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剣道の構え③肩甲骨の力を最大限に引き出す「脇の締め」とは!? 剣先の向きも修正する

剣道の構え、今回は、「脇の締め」についてです。「脇を締める」構造を理解すれば、打突の時も上腕の外旋を維持して打突することの大切さもわかる。これにより、コテ打ち、メン打ちの打突がスピードも強度も自然と強化されますし、肩の疲労も軽減されますので、是非読んでいただきたいです。

「肩肘を張る」とは、「肩をことさら高く上げ、肘を張って、気おうさま、威張るさま」。肩肘を張ると、僧帽筋の緊張→それと連結して顎が引かれます。

脇を締める(上腕を外旋させる)

剣道の基礎として「脇を締めなさい」という指導文句がある。「顎を引く」動作は僧帽筋を緊張させるが、「脇を締める」動作は、どちらかというと肩と肘をリラックスさせる動作であるため、そのまま受け入れて問題ない。ただし、「上腕」を外旋させるように脇を締めるようにする。上腕を内旋させると肘が屈曲方向に傾いて脇が開く、外旋はその逆。

初心者はここで終了してOKであるが実際は、かなり細かい問題となる。

本当は、上腕を外旋させてほしい。「脇を締める」は上腕を外旋させた結果に過ぎない

「脇を締める」の逆の動作は「脇が開いている」である。脇がぱっくり空くと肩と肘が張って上腕が内旋する。試しに、上腕を内に回してみると肘が屈曲方向に傾いて脇が開くし、上腕を外に回すと脇が締まる。何故、脇を締めなければならないかというとこの上腕の内旋した状態というのが、僧帽筋を緊張させ肩をつりあげる動作であるからだ。

一番わかりやすい例とすれば、パソコンのキーボード操作で、いったん掌を上に向けて上腕を外旋させ、腕の重みを感じながら操作してみよう。腕に重みを感じられない状態だと、逆に僧帽筋が緊張している状態になっている。

剣道でも脇を締めるようにして上腕を外旋させながら、打突をすると腕の重みを感じられます。肩の力みが消えて、なおかつ、肩甲帯(肩甲骨)の安定したサポートが得られるため打突も強くなります。

脇を締めると肩甲骨からサポートが得られる

肩甲骨の位置は各自で確認してください。肩甲骨は柔軟性があった方がよいとは言われますが、肩甲骨は肩関節の安定性を作るという働きがあるため、実際打突する際は、肩甲骨の上方回旋を抑えなければなりません。

さて、脇を締めると、上腕の外旋位をキープしやすくなります。すると、肩甲骨が吊り上がることがなく、肩甲骨の上方回旋も抑えられて、肩周辺の力みもなく、腕は安定した肩甲骨に押し出されるように、最短距離でラクに打突が出来ます。打突の際の安定性がアップし、強い打突が打てます。

逆に、脇の締め、つまり、上腕を外旋位をキープしていないと、肩甲骨が吊り上がって上方回旋も引き起こされます。そのため、肩に力みが入り、肩甲帯の安定したサポートが得られず打突が弱くなります。メン打ちはいいけど、コテ打ちが苦手な人は、コテ打ちの際、左脇が開いているかもしれません。

肩甲骨の上方回旋を抑えて、安定して腕が安定した肩甲骨に押し出されるようにするために上腕を外旋させる

剣道の構えは、脇を締めて腕の重みを感じれる状態で肩が下がる形になります。

上腕外旋の方法

脇を締めろと指導されたとして、脇を締めたけれども、上腕を内旋した状態で脇を締めると肩が前の方に出ることが確認されると思います。だから、一概に「脇を締めろ」というアドバイスだけでは効果が得られないわけです。自然形成の時と同じく、ワンポイントのアドバイスを集中的に意識してもかえってバランスが崩れる箇所なので解剖学に触れながら、結論を述べていきます。

腕を前に出して脇を締めている構えは上腕が内旋していることが分かります。では、上腕の外旋させる動きというのを解剖学でみてみましょう

上腕の外旋、つまり、肩関節の外旋

肩関節:棘下筋、小円筋→いづれも上腕筋が筋頭で、肩甲骨が筋尾

つまり、上腕の外旋にはここら辺の筋肉を収縮する意識が必要であり、肩甲骨の上方回旋を抑えなければなりませんので、肩甲骨の「下方回旋」動きというのが必要と考えると動作が一致します。

アプローチ1:肩甲骨を引くような意識で肩を外旋する。この時、肩に力を入れないようにし肩を下げる。

何度も言いますが、肩に力が入って肩が吊り上がると上腕が内旋します。これでは肩甲骨が「上方回旋」しすぎて、腕を押す力が上手に受けられませんね。肩を意識すると肩が緊張してしまう場合は、逆に胸を軽く張ってみましょう

