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タスマニアデビル!.........デ、デビル?

闇に包まれる森。タスマニア。約200年前。入植者達は森から聞こえる正体不明の不気味な叫び声を聞いていた。低く少々かすれた音は張り上げられ、強弱をつけながら伸びる。断末魔の叫びなのか、はたまた何かに興奮して発している叫びなのか。どちらにしてもこの世のものとは思えない。音がする方へ恐る恐る近づいてみる。森の中へ目を凝らす。暗闇で何かが動いている。この音は狼や野犬ではない。しかも一匹ではない。数匹うごめいている気がする。暗くてよく見えない。近づいてみるしかない。森の中へ足を踏み出したその時、一瞬の静寂。こちらを睨むいくつもの目、闇に浮かび上がる赤い角、鋭く白い牙。そして静寂を再び切り裂くあの叫び声。思わずのけぞり、後ずさる。

「悪魔だ。ここには悪魔がいる。」

闇デビル

そう、これがタスマニアデビルの名前の由来。彼らの発する音、そして興奮するとより赤く発色する彼らの耳が暗闇で悪魔の角のように見えたのだとか。もし動物園や保護施設で彼らが発する音を聴けば、その由来にきっと納得できるでしょう。彼らのチャームポイントの一つ、赤っぽい耳が悪魔の角のようって。ダークファンタジー感に勝手にしびれちゃう。いいなぁ、デビルちゃん。

そんなタスマニアデビルですが、実際はファンタジーの世界とは程遠い、悲しい現実に向き合っている動物なのです。2008年には絶滅危惧種に指定されています。原因は90年代に発見された、伝染性のガン(デビル顔面腫瘍性疾患)によって個体数が激減したことと、車に轢かれて死んでしまうことだそうです。
一つ目の大きな原因であるタスマニアデビル内で伝染するこの病気、90年代に広まり野生の個体数が14万匹から2万匹まで激減してしまったそうです。現在は、たくさんの保護活動と専門家達の努力が実り、個体数の減少は防げているそうです。元の数に戻るまでは、まだまだ多くの努力と時間を要しそうですが、希望を持って私たち個人が出来ることをしていきたいですね。

私たちが出来ること、それはふたつ目の原因を極力減らすことができるかもしれません。田舎では必須の車の運転にちょっとした心がけを。
なぜタスマニデビルが車に轢かれやすいかというと、それは彼らの習性に大きく関わってきます。タスマニアデビルは死んだ動物を食べる習性があります。その為、すでに車に轢かれて死んでしまったワラビーなどに惹きつけられて道路上にやってきてしまうそうです。しかも彼らが活動するのは主に夜間。運転席から発見できるのも遅れます。そして、彼らもまた轢かれてしまう。
タスマニアデビルが住む地域での夜の運転は避ける、これが私たちが出来ること。無理な時も正直あるでしょう、その時は速度を落として、十分気をつける。そうやって皆で自然に向き合うことも保護活動になると思います。(タスマニア州では夜間は制限速度が遅くなる道や、タスマニアデビルやワラビー等出没注意の標識が多くありますので、どこが危ない地域か知らなくても道路標識を意識して見ていれば大丈夫。)

とまあ、かわいいらしいだけじゃないタスマニデビルの現実ですが、実は少し変わった嬉しいニュースも。タスマニアデビルは約3000年前にオーストラリアの本土から絶滅したそうですが、2020年、保護活動の一環として26匹のデビルちゃん達が野生化を目指してニューサウスウェールズ州(シドニーがある州)の国立公園に放たれたそうです。この時、マーベル映画のソー役で有名なクリス・ヘムズワースが参加していたので、ニュースで見た方もいらっしゃるのではないでしょうか。まだ完全な野生環境ではないそうですが、いつかオーストラリア本土でも野生のタスマニアデビルを見かけることができるかもしれませんね。

いや〜デビルちゃん。見た目のかわいさについてもまだまだ語れますが、今回はこの辺で。もし動物園等でデビルちゃんを実際に見ることができれば、その愛嬌たっぷりの見た目やいたずらっぽい仕草にきっとあなたも魅了されるでしょう。そういった小悪魔的な要素がデビルと言われる由縁なのかもしれません。ハート。

かわゆす


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