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エルデンリング日記(7) 産まれ直さなかった彼と放浪の絵師。

 魔術教授セルブスの悪趣味な人形遊びはともかくとして、月の王女ラニの臣下として、ストーリーを進めなければならない。
 ……けどもそれはそれとして、城館を抜けた先の周辺地域を探索すると『絵画』に描かれた風景をみつけた。

『絵画』てのはコレクティブ要素の一つで、とある放浪の絵師が遺した風景画の、題材となった景色を探し当てられればボーナスアイテムが貰えるというもの。

 今回見付けたのは、立ち並ぶ墓石から湖を経てレアルカリアを臨める、見晴らしのいい景色だった。
 絵画にしたくなるのも肯ける美しい景色だけど……手に入ったアイテムと、絵画の題名とに設定を感じて、しばしぼんやりしてしまった。

 順に説明すると。
 発見によるボーナスアイテムは「幼年学徒の帽子とローブ」だった。
 墓石に背を預けるようにして死している遺体から得られる。ここに埋葬されたのだろうか。それのフレーバーテキストに曰く。

レアルカリアの長たる女王レナラ
その琥珀のタマゴにより産まれ直した
幼年の魔術学徒たちのローブ
しかし、その産まれ直しは完全ではなく
彼らはそれを、ずっと繰り返し
いつかそれに依存してしまう
夜眠り、朝目覚めるように
彼らは産まれ直し、すべてを忘れいく

 つまりこの帽子とローブは、あの、レナラの周りを這っていた、美しく透明な歌声をあげていた彼らに与えられたものである。
 性能的にはそんなみるところはなく、自キャラのコーディネートかもしくは悪趣味なコスプレが主な用途になると思う。

 そして、絵画のタイトルが『再誕』だった。
 風景画そのものがレアルカリアを主題としているようにみえるし、レナラの「産み直し」という所業を意味しているのは疑うべくもない。
 生まれ直し、それが故に不完全な生を繰り返す幼年学徒。
 だけど。
 この作品群は、放浪の絵師が道すがらであった人々の、その最後にみた景色を描いたものであるらしい。
 生まれた地であるレアルカリアを墓地にて眺めつつ死んだ、この帽子とローブとを遺した彼は「産まれ直し」の不毛な循環から脱したからこそ、ここで死しているのではないか。
 不完全な産まれ直しによる脆弱な身体で、しかし己の生を歩み、その最後に件の絵師と出会い身の上話を交わした。
 だからこそ『再誕』という題名で絵画が遺されたのだろう。
 それとも……或いは、産まれ直した彼こそが、自分自身の意志で産まれないしを選ばず、筆を執るを選んだ『放浪の絵師』当人であるのかもしれない。
 故は知れないけれど。

 等とちょっとぼんやりしつつ、以北は敵が強そうだしと切り上げて。
 永遠の都探索に舵を取る。

ただ、ここで探索を切り上げるとこのひとをここに置き去りにすることになるんだけど……


 実は、地下世界に入るための井戸にはもう見付けてある。「……エルデンリング世界で言うとこの井戸って、なんなん?」と思わされるくらい深くにまでいたるエレベーターを経た地下世界。
 異様に長く続く地下行きのエレベーターで、体感時間でもって「ずいぶん地下に潜った」と実感させておいてからの、見上げんばかりに広大な遺跡というロケーションを用意する、フロムのストーリーテリングには深く感心させられる。
 まあプレイヤーとしては相変わらずそこにいるザコを切り倒して切り倒して進むという血なまぐさい応答しかできないんだけど。

アーマードコアの1のころからずっとエレベーター好きよねフロム

 灰色に痩けた身体の、緩慢な動作をした人型の連中が徒党を組んで、異様な強靱度で迫ってくる。それを輝石のアークでなぎはらえば、ドロドロに溶けて地面に広がる。
 うーん。きもい。

ひとの形をしていた泥

 敵キャラもドロップ品と、その装備テキストでもって氏素性の知れるあたりエルデンリングを好きなポイントの一つだけども、彼らは「古い王朝の神官」であり「泥人」と呼ばれる者だそうだ。
 死ぬと同時に泥として崩れるほど永きを生きてきた……と解釈したけども、樹木ひいては根にも由来する世界観の多い今作だから、泥に還るのはいっそ宗教的には正しいのかもしれない。

「この先にアイテムはないぞ」というメッセージ(なかった)

 その先にあったのは、さらに広大な地下世界だ。
 星明かりのみえる地下。
 だけども……よくよくみると、星は瞬いておらず、そして夜空には何かシワのようなものがみえる。あれは洞穴の天井に何らかの方法で設えられた明かりなのだろうか?
 そこから少し進めば地図の断片を入手して、改めて示された地下世界の広さに唖然とする。

