見出し画像

NovelJam参加してきた記の6

2017年2月4日午前10時、市ヶ谷・五番町グランドビル7FでNovelJamが始まった。日本独立作家同盟、鷹野凌理事長が最初に発した言葉は「おはようございます」。会場に集った小説家が、漫画家が、20代が、50代が、白髪が(ぼくだ)びっくりするくらい素直な声で「おはようございます」と返す。続いて、このイベントのプロデューサーである江口晋太朗さんが登壇した。ちなみにNovelJamの公式サイトの下の方に貼ってある記者会見動画説明文には、ここ数ヶ月ずっと「イベントプロディーサー」と書いてある。「最先端の肩書きかもしれない」と内心ビクビクしていたのだが、単なる間違いだったことがわかってホッとした。江口さんは「面白い短編小説を著者1人につき1作品、会期中に完成させる」という参加要項の「面白い」の部分をゆっくり、嬉しそうに強調して読み上げた(ように見えた)。なんとなく、面白いのところを円で囲んでみる。これで忘れることはないはずだ。

挨拶と説明が終わってもまだ作業は始まらない。10時半からはゲスト講演というスケジュールになっているからだ。著者は同じ会場で作家の藤井太洋さんの話を聞くらしい。編集担当者はエレベータで3階に移動。案内された会議室に入ると、1人の男性が少しだるそうに顔を上げた。表情は明るいのに、眼光はちょう鋭い。年齢がまったくわからない。これが電撃文庫元編集長にして、株式会社ストレートエッジ代表取締役の三木一馬さんだった。「スライドとか資料は何も用意してないよ」「何分話すんでしたっけ?」「そんなに話すことあるかな」「最後質疑応答をたっぷりとりましょう」と終始やる気ゼロっぽく見せかけながら、さすがすぎる実践的な充実トークを展開。タイトルは、読者がその場でツッコめる(参加できる)ようにするとか、紹介文はあらすじにならないようにする、とか、今後も役立ちそうな話が多く、メモをとりまくる。「講演なんて必要ないんじゃないか」と事前に思っていたのがすっかり吹っ飛んで、ここまでで3000円分くらいは元をとったような気になった。

質疑応答も活発でおもしろいやりとりが続く。女性が手を挙げた。彼女の担当する作家さんが「講演を聞くより、一刻も早く1人になって書きたい」と主張し、近くの喫茶店にいったのだという。うっひゃあ!そうこなくっちゃあ!俺らクリエイターだもんな!と思ったが、不謹慎かなと笑顔は控える。「というわけで様子を見にいってもいいですか」三木さんは笑顔で頷き「もしこれで優勝したらカッコいいじゃん、ってボクなら声をかけるかな」というカッコいい一言。一礼をして部屋を出ていく彼女に、何故か拍手が起こった。もしかしたら最初に手を叩いてしまったのは、ぼくかもしれない。

NovelJam(公式サイト) http://noveljam.strikingly.com/

(つづく カバーイラストふじさいっさ)

注:この連載記事は、古田靖の記憶に基いて書かれています。現実とは異なる部分があるかもしれませんが、古田の脳内現実ということでご容赦ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?