アプローチ2:胸部を軽く張ってみる。肩を下におろす

肩甲骨の逆側にある筋肉である大胸筋を伸ばしてあげる=胸を張るという動作は、正しい背骨を形成する動作でもありますが、同時に肩を下におろす、肩の力を抜くサポートとしても意識してみましょう。ちなみに、胸を張りすぎて「引き肩」の位置に肩を持ってくるのがいい姿勢だと思っている人もいますが、これだと僧帽筋・背中がかえって緊張状態になります。ニュートラルの肩の位置、つまり、大胸筋・僧帽筋が力まず、肩が下に降りる位置というのを模索する必要があります。

さて、こうなると、前回やった剣道の握り方も振り返ります。

前腕の回内・回外動作の軸が「薬指」でした。ところが、回内動作は上腕の外旋動作とは、やや対なる動作です。ここで前回言ってなかったのですが、人差し指・親指で手首を回内すると上腕が「内」旋します。つまり、脇が開いてしまうので、人差し指・親指を軸に竹刀を握ってはいけません。

「胸を張る」と脇が開く

「胸を張る」ストレートはボクシングでは基本打ちとはされません。
これは、一つ肩が回って胸を張ってからパンチが出るので相手に動きがわかりやすいということです。パンチが出る前の「肩が回る動き」が相手に「これからパンチを打つよ」と教えてしまっているわけです。もう一つは、胸を張ってからパンチが出るためやや脇が開いてフックに近い軌道(対角線上のパンチの軌道になる)になり「ガードの隙間にパンチを入れにくくなる」ためです。このため、胸の張りを使ったストレートを打つ選手は「まっすぐなストレートを打てない」などとボクシング専門家から批判されます。
対して、胸を張らないパンチは、いきなり出てくる「ノーモーションパンチ」で胸を張らずに脇を締めて体感の開店と同時に腕を伸ばす打ち方とされています。また、古武術研究家の甲野善行氏は「身体全体を同時に動かすようにすると相手は次に来る動作を察知できない」として各関節を同時に動かすことを「無拍子打ち」「気配を消した打ち」などと呼んでいます。これは相手に攻撃の開始を知らせる予備動作を竹刀というボクシングの基本セオリーと同等の考えとなります。ただし、マイク・タイソンは胸を張るパンチをすることにより予備動作をつけて強力なパンチをはなっています。胸を張るパンチは威力重視でパワーファイターに多いです。空手の基本稽古で行う正拳突きも胸の針をしっかり使って大きく斜めに交差させながら打ちます。
剣道の場合は1本を取るのが非常に難しい武道ではありますし、等ブログでは脇を締める方針で打突を行うことになりますし、予備動作はみせたくありません。したがって、「胸は張らない」方針となります。
「胸を張らない」ストレートは大胸筋よりお三角筋・上腕三頭筋に刺激が入ります。対して、「胸を張る」ストレートは大胸筋に刺激が入り、フックは大胸筋・上腕二頭筋に刺激が入ります。

剣先も右斜めになる

構えは、右足を前に出しますが、脇を締めて上腕を外旋させた構えを貫こうとすると、まっすぐ構えにくいと思います。そこで、木鶏先生の竹刀の構え方をみてましょう。

左手の手の位置が中心より左にズレて、右手が中心です。剣先が相手の鳩尾ではなく、相手の心臓につくように、相手の左目に剣先を合わせた構えになります。こっから攻めて中心を取りに行くときは身体を動かさないで左手の薬指で竹刀を操作していきます。

更にこの構えの利点

・左手を無理に伸ばすことをしなくていいので、左上腕の外旋を保ち、前腕を固めすぎないため、竹刀操作が容易になる

右手を中心にいつも置いておくことにより、左手の操作で簡単に相手の竹刀を払うこともできるし、中心も制しやすくなる。

・「ツキ」が打てるようになる

実は、左手を中心に収めた状態の構えで突くと、左に可能性が高くなります。

・自分のコテを隠すことができ、かつ、相手のコテを裁きやすくなる

下からの攻めに対しても上から抑えることができて、下からのコテも抑えることができます。従来の左手を中心に置いた構えだと、手元が上がった瞬間を捉えられてしまいます

・メンを打つ動作が、相手の竹刀を外す動作になる

風呂の鏡の前で上腕が外旋した状態で構えられるか確認してみましょう

では、「脇を締める」ポイントまとめに入ります。

上腕外旋アプローチ1:肩甲骨を引くような意識で肩を外旋する。この時、肩に力を入れないようにし肩を下げる。

上腕外旋アプローチ2:胸部を軽く張ってみる。肩を下におろす

上腕を内旋させずに前腕を回内動作するために、人差し指・親指は使わない。薬指で竹刀を操作する

特に、剣道では左手の操作が重要ですから、打突の時でも上腕の外旋位をキープし、左脇を開かないことが、より強く安定した打突につながります。

野球の投球も上腕の外旋

上方回旋した肩甲骨の状態すると肩に力みが入り、右腕の振りの勢いが妨げられます。この状態でテイクバックから肩をしならせる動きをした場合肘関節を大きくねじってしまう。プロ野球選手が肘を怪我した場合は、ほぼこういった原理にある。上方回旋を抑えて上腕を回旋させながら投球すると肩関節は安定するようになっている。