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鷺宮ローランのサンドバッグになっているときに考えたことの備忘として㉞‐2 感想戦編

 前の記事で、△8六歩を最善と信じたところで、対局中のここが大事かな、という点に関する記事を結んだ。
 その対局を終えて、あ、もちろん負けて、前の記事をローランさんに見てもらい、それを踏まえたうえでの感想を頂いた。
 こちらは、それらを踏まえての振り返り記事となる。

 前の記事はこちら
 棋譜はこちら。そちらのページにはチャットログも残っているので、ローランさんの直のコメントも見ることが可能。たこだけに。いかがかな。

 画像は全て、後手のわたし目線なので、手前側が後手になっている。


◯15角はいかにもな昔気質の手で、26と37のどちらにも1手で引けるのが強み

▲1五角図。

 角を右辺に転換するのに調子のいい角引き、という認識は合っていたよう。

 前の記事でわたしは、▲2六角も▲3七角も、どちらも引きたい位置なので△1四歩で催促するのはやぶ蛇と判断した。しかし、先手からすると角の引き場所は後手の陣形を見てから決めたい部分があるので、ここでは催促も有力だった模様である。その引き場所を見てから、こちらもどこを攻めるかを決める。それに合わせるように角を再び動かすなら一手得している、という計算になる。

 この△1四歩が、後手にとって大きくプラスになる手というのも大きい。
 前記事でも書いたが、玉の懐を広げる意味がある。本譜は結局、終盤で端をついていない状況に困っている。また、将来の▲1五桂も消している。

 相矢倉戦において玉側の端をつくと、棒銀端攻めが脅威になるのだが、本譜においては角がその進路にいるため、端棒銀が発生しない。端攻めが絡むような将棋ではないので、堂々と突いて良さそうである。

棒銀端攻め図。矢倉で端歩を受けるかは、この端攻めがあるかどうかが1つの判断基準。
以下▲9五同歩 △同銀 ▲同香 △同香 ▲9七歩 △9二飛が一例。
堅陣なはずの矢倉だが、その金銀がいない部分を攻める順は強力。

 また、端を突くことで△1三角も見せられる。ただしそれがどれだけ有効かは不明。

 端歩を突いて催促することで、相手に決めさせてから、自分の攻め形を決めるほうが良さそうである。

 なお催促された場合、ローランさんは▲2六角を予定したらしい。こちらのほうがより攻撃的な意味合いがある。

◯後手の攻め方としては55歩同歩同銀を単にやるよりは

▲5五同歩図。

 攻めについてである。
 指摘は、△6五歩突き捨てを絡め、桂も参戦させるような順である。

変化△5五銀図。多少の手順前後はあるが△5二金と▲7九玉をお互いに入れてから△6五歩。
以下▲同歩 △同桂 ▲6六銀 △5五銀 の局面。

 △6五歩以下の攻めは示された一例。こうしてみると端の角がぼやけている。
 この攻めをするには桂を拾われて▲5三桂が気になるので、△5二金を入れたい。それと交換に▲7九玉を入れたが、そのぼやけた角を働かせたいので、替えて▲2六角になるのだろうか。▲3七角ならこの順を見送る。
 変化は一例だが、この順だと先手からの攻めがしばらくない、あるいはB面攻撃ならありえるか、くらいに見える。

 もちろん候補にはあったが、△6五歩を見てから▲2六角や▲3七角が気になった。

変化▲3七角図。△6五歩のタイミングで▲3七角が気持ち悪くて、
わたしは本譜で選べなかった。
このタイミングで▲2六角だった場合、▲7一角成としてできた馬の働きに
不満があるとローランさんは見ていたようだ。

 ▲2六角は、△5五銀のときに▲5三角成、それを嫌って△5二金なら▲7一角成の狙いである。
 ▲3七角は、7三・8二を睨むラインで牽制する意味である。

 そのために、△6五歩を使わない攻め、つまり△8六歩からの継ぎ歩攻めのほうが有力と見ていた。あるいは本譜のように△5四銀と出るスペースを空けた意味もある。5五で単なる歩交換はこの辺りの意図。

