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医療現場の業務効率化に貢献する、通過検知システムレコファインダー®とは


医療現場の業務改善を進めるうえで、長らく盲点だった「手術にまつわる消耗品の管理」。その効率化を目指し、ごみを捨てるという日常動作をソリューションに変えたプロジェクトの全容を紹介します。

 

レコファインダー®


手術材料の管理タスクから院内スタッフを解放するために

病院で行う手術に欠かせない注射器や縫合糸、ガーゼ、カテーテルといった膨大な消耗品。それら手術材料の使用記録や保険算定は、事後に手作業で行われていて、とても手間がかかる作業のひとつでした。その上、記録漏れや発注ミスが出ることもあり、院内の隠れたロスの原因にもなっていました。そんな現場の負担をなんとかしたいと、聖路加国際病院さんからお声がけいただき、今回のプロジェクトが始まりました。

聖路加国際病院さんが当社に声をかけてくださったのは、帝人株式会社が展示会に出展していたRFID(※1)システムのレコピック®をご覧になった2014年頃のことです。レコピック®は、帝人が開発したアンテナシートで、シート上の対象物に貼ったICタグ情報を読み取ることで、物の出入りを常時監視するシステムです。当時は、本や書類、ファイルの履歴管理を目的としていましたが、これをなんとか書類以外の物品にも活かすことができないか、と思考を巡らせていたところでした。この聖路加病院さんの声をきっかけに、帝人独自のセンシング技術で医療現場に貢献していこうと、新たな開発がスタートしました。

(※1)RFID:ICタグ情報を非接触で自動認識する技術

 外装パッケージを捨てるゴミ箱を、記録デバイスにするという新発想

プロジェクトチームが目をつけたのは、手術材料の使用後に必ず行われる「外装パッケージをゴミ箱に捨てる」という日常動作です。必ず捨てる必要があるので、ゴミ箱を記録デバイスにしてしまおうという発想がここから生まれました。
当初は、捨てられた外装パッケージが入ったゴミ箱の周囲にアンテナを設置して、ゴミ箱そのものを監視する仕組みができないかと考えていました。でもそれだと、手術室にある読み込まなくていい他のものまで検知してしまうことがわかったのです。そこで、発想を転換し、パッケージを捨てる投入口にアンテナシートを設置し、そこに接触する一瞬だけを読み取る仕組みを考えました。対象物をしっかりとアンテナシートに接触させるために、ゴミの投入口をすべり台のようにして、滑り落ちる時に外装パッケージに貼付されたICタグを読み取ってデジタルデータとして記録していく。そうすれば、箱に落ちた後のことはもう気にする必要はありません。

 現場に寄り添い、共によりよい形を目指す

試行錯誤を経て、機器の仕組みは固まっていったものの、正確に読み取るためには、捨てる時にひとつひとつ確実に投入口に接触させて滑らせるように入れていただく必要があります。医療の現場は忙しく、今まではポイポイと投げ入れてしまう方も多かったのです。試作版を導入いただく際には、当社のスタッフが病院現場に出向いて、看護師さんに使い方のレクチャーを丁寧に行いました。単に出来上がった製品を売るだけでなく、技術スタッフによる運用サポートも一緒に提供したのがこのレコファインダー®の特徴です。しっかり現場に寄り添い、正確に運用されて初めて業務効率化につながるからこそ、そこにも力を注ぎました。

 医療現場を支える「医療DX」

お声がけいただいてから約3年後の2017年にリリースした試作版を経て、ようやく2019年に製品版として完成したレコファインダー®ですが、当初は他の病院からの引き合いが思うようには集まりませんでした。しかし、担当者の地道な努力が実を結び、今では医療分野のセンシング機器の主力製品にまで成長しています。
コロナ禍によって、病院でも働き方改革が進みはじめ、自動化・デジタル化という新たな視点が生まれた点も、この成長を後押ししてくれました。
現在は、ラインアップも拡大し、院内のみならず、院外の物流につなげるフェーズに進み、在庫データを元に、必要な手術材料を自動発注する仕組みの提案なども行っています。

さらに、各種術式ごとに手術材料の使用状況を分析し、より最適な手術材料の組み合わせを医療機関に提案できないかと考え、新しい仕組み作りを開始しています。また、レコファインダー®を全国の病院に普及させることで、看護師さんの間接業務の手間を減らし、医療業務により専念できる環境を作り出したいとも思っています。
人の命を救う医療現場をセンシング技術で応援したいという思いで、病院関係者との対話を重ねてつくりあげたレコファインダー®。
「レコファインダー®を通じて、医療現場の負担を少しでも減らすことで、患者さんの治療環境の向上に貢献できるとしたら何よりの喜びです」と話すわが社の担当者は、新たなソリューションを創り出すために今日も開発を続けています。

 以上


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