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研修医たちへ 悩みの話

この記事は、全国のどこで研修を受けている若手医師にも言える内容だと思っていますが、主に私が日々関わっている、北の大地にあるやたら多様なバックグラウンドを持って集まってくる研修医たちに向けています。

研修医の悩みを聞く立場とは

私は医師5年目で診療を離れ、今は
・卒後医学教育のプログラム改訂と評価
・海外との若手医師教育連携
・臨床研究の倫理面における支援
・初期研修の日々の相談に乗る といった、
日常診療に追われる医師生活ではなかなか腰を据えて取り組むことのできない業務を日々行っています。つまり医学教育の隙間産業です。

そんな中で、自身が研修医の頃から、自身も含め年次の近い後輩たち、そして最近の研修医たちが概ね似たようなタイミングで似たような悩みを抱え乗り越えていくところを見ています。

1年目にとっては5ヶ月、2年目にとっては1年5ヶ月の医師生活を終えようとしている時期で、それぞれ似たようで個別性の高い相談を受けるので、今回はざっくりと私の一般的な回答を加えて紹介します。

全てに共通することとして、自分が信頼しているメンターあるいはロールモデルに直接話を聞いてもらってアドバイスを受けて、最終的には自分で結論を出すことになると言う話になります。
メンターやロールモデルの話は長くなるので別でします。

途中から敬語とタメ語が混ざるのは、ある程度距離が縮まったかな?と感じる研修医に対して話しているつもりになって書いたらこうなっちゃったんです。ご容赦。

悩み① 成長している気がしない

研修医1年目の5-7ヶ月目に言い始める方が多い印象でしたが、今年は早ければ2,3ヶ月目から聞いています。
一人ひとりが周りをよく見ていて、自らの経験や学びを言語化して共有できている証拠だと思うのですが、みんながそうではないし、聞く側は気づかぬうちに焦りを抱いてしまうことが多いです。

これに対して言えるのは一つで、能力や経験に関しては「過去の自分以外と比較する意味はない」ですね。
2年間のローテーションで概ねみんな頭が揃っていくとは言え、元の得意不得意や関心領域は多岐にわたるものです。周りと比較して得るものは浅い優越感か行き場のない劣等感だけかなと思います。
ただ、提出しなければならないレポートや必須講習の受講、上級医からの明らかな扱いの違いなど具体的な行動や環境に対する違いは意識して、ひとりで解決できないことは相談した方がいいと思います。この区別が難しいかもね。

悩み② 3年目からの動きを決められない

もっと言うと、「やりたいことは決まっているが、具体的な行き先などどう決めればいいか分からない」といった次の一手を求める相談から、
「可能性を幅広くし過ぎていて、選択肢が多くどうやったら決められるのかが分からない」というざっくりした相談まで、幅があります。

これはもう、一人ひとりと必要なだけ対話して、ライフヒストリーを書き出して価値観の整理から必要なこともあれば選択肢の利点・難点を列挙してもらえば自ずと答えが出ることもあります。
あまりに毎年相談が多いのでキャリアコンサルタントの資格を取ろうかとも思いましたが、数十時間+数万円かかるようなので諦めました。必要性を具体的に感じたことはありませんが、そこまで込み入った話が出るようならプロに頼んでもいいのかも知れない?

ともあれ、取り留めもないけど大事にしていることの話を信頼できるひとに聞いてもらったり、書き出してみたりすると、ただ漠然と悩んだり進路候補をネットで調べたりするのとは違う気付きがあるものです。

悩み③ 医者に向いてない気がする

多くは2年目の5-6月、早い子は1年目の後半から言い始める。当院だけ?
これは悩み①②から派生して起こるものだと思っていて、やはり本人も意識してこなかったところまで思考を掘り下げると「医者に向いてない」以外の表現方法が見つかることが多いと思います。

中には本当に医師以外のキャリアを真剣に検討していて、でも周りの反応が気になって言ってみる方もいることに注意が必要です。
周りは「まだ○ヶ月目なんだからそんなこと言うな」とか「えっ!向いてると思うけどね〜」とか「ここまでがんばってきたのにもったいない!」とか反射的に言いそうになるものですが、本気で悩んでいるのにそんなこと言われたら「もうこいつには相談しない」って思いますよね。

個人的には、こうして臨床を離れつつ病院には残り、更に言うと執筆やアート活動もしているので、生きて得意なことを楽しくできて、更に社会に貢献できたら言うことなくない?って思ってます。

番外編 興味のない/嫌なローテが必修

これまたどうしようもないけどしばしば挙がる悩みですね。
せいぜい1ヶ月なんだからがんばりなさい、で終わるような気もしますが、例えば当院は2年間のうち救急が最低4ヶ月は必修なので、救急外来にいることを何らかの理由で苦痛に感じる方は辛いだろうなと思います。

「分かって入ったんでしょ」と言われることもあるかも知れませんが、ぶっちゃけ医学部6年生時点での診療科に対する好みとか個々の病院に対する印象とか変わるよね。そんな「先を往く者」の目線で語られましても。ヘイトは募るばかり。

まずは「なぜ嫌なのか」を言語化してみて、その次に余裕がありそうであれば「それでもなぜ毎日がんばって来れているのか」「一日一個でも得るものはあるか(学びでなくてもよい)」まで思考を伸ばせると、なんとか4週間耐えるだけの心の栄養は得られるかも知れません。

あとはもう、大きな声では言えませんが同じ嗜好の研修医同士で愚痴を言い合ってもいいんじゃない。ただ飲み屋や病院のエレベーターなど公共の場は避けて、宅飲みするときは隣近所の迷惑にならないよう気をつけてください。

結語

悩みは声か文字に出して、誰かと共有してもいいかなと思ったら聞かせるか見せるかしてみましょう。
心の中で温めていた方がいいこともあるかも知れないけど、往々にして言語化すると少し「手に負えない感」が良くなるものです。

今年度も、もう下半期に入らんとしています。
皆様の研修(or指導)生活が実り多きものでありますように。

*ヘッダーの写真はマイクラのスティーブごっこをさせられそうになっているのを目力で抵抗している ろみたんです。

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