 以上を踏まえると、前項の△1四歩は有力だったようだ。この△6五歩を絡めた攻めをするかどうかの判断材料になる。

 あるいは、▲2六角が確定した本譜の48手目。わたしはラインを通す△5三銀を選んだが、ここで△6五歩から上記の攻めを見る順もあったかもしれない。

▲2六角確定図。

 ここから同様の攻めを繰り出せれば、先手の角のラインは緩和されており、5四の銀が素早く応援できる形なのでより強く戦えそう。ただし、△6五歩 ▲同歩 の次の△5五歩はおそらく取ってくれないので、別の将棋になりそう。

 △6五歩以下の攻めは、大成功、小成功、失敗に分かれてしまうが、どの形がいいのかよくわからない。

◯70手目の67銀は有力ですが

69手目▲6五角図。桂を払われたところ。

 指摘は、△6七歩成 ▲同金 △8七飛成。
 後続はおそらく、▲7七金 △8二竜くらい。竜にしてから自陣に引いてゆっくりすれば、いじめられにくく厄介だったよう。
 対局中は、この△8七飛成が6七の金に当たりになっていることを見落として選べなかった。正しくは、この金が浮いていないと錯覚していて、▲8八飛とぶつけられて交換するよりなく、そのときに先手は▲6六玉のような形で耐えられ、一方わたしのほうは3四の拠点に苦しめられる、と見ていた。
 しかし、6七の金、浮いてますね。▲7七金で追い返すしかないですよね。あれ?

 △6七銀のもとの狙いは、5六のほうの金を取ることだった。想定していた順は、
 △6七銀 ▲6八歩 △3九角 ▲3八飛
 △5六銀不成 ▲同角 △6七歩成 ▲同歩
 △5七角成(変化△5七角成図)

変化△5七角成図。▲5六同銀や△6七歩成への対応で、ここまでも一直線ではない。

 ただし本譜は△3九角に▲2七飛だったため、飛の利きが予定と狂った。角が5七に成れないのでは玉に近いほうの金が残っていることが寄せの負担になるだろうという判断で本譜順に。
 ▲2七飛が、見えてはいたが軽視していた。本譜順にならざるを得ないのなら、やはり△6七歩成がまさったのだろうか。

◯実は56銀打ちは「切ってくれ!」というお願いの手

85手目▲5六銀打図。

 80手目の飛がどこに逃げるか問題は、正しく選べていたようだ。ここでの「正しく」は、ソフト評価値的なものでなく、ローランさんが一番嫌がる順と一致していた、という意味である。

 そして▲5六銀打。これが切ってくれという意図の手というのは、半分読みのうちで、半分意外であった。わたしの読みでは▲5六歩であった。

 △5七飛成も△5九飛成も許せないので、ここは当然受ける一手なのだけど、歩でも銀でも大差なく見えた。ここであえて銀というのは、つまり「歩を打って△3五飛と逃げられると嫌なので、銀だったら飛車切ってくれるよね?」ということだと思う。実際▲5六歩を想定して△3五飛が予定であった。

 ただしその△3五飛には▲2五金で捕獲されている上に、これを△同飛と取ると▲同飛~▲6五(8五)飛が発生するので、こちらのタイミングで取ることができない。先手の好きなタイミングで飛を取られる上に自然な△3五同銀は手番を渡しつつ3三地点を薄くしている。

 という変化が頭にあったため、△3五飛は行きたくはないけど行かないといけない、という順であった。しかしローランさんには、おそらくその金を打って捕獲する順がさすがに投資しすぎで嫌だった、ということなのだろう。か? 

