の4手目が微妙で、△8五歩を決めることもあった。飛先を決められた場合▲7七角を半分強制されているようなもので、この場合角換わりになる。振り飛車を主軸にしているとは知られていると思っていたので、3手目▲2六歩を見て4手目△3四歩と乗ってくれないだろうか、とは希望であったが、彼の性格からして誘いには乗ってくれるだろうと踏んだ。
 先後どちらであっても、おそらく高確率で横歩取りに乗ってくれるだろうとこの時点で予想した。

2-1知らん殺し対策

 横歩取りは大駒交換が早い段階で発生する可能性があり、飛を歩越しの高さで振り回す華やかな戦型である。早い段階から歩を複数枚持つことも確定しており、独特の手筋や狙い筋がある。知識がない攻撃手段をされると一気に崩壊することも考えられる。
 例えば、プロ間では後手無理筋とされる△4五角の変化は、プロだからこそ無理筋なのであって、アマであればかなり有力だと思う。上述した知人のときは、相談しながら駒を動かしたのでなんでもなかったが、実戦では非常に怖い思いをし続けそうだ。
 このように横歩取りに誘導できてもそのあとの変化をどうするかというのは課題であった。やはり、棋譜漁りである。
 ぽめひくんは先手番であれば青野流を採用することが多かった。後手番で一番警戒している△4五角を採用している棋譜は見当たらなかった。わたしが先手を引いた場合、▲3六歩を採用すれば準備範囲を絞れると期待した。
 横歩取り青野流。この一点張りに決定した。

2-2青野流対策・先手番

 横歩取り青野流が猛威を奮っている。プロ間で横歩取りが減ったのは、素人考えではあるがこの戦法のせいではないかと思っている。後手をもってこの戦法に勝てる自信のある人だけが横歩取りを誘導し、それ以外は避ける。そんな印象である。
 ぽめひくんは後手で青野流と対峙する場合、△4一玉型を採用している。中原囲い志向だ。△2二銀と△4二銀とがある。先後逆でぽめひくんが相手の飛周りに先んじて▲8八歩と受ける棋譜があったため、おそらく△4二銀(と△2二歩)であろうと予想した。△2二銀も自然で有力だが、▲4五桂警戒で中央に厚く構えるほうほうを選ぶだろうということだ。
 そして中原囲いを作る間に▲3七桂▲3八銀▲3五飛が間に合う。後手は△7四歩から△7三桂を用意したいはず。△7四歩をかすめ取る順もあるが不安定な飛が怖い。それよりは△7三桂までは許すが△6五桂は許さないほうが安定して有利ではないかと考えた。後手の持ち歩を削れるので、具体的に勝ちまでもっていくことはまだまだだが、先手十分だろうと判断した。

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 以下角交換をしても△3三同銀が飛当たりにならないし、▲9六歩から▲7七桂として2枚の桂と端角で5三地点を狙う方法がある。

2-3青野流対策・後手番

 これが問題であった。先述の通り、後手番で迎え撃つ作戦が思いつかなかった。想定局面で先手良しなら、後手番でその局面を迎えるわけにはいかない。
 17手目▲5八玉に対する、後手の対応はいくつかある。中原囲いを目指す、中住まいを目指す、美濃の形を頼って△6二玉を目指す形等だ。そしてそこに至るために、先に玉を動かすか金銀を動かすかでも違ってくる。
 相掛かり調に指すとき、わたしは中住まいを採用している。相振りでもまれに採用する。感覚的に、やはり中住まいが一番使いやすいと考えた。
 △5二玉▲3六歩と進んだ局面を想定した。ここでなにをするかが非常に悩ましかった。

