NovelJam参加してきた記の4
架空の鉄道会社制帽をかぶったSF作家さんと佇んでいると、若い女性が現れて総勢3人になった。「NovelJamですか?」「NovelJamです」「ぼくたちもNovelJamです」「NovelJam開場します」振り返ると9時で受付が始まっていた。黄色のカードホルダーは編集者の目印らしい。「古田さんはEチームです」「Eチーム?」「作家と編集の組単位で机が分かれているのでEと書いてあるところでお待ちください」「なるほど」「あとEチームは…」「何ですか?」「ちょっと」「え?」「…理事長の鷹野からお知らせがあると思いますので」「はあ」ホルダーを首に下げ、名刺を入れ、会場に入った。
Eチームは会場のほぼ中央で、2人ずつ向かい合わせで4人がゆったり作業できるよう机が配置されていた。全体的に白くて清潔な空間。前面のスクリーンにはWi-Fiのパスワードが表示されており、足元には電源もある。隅にソファ。そしてホットコーヒー、各種ドリンク、お菓子類が山のように置いてある。勝手に食べていいよということだろうか。「会社」という場所にまるで縁のない人生を過ごしてきたので、「いまどきのオフィス」っぽさ(想像)に気圧されそうになる。椅子に座り、室内にバランスボールがないことを目の端で確認して「Googleほどではないぞ」と自分を落ち着かせる。そして、さも当たり前のことをしているかのようにコーヒーを勝手に注いでみせる。手慣れた調子。そうだ、その調子だ。
「あの古田さん」「わあ」「おはようございます」「おはようございます」NovelJamを主催する日本独立作家同盟理事長の鷹野さんはなぜかヒソヒソ声だった。「じつはEチームは」「はい」「作家さんがおひとりインフルエンザになったと連絡がありまして」「あらま」「すみません」「いえいえ。ということは作家さんと1対1で?」「そうなんですが、でも…」「でも?」「まだちょっと…あとでMさんからお話があると思います」「はあ」「では、そういうことで」「はい」そういうことって?
開場は9時だけど始まるのは10時。Eチームはまだ1人きり。開始までまだ30分あるなと、喫煙場所を探していた参加者の人を案内がてら、エレベータで1階まで降りて、駅そばの喫煙所に戻った。これからの2日間で、ぼくはこの往復を20回くらいすることになる。これが1回目だった。
NovelJam(公式サイト) http://noveljam.strikingly.com/
(つづく カバーイラストふじさいっさ)
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