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【連載小説 短篇予定】美の骨頂⑰I can't stay alone......観想。深遠。文字だらけの地図

 いや、印度ではないか。その上の、なんとかスタンら。あるいはチベット。絹の道。東奔西走。うちらの祖先は血統的に落ち着くということが大の苦手なのでイノチガケで砂漠を横断し、また、先の全く見えない海路に一族郎党を引き連れて身投げをしました。

 ここではないどこか。

 搗く餅もない辺境に向けて。東へ。或いは西へ。北へ。南へ。

 止むを得ない理由で人を殺したひとたちは、実家に戻っても苦しむだけです。そのギャップに。変わってしまった自分の違いを、日日、知らされるだけの地獄。

 だから文明は拡散するのです。

 まだ誰も知らないユートピア。

 そんなものはあるといえばあるし、しかし物理的にもう限界集落なのかもしれません。が、ナカにはあります。まだ。

 観想。深遠。文字だらけの地図。

「えー、すげーカワイイじゃん」

 と言われてうちは我に返りました。

 うちはちやほやとされて育てられたので、こーゆーお世辞は聞き飽きていますがしかし「カワイイ」と言われるのは決して目減りしない性感帯のようでその度(旅)にうれしくなります。

「そう、かな」

 うちは面はゆいような、そんな顔をします。

「いやマジかわいいから。芸能人のひと?」

 このときうちについたホストはハイキンTVとゆう、ツラは微妙ですがやたらノリのよい二十八歳(自称)でした。

 凪子はJK(女子高生)のときに早起きして新聞配達をしていましたが、全然お金がもらえないので、もう少し早起きの時間をはやめて朝キャバのバイトをしていたそうです。その凪子によるとアサきゃばの客で最悪な人種がホストで、この人たちは夜々、女の欲望を満たしてヘトヘトになって喉がカラカラになって死にそうなってオアシス、朝からやってるキャバクラに来るのです。

「じゃーまずフェラして」

 などと言うそうです。若い身空でロクに立たないくせにと思いきやギンギンだそうです。それが悲しき宿命なのでしょう。

 ハイキンTVも、あきらかに無理をしていました。というか無理をしているのをウリにしているようなそんな状態でした。

 そんな状況のうちにあって、うちはただ。

「あれ、なんで?」

 ハイキンTV。

 三人寄らば千八百八十八円。

 うちらはどうなってしまうのでしょうか。

 沈むソープ。泡の世界。3P、もしくは44P。ダイヤモンド映像。

 ウーバー・イーツの運ぶ欲望種類は別のデリバリー。

 タンと凪子は滅茶苦茶にはっちゃけていました。まだ何もしらない少女たち。

 巌窟王。縄に引かれて新聞沙汰。消えてゆく社会的信用。

 それを防ぐのは、うちです。年長者。

 若い身空で深淵を、路上で学んで復習と復讐。

 福建省の先にある実家。帰らないと。オデュッセイア。ペネロペ。まだ妊娠はできない。両方。

 たすけて。おとう。おかあ。


 


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