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【読書記録】「天皇の料理番」杉森久英

初代宮内省主厨長秋山徳蔵の一生を描いた伝記小説。その内容は華々しいものと思うなかれ、なんと小説の6割弱が下積み時代である。

関東で暮らしている時分から主人公の発するチャキチャキの江戸弁であったり江戸っ子性分の気の短さだったりには、どこか憧れがあった。決して誉められたものではないだろうが、地下人の心地よさというか、粋が感じられて心地がいい。京都に来てから数年経つが、染まる言葉は大阪弁、雅風流は縁が遠く、いつも粗野な暮らしぶり。そんな自分に欠けているのが何なのか、きっと人との接触に違いないのだが、こうやって街に染まることができたらなあと憧れる一冊である。

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