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ミクロコスモス 112番

 バルトーク作曲のミクロコスモス「112番 ハンガリー民謡とその変奏 ( Variations on a Folk Tune )」の元歌は、「Szeretnék szántani……」という歌詞で始まるハンガリー民謡です。

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 この旋律は普段テケレーで演奏している民謡と、歌詞は同じですが旋律が異なります(歌詞も厳密にいうと民謡分布としての変容が含まれます)。

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 友人のピアニスト・持田正樹くんがこれを次のオンライン講義で扱うというので、資料になればとテケレー演奏の録音を準備しました。まず112番をミクロコスモス第4巻で確認、そしてバルトーク・オーダーというハンガリー科学アカデミーの民族音楽分類公式サイトで確認。するとそこには5種類以上のバリアントがあったので、なるべく多く網羅するべく追加して、検索で見つかったトランシルヴァニア Jobbágytelke で歌われる旋律も追加。こうして都合8つの変容を並べることになりました。

 歌ったほうがより差異を感じられるはずですが、テケレー演奏のみでアップしました。

 それぞれの清書版楽譜を参考資料になるよう、画像として使用しています。

 同じ歌に分類されるものがなぜ複数存在し、バリアントとして記録されているかというと、18世紀から19世紀にハンガリー全土が発展をするなかで、土地を移動する季節労働者(農民の季節労働としての出稼ぎも含む)などが偶然の伝達役となり、広まった民謡が各地で変容していったと考えられます。特にティサ川改修工事などの大規模土木事業や、鉄道工事などでは多くの労働力が広範囲に必要であったので、それに応じて広範囲に伝達し、伝達後はそれぞれの地で現地化していったと仮定出来る歌が存在します。この「 Szeretnék szántani... 」もそういった歌の一つでしょう。

 またこの歌は一説には19世紀前半にハンガリー国立劇場で演じられた「脱走兵」というタイトルのお芝居のなかで歌われた曲が、各地で歌われて民謡化したとも言われます。

(トップ写真はテケレーを演奏するバルトークです。出典:ハンガリー・バルトーク・アーカイブス)

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