エルデンリング日記(9) ラダーン(ぶっころし)祭り。
往けども往けども赤く腐れた風景が続く土地は空までもが赤く、海を挟んで遠くにみえるリムグレイブの緑と青が懐かしい。
そう思いながらマップの際、崖沿いに歩いていると同じくリムグレイブの方向をただ眺めている失地騎士を見付けた。
自分も似たようなことをしたばかりなのでわかる。望郷の念があるのだろう。まあ致命の一撃でひとまず倒したんだけど。
その傍には「大竜餐の教会」と銘打たれた教会があった。
このゲームを初めて間もなくのころ、針子のボックを助けるべく向かった浜辺の洞窟を越えたその先、小さな孤島にあった竜餐の教会の、そこでメッセージにて言及のあった「遥か東にある大竜餐の教会」がここなのだろうか。いずれにせよ酷い荒れようだ。
近くにはまた別の、立派な身なりをした失地騎士が闊歩していた。
竜を倒すことで力を得られる竜餐の儀。
使えるべき主と土地を失った騎士は、ただ純粋に力を拠り所にするのだろうか。……まあ私も特に根拠なく、ただ「お、遠距離から魔法ちくちくで倒せそう」という理由だけで腐りかけのドラゴンから心臓をもいできたばかりだけど。
目当ての城らしきものがみえてきた。
その大橋の前で、肥大化した獣に炎持て抗する兵隊さんたちを眺める。見ようによっては失われゆく故郷を守る健気な争いではあるはずだけど、どうにも……獣だろうと兵隊だろうと醜い生き意地を晒しているようにみえるのはこの土地のせいだろうか。
雄々しく響く男声コーラスのBGM。吊り下げられた武具がいかにもお祭りっぽくはあるが、それらを潜って進んだ広間には参加者が数人ぽつぽつと開催を待っており、そのなかにいた半獣のブライヴと、ついで鉄拳のアレキサンダーと再会する。
ああ。壺のひと。鉄拳のアレキサンダー。
そうなんだよな。実は気にしてたんだよ鉄拳のアレキサンダー。戦の祭りがあると聞き東に向かっている最中にであったのはもうずいぶん前のことだったけど。
祭りの会場として招き入れられたのは砂漠……というよりも砂丘だろうか。
腐りにやられて正気を失い、目につくものを砕き、残された死体を食い荒らしてまわる幽鬼となったラダーン王が、隔離されたようにある広大な砂浜。
無謬感の著しい風景だけど、赤く腐りきった大地を歩いてここまできた身としてはいっそ清浄な風景にさえみえる。
このボス戦はNPCに助勢を請えるサインがそこかしこに点在しており、圧倒的な破壊力を持つラダーンに集団戦で立ち向かえというコンセプトらしい。これらNPCの呼ぶサイン等はなるべく使わず遊ぶが通例だけども、今回は折角なのでと手当たり次第にサインをあさることとする。
味方にタゲが移ってるのを確認し遠距離からぺちぺちつぶてを撃つお仕事。
そうそう。
本来は魔法職ってこういう役目だよねこういうのと、これまでのボス戦に比べてかなり楽な勝ち方をさせてもらった。
「いやー痛快だった! それにマジで星が落ちるとはな! 楽しかったぜ! な!!」とこれまでの停滞が一気に(文字通り)吹き飛んで機嫌の良さそうなブライヴくんはともかく、そういやアレキサンダーもいたよなと探してみれば、砂浜の砂を掻いていた。
なにしてんのそれ。アレか? 高校球児が甲子園の砂を記念に持って帰る的なアレなん? と声を掛けてみれば。
「みていたぞ。貴公の勇壮な戦振りを。
……それに比べて、オレはダメ壺であった。ラダーンの一撃でヒビが入り、ずっと怯えていた……」
ダメ壺て。
いやいやそんな卑下すんなよ。後ろからだったんでよくみえたぜ、お前のあの見事なフライングボディプレス。
「……だが、幸いここには、戦士達の死体がたくさんある」
……は。
お前、何言ってんのそれ。
「それを集め、俺の中に詰め込めば、俺はまた戦士の壺になれる。
貴公、俺はもっと強くなるぞ」
……お前それ。その中身。
なんか。ああ、得心がいってしまった気がする。
どこかコミカルな外見に反し、倒すとド派手に中身をぶちまけて割れ砕ける様。
この「壺」の正体や生態は不明なまんまに、それでも、小黄金樹のたもとや激しい戦の跡地におびただしく転がる割れ壺と破片。
なんかそういう、人工的な、生物兵器みたいな存在……だったのか……?
まだそうと確定したわけではないだろうけど。
朗らかで、コミカルな、このゲームでの一服の癒やし的な存在だと思ってたのに……こないださ、鉄拳アレキサンダーを模したマグカップの受注販売(4000円)があったから、お前の正体はともかくここで買っておかないと後悔することになりそうーつって買ったばっかなんだよな……届いたとして、「それ」で飲み物飲むんか……?
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