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【エコペット®】1本の繊維に、地球環境への想いをこめて。~「循環し続ける未来」に向かって、帝人フロンティアが考えていること~

「SDGs」、「リサイクル」、「環境保護」今では当たり前に使われていますよね。社会課題に対する意識は高まっています。

1995年、リサイクルポリエステル繊維「エコペット®」は誕生しました。当時はまだまだ誰もがリサイクルについて関心が薄く、なかなか市場に、特にファッション業界には受け入れられる時代ではありませんでした。それから約27年間、私たち「せんい」の帝人フロンティアは地道に開発を続けてきました。やっと時代が追いついてきたのかな、といった思いも正直あります。

今回は、なぜ私たちが約27年もの間、ぐっと耐えながらリサイクル繊維を開発し続けてきたのか、また、どのようにエコペット®が進化してきたのか、誕生秘話から今に至るまでをお話しします。

◆「エコペット®」の誕生、1995年ってどんな時代?


この年に阪神淡路大震災が起こりました。当時神戸に住んでいた私は、町のあちこちにあふれかえる廃材やゴミを目の当たりにしてとにかく、早く撤去して処分して欲しいと切に願っていました。大多数の人が「ゴミは処分するしかないモノ」という認識で、「リサイクル」という言葉は浸透していませんでした。

当時のゴミの活用はまだ一部で、燃やすときの熱で温水プールに活用できると聞いただけで、「すごい!」と感動していたような時代でした。そのような時、「ゴミ」とされていたペットボトルからリサイクルされたポリエステル繊維「エコペット®」が誕生したのです。

◆最初の商品でもありロングセラーでもある「水切りゴミ袋」

エコペット®の魅力をより多くの人に知っていただくため、金星製紙株式会社様と共同で商品化を目指しました。金星製紙株式会社様の「身近なところから地球にやさしい商品づくりができないか」 という想いから生まれたのが水切りゴミ袋です。“ゴミを捨てる袋”だからこそ、最後まで環境に良い商品として使っていただけるように、とエコペット®から不織布シートを作り、ゴミのキャッチ率など細部にもこだわって作られました。

この製品は勿論今でも販売されています。エコペット®最初の商品でもあり一番長く愛用されている製品です。地球にやさしいモノづくりに共感いただいた多くのパートナーがいたからこそ、私たちのエコペット®も愛され続けてきました。

◆中わた、短繊維での展開拡大

初期のエコペット®は1本の繊維が短い繊維、いわゆる短繊維を中心に展開していました。そのため布団の中わた、クッション材、産業資材用途など表に出ない隠れた場所の材料として採用されることが多数でした。

その後、紡績糸(注1)の開発が進んで様々な色を表現できるようになり、少しずつ、衣料にも使われるようになってきました。

◆ケミカルリサイクルによる“繊維to繊維”


2000年という「ミレニアム・イヤー」に、ケミカルリサイクルという技術を用いてポリエステル繊維から、再びポリエステル繊維にリサイクルすることができるようになり、エコペット®素材の幅が広がりました。

従来のペットボトルからのリサイクルは、「マテリアルリサイクル」と言われる加工技術で、ペットボトルを砕いて、溶かして、チップ状にして、それを溶かして伸ばしてポリエステル繊維にリサイクルしていました。

一方、ケミカルリサイクルは名前の通り、化学的な処理をおこなう加工技術です。この技術を使えば、色がついているポリエステル繊維の服や生地も、化学分解を経ることで、色や不純物を取り除くことができ、石油からつくられるポリエステル繊維と同品質のリサイクルポリエステル繊維を作ることができるのです。短繊維だけでなく、細く長い糸「長繊維」も作れるようになったため、企業や博覧会の制服などに採用されはじめました。

また、色々な形状の繊維や細い繊維まで作られるようになったことから、スポーツ衣料にも採用され始めました。機能性を求められるスポーツ衣料では、さまざまな機能性をもったリサイクルポリエステル繊維の開発が加速しました。

◆「エコペット®」ブランドの再編


2020年、誕生から25年、エコペット®はブランドリニューアルをおこないました。ペットボトルからのリサイクルポリエステル繊維は「エコペット®」、ケミカルリサイクルを使ったリサイクルポリエステル繊維は「エコペット®プラス」として販売していたのですが、帝人フロンティアのリサイクルポリエステル繊維は「エコペット®」と統一しました。

そして、ロゴも一新し、シンボルマークも作りました。技術の向上により、元となる原料やリサイクル方法を区別する必要がなくなり、幅広い品ぞろえのなかから、ピッタリな素材をお選びいただきたいと思ったからです。

◆とことん「エコペット®」


“いま”のエコペット®は、短繊維もあれば長繊維もあります。また不織布、ペーパーなども展開しています。繊維の形状もさまざまで、マカロニのように穴が開いている中空繊維や、突起がでている繊維、四ツ山断面のものなどもあります。細さについても、数百nm(注2)レベルの太さの糸もリサイクル原料で作ることができるようになり、製品化されて実際に使われています。
技術が進化し、当社で作っているポリエステル素材、製品は、すべて環境にやさしい「エコペット®」で作ることができるようになりました。

1995年から当初は、一般的にはリサイクル繊維は、安い、品質はいまひとつ、というような評価でしたが、今では、この高機能な素材は、実はリサイクル原料で作られているのです、という説明に驚きと納得が入り混じるようになってきています。

これからも、私たちは、循環し続ける未来に向けて、「せんい」でできることを、「とことん」追求していきたいと思います。

【単語の意味】
(注1)紡績糸:短い繊維に撚りをかけて糸にしたもの
(注2)nm(ナノメートル):1ナノメートルは10億分の1メートル、100万分の1ミリのこと