心の連続性<きっかけはいらないという話>
家族や友人から突然の報告や決断を打ち明けられる、という経験が誰しも一度はあるんじゃないかと思う。
「一体どうしちゃったの、そんな唐突に…」
なんて聞いた方は思うのだけど、当の本人の意志は固くて、ずっと温めていたんだという感じで議論は平行線、本来の決断の内容なんて頭に入ってこないわけです。
*本人だけがもっている連続した心の流れがある。
こういった状況に出くわしたとき、「なに?」という決断の内容より、「なんで?」「どうして?」という、そこに至った過程にばかり、目がいってしまっていたことに、あるとき気がついた。
できることなら途中経過を知りたいと思うのは人間の性で、それがプラスの決断ならまだしも、最近のまだ未来ある若者が下してしまったとてつもなく残念な決断だとしたら、その心の過程がなんだったのか、思いを巡らせずにはいられない。家族や友人であれば、なお必然のこと。
でも、後から冷静になって振り返って考えてみると、そもそも誰かの決断に至る過程を自分が察したり、考えること自体に、そもそも無理があったような気がするのです。
決断した本人には、そこに至るまでは色々な感情や思考、経緯の末に辿り着いているので、一応の一貫性なり整合性なりを携えていると思っている(はず。本当に急遽に思いついたことかもしれないけど)。
ただ、そこに至る心の流れを全て相手へ説明するの難しいし、そもそも心の過程をちゃんと言語化して伝えるということ自体、だいぶハードルの高い行為なわけで。
一方で、聞かされた側からしてみれば、過程が抜け落ちた、又は拙い説明のみで結論だけが提示されて、さらにその決断のインパクトが大きいほど余計に動揺してしまう。その結果、お互いにその状況を理解し難いものにしてしまってるんじゃないか。
つまり、そこに至るまでの心の動きは本人にしか分からないので、側からしたら唐突と思うのは仕方のないことだと思って、誰しもその人しか知り得ない「心の連続性」があるという前提に立つ、ということが大切だと思っています。
*きっかけを問うことにあまり意味はない。
よく、心境の変化の「きっかけ」を問うシーンを見ることがある。
芸能人の結婚会見では「結婚を意識したのはいつからですか?」とか、転職したと聞けば、「いつから考えていたの?」といった具合に。
でも、ある瞬間を境に人の心が急に90度に折り曲がる、なんてことはほとんどなくて、絶え間ない連続性のなかで、心の様相が変化しているに過ぎない。
西村佳哲さんがハウルのカルシファーに例えていたのは言い得て妙だけど、なにかの瞬間に心の中に火が灯り、それで行動という表面に出るまでの間、時にくすぶったり、時には激しく燃えたりして、一つの行動へ帰着していく、といったイメージなのだろうか。
『ハウルの動く城』という映画がありますね。暖炉に棲んでいるカルシファーという火の精が出てくる。ある時は熾火だったり、ワァッと燃え上っていたり。あの小さな熱源が城全体を動かしている。僕はわたしたちの中にも、一つずつカルシファーがいると思っているんです。めいめいを動かしている小さな火種が、一人ひとりの中にあって、僕の中にもあって。そこに近づくと温かくなるよね。
出典:『わたしのはたらき 自分の仕事を考える3日間』西村佳哲
ならば、きっかけを問うことにあまり意味はないのではないか、と思うのです。
最初に心に火を灯した出来事、いわゆる原体験を「きっかけ」と言えるかもしれないけど、その前後にも火を探したり、薪が並べたり、油が注がれ…という一連の過程があるはずで、その原体験一つをもって起点とは言い切れない気がします。
そして、原体験自体もその瞬間というよりも後から振り返ってわかるようなものな気もするので。
要するに、話の話題だったり興味本位で誰かに「きっかけ」を問うてみてもいいですが、それ自体にはあまり意味はないのかな、と思っています。
*なにかをはじめるのに大層な理由は必要ない。
今回Noteをはじめて書くにあたって、Noteをはじめた人の心境ってどんななんだろうとか、最初はやっぱり自己紹介とか決意表明ではじめるべき?とか、そんなことに思いを巡らせて、なかなか踏み出せない自分がいました。
新しいことに挑戦するとき、自分自身のなかにきっかけや理由を探してしまう習性が、多かれ少なかれ人間にはあって、自分もそんなしがらみに囚われやすい一人だと思う。
でも、誰かにきっかけを聞いてもあまり意味がないように、自分が何かをはじめたいとき、踏み出したいときに、自身の中にきっかけを探すことも、同じように無意味なのかもしれない。
心の中にきっかけなんて見つからなくてもいいし、きっと後から振り返ればそれらしい理由なんていくらでも見つかるので、自分のなかにカルシファーがいると思ったら、臆せず飛び込んでみればいいんですよね。
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ということで、改めてこれを見返したときに「やってよかった」と思えるよう、まずはコツコツ積み上げていきたいと思います。
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