「宇宙は空にある」どころか地下にあった(別のフロムゲーだ)
……おいおい、アレフガルドじゃねえか(古いゲーオタ用語)。

 なんなのもうDLCエリアに入っちまったの?
 どんだけボリューミーなんだよエルデンリング世界よ。

 そこで登場するザコ敵も面白い。
 ウルド王朝の遺跡近辺で出会った「祖霊の民」に酷似した、青く透けた霊体姿のザコ。
 地図のフレーバーテキストに曰く、地下世界に広がるのは黄金樹以前に栄えていた文明の墓場であるらしい。
 祖霊の民は、黄金樹の信仰とは異にした、祖霊を奉る人々であるらしいけどその正体がこれか。

この遺骸がその「祖霊」だろうか。

 もう少し先に進めば……その姿を見付けて安堵した。
 女王ラニの臣下である半獣のブライヴくんだ。
 彼を知る者は口々に「あいつはバカだし探し物はヘタだけどいいやつなんだよ」「あの真っ直ぐさはこの世界を生きるには酷かもしれないので貴公のような相棒が必要かも」とかで、言下に「めんどうみてやってくれ」と依頼され続けてきた。


お礼といいつつ、ブライヴの面倒をみさせるきっかけにしたなかなかの手管をしてきたひと

 NPCにとって過酷なのがフロムゲーの世界である。目的のあるやつは大抵死ぬし、友人になれたやつは大体死ぬし、先にいった者を後から追えば死体になって目的地で待ってたりするのが常なんで、先走りなブライヴくんは少々ひやひやものである。
 永遠の都に関して何も進展を得られずイライラとしている様子なので、なおさらと言えよう。

まあひとまず無事で良かったよ

 女王ラニとは兄姉のように育ったらしく、彼女に何もしてやれないことへの苛立ちがあるのだろうか。「いざとなれば、思わせぶりなセルブスを噛み殺してでも聞きただしてやる」と物騒なことをいう。

 噛み殺されてしかるべき思惑があるようにも感じるのがあの魔術教授だけど……なんかさ、私、ちょっとセルブスに気に入られたみたいだし、私の方から聞いてみようか?

 と提案したら喜ばれた。セルブスと関係を深めるのはあまり好ましからぬ展開だけども、進行の都合には逆らえぬのがプレイヤーである。
 と、セルブスを訊ねれば「昔、学院を追われた塊の魔女に世話をしてやった恩で永遠の都に関して探らせている。あれから聞くといい」とたらい回しを受けた。フロムゲーでこういうお使いイベは珍しい気もする。

否定はできない

 塊の魔女ことセレンさんにそのことを聞きに行けば
「セルブスか……嫌な名前を思い出させる」と溜め息をつかれた。
 まあやっぱそんな感じスよね。
 そういやこのひと、学院で暴力沙汰を起こして追放を受けたみたいな話があったと思うけど。それがセルブスに対しての暴力だとするなら納得が先立つけどもどうなんだろね。

「星により運命をよんでいたカーリア王家は、将軍ラダーンが流星を砕いたことによりその運命も止まった。故に、ラダーンが死するとき星も動く」

 ファンタジックなのか力技なのかよくわからん説明を受けたけど、星に関する研究を続けるひとなのだから言うことに間違いはあるまい。
 将軍ラダーンとは、勇猛の名高いデミゴッドだったはずだ。
 ……なんか諸々符号のいく話な気がするな。
 王女ラニは神殺しの刃でもってデミゴッドに最初の死をもたらした。なぜそんな謀りをしたのかは知れないが、その刃は、王家の運命を再び動かすためにラダーンへ向けられるべきものだったのかもしらん。それでもって最初の死をもたらされたのは別のデミゴッドだったみたいだけど。
 あとラニは、怪しさ丸出しの主人公を臣下へ加える際に「それが私の運命なのであれば興味はある」と言っていた。
 星の破砕によって停滞した運命にこだわる姿が、あの言葉をいわせたのか。

 ともかく、なんかラダーンころせばいいらしいっスよと狼くんに伝えたら、急にウキウキと「そういや勇猛のラダーンをみんなで殴るラダーン祭りがあるらしいぜ! 行くか! ケイリッド!」とイキイキしはじめた。「剣と牙で行く手をひらく。こんなに分かりやすいことはない」と嬉しそうだ。
 ……ああ。ほんとに探し物ヘタなんだなこのひと。
 それはいいんだけども「行くんだろう? お前も」と誘われた。

 私としては正直。
 あんま興味ないというか。
 この美しい地下世界をもうちょい探索したいんだけども。
 逆に。
 ケイリッドの地には一度足を踏み入れたことがある。
 赤く腐った忌まわしい地で……爛れた亡者のゾンビの如く行進に、グロテスクに肥大化した野犬に猛禽類に、おぞましく繁茂するキノコ……正直、その探索はできるだけ後回しにしたいと思った記憶がある。

 でもなあ……フロム世界はNPCに厳しいから、この狼くんの行方はせめて見届けてやらなアカンのやろなあ……。
 と、次の行く手を決めた。
 なかなか急なハンドリングで物語は進む。

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