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【猫考】猫の吐きもどし対策について⑦奴隷との関係性3―蝉バラバラ事件

 リヴィングの床にばらばらになった蝉の肢体。透明な羽。千切れた頭部。節足。白い内臓。私はティッシュでこれらをまとめ、丸めて捨て、体液が付着した床をウエットティッシュで拭った。

 無言で怒ったように、というか本当に怒っていたので、猫はしおらしいような態度でそれを見ていた。

「〇〇〇」と猫の名を呼んだ。ニャーとか細い声でこたえる。床に伏して、私を不安そうに(実際は何とも思っていない)見上げた。

「どうして、こういうことをするのかな。蝉は、何かわるいことをしたのか。何にも罪が無い。それを、ただおもしろがって、嬲って、ころして。なぜなの」

 猫は目を逸らした。

「お腹がすいていたのか」

 ニャー、と猫は鳴いた。そうだということらしい。

「だったら全部食べれば? というか、餌ならちゃんと上げていますよね。これから餌でしょう。蝉なんて食べて、また吐くよ、あんたは」

 ニャー、ニャー。ESAという音を聞き分け、猫は興奮する。私はかりかりの餌を上げた。無言で。

 猫はそっこうで餌を平らげた。

 しばらくして、あにはからんや、ぐえっ、ぐえっという音がした。吐いているのである。だから言っただろう。と思って猫のところに行く。シンクの前の床で、猫はさっき食べたばかりの餌をすべて吐いている。吐瀉物には、蝉の羽、節足が混じっている。だから言っただろう。

 私は吐瀉物を片付ける。ティッシュに包んで丸めて捨て、濡れた床をウエットティッシュで拭く。猫はすっきりとした顔で私を見上げる。イライラする。かなしい。餌も、死んだ蝉も何もかもが無駄になった。

 私は猫を睨みつけるが、その目線はすぐにやわらいでしまう。猫は肩のあたりを舐めて、毛づくろいをしている。純粋悪は、あまりにも可愛らしい。私はぞっとする。

 

本稿つづく


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