 結局この前後で先手の持ち駒に「飛車が入ればシンプルに速度計算がしやすくて本譜の最後の寄せまで見ていた」らしく、どうにかわたしに飛を渡す判断をさせるための手順だったようだ。

 なお、本譜の▲5六銀打に△3五飛は、同様に▲2五金で捕まえられ、そのときに6七に利きを増やしている意味なのかな、という判断で切ることにした。ただその場合こそ、もう1枚使わせる意味で△3五飛もあったのだろうか。

変化▲2五金図。△同飛は▲同飛が▲6五飛を見て選び辛い。
△4九角で取り合いを目指すと、▲3五金 △2七角成 ▲4四金 △同歩 で、
次に▲3六桂や▲6一飛くらいで先手やれそうだろうか。

 あと、藪からスネークってなんですか? 「たらたらたらんちゅら てか!」 の新しい仲間ですかね。挨拶しないと。

◯90手目は相当な勝負所

89手目▲4七飛図。わたしは予想通りの一手だったけど、ローランさんとしては日和った手。
両取り逃げるべからずで、その一手を使って▲8一飛以下で勝ちにいきたいらしい。
△5六角成(飛を取るよりはこちらのほうが本筋)には▲8八玉で耐えている、と見ていたよう。

 キャプションに示したように本当の勝負どころは88手目だったようだが、結果的には前記事での判断通り90手目が勝負どころに。
 ここでなにを指すかが、おそらく最後の大きな分岐点であった。わたしが指したのは△8六歩。ローランさんが嫌がったのは、△6七歩成。

変化▲6七同玉図。上の89手目図から△6七歩成 ▲同玉と進む。

 △6七歩成への応手は、▲同玉のほぼ一択であると思う。前記事でも書いたが、▲同歩には飛を手に入れてから△5三角がかなりきついはず。▲同飛は論外。▲同銀はまだありそうだが、▲同玉よりも優れるかは判断がつかない。おそらく▲同玉が最有力候補だろう。
 そうして露出させられた場合、飛を拾うのが大きな手になりそう。ローランさんの指摘では、△7九飛が候補。これは退路封鎖しつつの、△6六銀以下を見ている。その△6六銀への対処のために先手は飛おろしはともかく、▲6四桂はタイミングを考えたくなる。

 その△7九飛が頭になかったために、この順を選べなかった。見えていれば選んだかというと、今のわたしの局面を評価する能力では、それでも△8六歩を選んでいたと思う。

 前の記事で、▲6七同玉にわたしが考えていたのは、飛を入手してから直後に△6六銀。こちらが▲7八玉以下どうやっても捕まえられない。△8六歩はその退路封鎖も兼ねている読みだったのは先述の通り。

 あるいは早逃げの△3一玉も指摘に上がっている。これは本譜でも指したかった手で、▲6四桂の攻撃力が大きく減退している。

変化△3一玉。読みの上ではこれで手数を稼ぐつもりだった。
本譜は△4二金とかわしたが、なぜこんな手を指したか自分でもわかっていない。
読みも予定も早逃げであったはずなんだが。。。

 本譜の▲6四桂にも△3一玉は有効だったはずで、終盤は駒の損得よりも速度(というほど駒損にはならないのだが)の▲5二金の追撃よりも余裕がある。こちらが駒得する順で応じると詰み、あるいは受けなしになるので、それを避けるように応じる場合、先手が駒得しながら迫れる順になってしまう。実際それが本譜で、収集がつかなくなってしまった。
 読んでダメだと判断した手を指してしまう現象に近いものだと思う。通信将棋でもやってしまう。

投了図。△2一玉で即詰みはおそらくないが、▲2二歩(取り返すのは詰み)△1二玉 ▲3二竜△1四歩 ▲2四金 くらいで、一手一手から受けなしのどこかに落ち着く。
その間、先手玉は一切手つかず状態なので、はっきりと勝ち目なしとなった。

◯鷺宮ローラン強いよ

 鷺宮ローラン、まじで強い。しかも顔がいい。
 忙しい中時間を割いてもらっているので、師匠と弟子という関係ではないがどこかで恩返ししたいところではあるのだが、いつになるかは目処が立たない。34局全ての局面で機会がなかったわけではないが、掴めなかったという結果は、頑としてある。

 いつも対局くださり、ありがとうございます。ローラン。いつか倒すから覚悟しておけ。一回でも勝ったら、鬼の首を取った以上に吹聴して回ってやる。なんせ、宇宙人の首だからな。

 

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