20手目

 ▲3七桂は目に見えているし、▲4五桂も勢いのまま跳ねてくることも当然ある。5三地点を受ける△6二銀は、将来の▲8四飛などを見て△7二金とセットでないとまずい。感覚的には△7六飛とこちらも横歩を取りたくもあった。これは△7四歩の支えにもなる。のだが、先後同形になる場合、どうしても先手が勝ちやすいようだ。△7六飛には①▲7七桂もある。ぽめひくんなら本筋は角でくるとは思っていたが、▲7七桂△5五角(香取りと▲3七桂封じ)▲2二歩(角をどかせる意味)△同角▲3七桂のような形は後手厳しそう。また②▲8四飛もあって、これは△8八角成に▲同飛を用意している。本来横歩を取った瞬間は、取られた側が対応を迫られて手番を握れるはずだが、逆に△8二歩を強要され手番を握れない。
 ここで団長から助言を頂いた。プロの棋譜の変化で2筋に歩を垂らす方法があると。△2六歩である。▲3八金で受ける場合、成り捨ててから飛交換をすれば△2九飛がちらつく。△3七桂への牽制になる。△3八銀はやはり成り捨てて角交換から△2八角。
 大人しく指すなら▲2八歩、激しくいくなら▲3七桂。前者は長い将棋になり、後者はいきなり△2七歩成り▲4五桂以下戻れなくなる。
 ぽめひくんの棋譜で、この△2六歩を受けたものは確認できなかったので、ぶっつけでこれをされたら性格上、▲2八歩を選ぶだろうと予想。これが通れば、将来2筋に歩が利きにくいし、タイミングで成り捨てれば2筋に飛を動かしたときに△2二歩などで受ければその上から追撃は喰らいにくい。先手から▲2三歩や▲2四歩から攻める筋も消している。
 これで後手有利とはならないが、これなら交換を誘える△7六飛を安心して指せるので、それなりに勝負になるのではないか。
 つまり上図から△2六歩▲2八歩△7六飛▲7七角△パス▲3七桂の局面まで想定した。後手のパスをなににするかがまた悩ましいところだが、△7二金か△4二銀だろうか。5三が薄いのが気になる上に6一の金はそのままでも守りに利くこともある。△4二銀が価値が高いか。
 そして、五段目に飛が先着すれば桂跳ねを牽制できる、とは先述の通りなので、下図までを想定局面とした。 

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 ここからは先手が飛を8筋に回して△8二歩を打たせたり、▲3五飛として交換を迫り▲4五桂を実現させる、あるいは一回じっと▲3八銀の3通りがあると考えたが、さすがにそれらから絞ることはできないと諦めた。
 横歩取り素人のわたしが、横歩取りについてざっと調べ、この局面まで辿り着くのにおおよそ一ヶ月ほどであった。対局カード決定から対局日までに、ギリギリ間に合った感じである。

負けたくない

 時系列でいえば、対局カード決定→ぽめ最強戦→第二次 である。
 横歩取りで勝負を挑もうと決めた上で、しかしわたしが横歩を指している将棋は世に出さないためにこっそりこっそり練習をせざるを得なかった。ぽめひくんがどこまでわたしの棋譜を探すかは不明だし、そもそも人読みをどこまでするかも不明であった。といぷーとのアレやソレもあって忙しいことは知っていたので、この対局に注げる時間はわたしよりも限られているとも思っていた。
 わたしは、先にぽめ最強戦で手痛い敗北を喫している。同じ相手に何度も負けることは、将棋を指していてやはり許したくないところがある。大きく棋力が離れていれば仕方のないところではあるが、ぽめひくんは、確かに若干の格上とは思うが大きくは離れていないと思っている。なおさら負けたくない。
 また、くりそら団としても、数回機会を頂いているが結果を残せていないこともあった。第一次くりそらの乱では団長の点数の半分以下の点数。対ハムさん戦の無限5番勝負では敗北。お祭りといえば確かにそうなのだが、やはり、勝ちたいのだ。
 そういう思いで挑んだ対ぽめひくん戦であった。
 なお、本譜の振り返りまでここでするとなると、おそらくここまでの倍以上はかかるので省く。
 対局相手が決まって、その相手にいかに勝つか。その準備をどうやったかを書いてみたかった。今後、ここまで準備することはおそらくないだろうか。あるかもしれないがわからない。

最後に

 この記事を投下するのは、第二次くりそらの乱一日目の翌日である。一日目の様子は以下から。

 二日目は10/10に予定されているが、枠はまだのようなので、興味のある方は電電のちゃんねるを登録して待たれるといいと思う(と言ってもわざわざこの記事を見るひとならとっくにしてるとは思うが)。

 今回対局していただいたぽめひくん。対局の機会をくださった電電やまじくりさん。相手の得意形でも好きにしていいよと送り出してくれた団長。本枠でメス声でわかりやすい解説をして頂いたなななな。あるいは今回の企画に関わったすべてのひとたちに感謝を述べてこの記事を終わることにする。
 ありがとうございました。
 今後もそれぞれ、将棋を楽しんでいきましょう。

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