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盲目の白い目で、おまえも見えているのかと尋ねられたはなし

電車に乗っていて
前の座席に赤と白の杖をもった
盲目のひとがすわっていたことがあった

濁った白い目であちこちを見るので
見えているんじゃないかと思って
ずっと見ていた
どうせこちらは見えていないのだろうと

「見えているのだろう」
と(心で)話しかけながら見ていた
見えてないくせに白い目がよく動く
杖は動かない

あまりにも不躾に見ていたので
さすがに向こうも気づいたらしく
ぎょろりと白い目が動いて、止まって
睨みつけてきた

「おまえも見えているのか」

とその目が言っていた
慌てて目をそらし
申し訳ないことをしたと思った
すみません

その当時にはスマホがまだなくて
だからスマホが悪い
前時代的な時代が悪い
やることがなければ人は
いらんことをするのだから
その日、文庫本をわすれてきたのだが
わすれたからといって読めなくなる
文庫本の特性が悪い

きょろきょろ
いろいろと言い訳をしたが
結局いま分かるのは
やっぱり自分が悪かった

見えない人にも見えるということを
まだ知らなったとはいえ
言い訳にはならない

申し訳ありませんでした
以後、気をつけます

その以後が、18年ぐらい経ったが
そのお詫びの、つぐないはまだ何もしていない
ままである

ままで、きょうも終わるのである

んー、コレデイイノカ


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