敵の視察。
保健室登校から少し経った頃、私とは全く接点のない体育の先生が保健室へやってきた。どしんと椅子に座り保健室の先生と軽く会話を交わしたあと、私の方へ振り向き「君か」と言った。続けて「よう勇気持って学校来てくれたな。ゆっくりやりな」そう言うと保健室を出ていった。
自業自得でこうなった私に優しく言葉をかけてくれる先生や自宅まで様子を見に来てくれるクラスメイトに申し訳ない気持ちになった。私は変わらなきゃいけない、そう強く思った。
保健室登校に少し慣れてきた頃だった。辞める前に部活が一緒だった部員が休憩時間に二人来た。私に背を向けて座り、時折後ろにいる私に半分目を向けながらクスクス笑ったりヒソヒソ話したり、紙に何か書きながら会話をしている様子だった。しばらくそれが続くいたあと彼女たちは保健室から出ていった。
放課後も近くなり、保健室にいる生徒は私だけになった。参考書を閉じて、私を見てクスクス笑いながら話していた部員が座っていた保健の先生の前に座った。先生が「麦茶飲むけどいる?」と聞いてきたので頷くと「ちょっと待ってて」と言って給湯室へ席を立った。
私はテーブルに突っぱね背伸びをした。起き上がると私の手に消しゴムのカスがついてきた。足元にある小さなゴミ箱を手前に引いて消しゴムのカスを払っていると、ゴミ箱の中で開いていた紙を見つけた。
「ちょーデブったよね」「ブスがブタになった」
という文章が書かれていた。他にも書いてあったようだけれど開いて見えていたのはこの二つだった。さっき来た部員二人は、私が保健室登校なのをどこかで聞いて面白半分で様子を見に来たのだと直ぐに気付いた。
吐き気と共に心臓が口からドロリと出てくるんじゃないかと思うほど体が冷たくなった。保健の先生が私の前に置いてくれた麦茶を一口だけ飲んで、その日は下校した。
──── つづく ───
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