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"リアルな別世界"「IDOL-あゝ無情-」 映画レポート_#3

学校を辞めて来た者、仕事を辞めてきた者、アイドルを再びやりたいと望む者、脱退や解散をかけて挑む者。
様々な思いや人生そのものを賭けて合宿に臨む女の子たちの姿がそこにあった。

このドキュメンタリーは「WACK」と言うアイドル事務所の合同オーデションを記録した作品となっている。
有名なところで言うと近年勢いをつけてきている「BISH」と言うアイドルがこの事務所の代表的なアイドルだろう。その奇抜な曲やプロモーションの仕方はアイドルの中でも目に止まるものがある。

九州の離島で毎年行われていると言う合同合宿オーディション。
そこには「WACK」の事務所でアイドルになるために候補生たちの一週間のサバイバルオーディションストリーが描かれている。
しかし、これがただの素人がアイドルになるサクセスストーリーなら今の時代よく聞く話であるが、この作品は今回行われたオーディションのリアルな「光と影」が観ることが出来ると思う。いやむしろ影の部分がほとんどかもしれない。
しかもアイドル候補生だけだけではなく、「WACK」所属の現役アイドルも参加している。なぜ、現役アイドルが参加するのかと言うと理由は様々である。所属しているグループから戦力外通告を受けた者、個人としてさらなる成長をしなければならない者、圧倒的な力の差を候補生に見せつけ「WACK」のアイドルとはこうゆうものだと候補生の道標になる者。

中でも今回の作品は「BiS」と言うアイドルグループの存続と解散までのもがき苦しんだ姿をフューチャーしたものになっている。
それと同時に事務所の代表取締役兼プロデューサーの渡辺淳之介と言う人物がどのようにアイドルをプロデュースしていくのかも見所の一つである。

正直ここまでリアルに貪欲にそして無差別に彼女たちの姿を追った映像を見て驚きを隠せなかった。
彼女たちがどんなに落ち込んでいようが泣きわめこうが緊張で過呼吸になって緊急搬送されようが、解散するかしないか大事な話し合いでさえもカメラが割って入り、無慈悲に撮影されていたのであった。
ここまでリアルな人間の感情のぶつかり合いを見れることは中々ないと思う。



Ⅰ.アイドルを辞める姿

普通、アイドルが解散したり、脱退するときは曖昧な言葉や綺麗事を並べて世間一般には公式サイト等で公表することが多いだろう。実際の裏側はわからないが私はそう思っている。
しかしこの作品ではなぜBiSと言うアイドルが解散したのかを明確に記録している。
BiSがこんなにも苦しんでそれぞれがメンバーとすれ違って、事務所やスタッフと揉めて解散していく姿を観て、なんてこんなにも人の人生って上手くいかないのだろうと感じた。せっかく必死こいてオーディションに合格して活動していったのにこんな自分自身のグループを愛せなくなって解散していくのは儚いものだと感情が溢れそうになった。
この作品の最後のシーンで解散ライブが行われた後の各メンバーが契約解除になったか事務所に残留したかどうかわかる部分があるのだが、何故がそこがとても印象に残っている。無情にも生々しく、現実を突きつけられているような気持ちになった。
そして解散ライブが終わった後にメンバーが泣きながら帰路に着く。
その背中にはとても寂しくもあり、今まで必死にやってきたことはなんのためだったんだろうと虚無感に襲われる感情を見ているようだった。
本当に感情ぶつかり合いの嵐でした。


Ⅱ.渡辺淳之介と言う宗教国家

まず、この作品見て一番に思ったことは「何故この人はこんなにも彼女たちに厳しく接するのだろう?」と疑問に思いました。
今の時代稀に見る超スパルタ圧迫オーディションで毎日脱落者を参加者全員の目の前で発表すると言う公開処刑をしていた。個人面談を行うシーンがあるのだがそこで厳しい言葉をぶつける姿が映画ではピックアップされていてほぼ全員泣き崩れていた。食事を残したら減点対象や一度脱落を告げられた者が救済措置で復活できるのだがその救済措置がマラソンで一位になれだの、腹筋が一番数多くこなせた人だのたった一週間の合宿でこれが直接的に何に関係あるのだろうと浅はかながら思ってしまった自分がいる。
見る人によっては「渡辺淳之介」と言う人物が嫌に思う人もいるかも知れない。現代の人ならばこの人が行っていることは洗脳に近いという人もいるかも知れない。
だけれどもそれは彼が本気で彼女たちの本質を見極め、より良いアイドルグループを作り上げることに間違いないだろう。逆にここまで厳しく接していることこそが渡辺淳之介の本気を示してるのかも知れない。
この作品はオーディション受ける人たちのドキュメンタリーだと思うかも知れないが、ある意味渡辺淳之介の仕事の生き様を少し見ているような気がした。


Ⅲ.何が正解?

このオーディションでは渡辺淳之介が言ったことがすべてであり、それが出来なかったら問答無用に落とされる。
オーディション参加者たちはこれでもかと言うほど必死に食らいついていく。
それはもちろんアイドルになりたいから解散や脱退を避けたいからと言う思いからであろう。
参加者たちからすれば渡辺淳之介が言うことがすべて正論である。
でもこの映画を見ている側からすればこんなにも理不尽とも言える行為を正論と思えてしまうことがわからなかった。
別のアイドルのオーディションを受ければこんな思いをすることはないと思うが、なぜ参加者たちは「WACK」という事務所にこだわるのかを一度聞いてみたいものである。
BiSを解散する未来を選択した後にムロ・パナコ泣きながら言っていた「ここまで頑張ってきたことに一体なんの意味があるの?みんなはなんの意味があると思う?」

一体彼女たちにとって何が「正解」だったのだろう…

何を頑張っていいか分からず頑張る。そんな姿を見ているような気がした。




そんな屍の上に立ってBiSは第3期に生まれ変わったようです。
どんなに解散してもゾンビのように這い上がって「渡辺淳之介」がプロデュースしたBiSが天下をとる姿を一度は見てみたいと思いました。


以上、映画レポート#3でした!

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