身体に埋め込まれた4つの球体でヒトは動いている:「正中線」
回転運動の中心を意味する「軸」、物事の中心を表す言葉であるため、正中線の意味でも用いられます。日本剣道型二本目のテーマも「正中線」であり、剣道でも「真ん中の線を意識すること(正中線)」の意識づけという抽象的な概念は大事にしています。この意識づけに関しての操作は各人で調整するしかないのですが、どの辺を意識すれば、正中線の形成と身体の水平感覚を機能することができるのでしょうか?今回は「正中線」の意識について語っていきます
正中線・中央軸はここ
剣道で「 前に出よう!」とするとき身体の前方を意識すると身体が思うように前に出ないということはありません?身体の前後の意識づけとしては「背骨」あるいは「背骨の前」の部分に正中線がくるようにします。「背骨」は身体を操作する司令塔でもあり、身体の始動が早くなるだけでなく、よくいわれる「腰」から始動した身体というのは相手に「起こり」を感じさせるのが難しく不気味にみえるのです。
正中線は背骨手前、やや後ろっぽいところにある
さて、ここが中央軸ですが、このマガジンでは体軸では、中央軸から左右に二本の軸を意識上に形成していくやり方でいきます。
意識する正中線は、左右に二本
「正中線」といわれると、剣道では勿論、頭のてっぺんから両脚の真ん中にかけて串刺しにした軸を想定します。剣道では、「正中線」を外さないような剣道がいいと言われはします。しかし、身体の水平感覚・前後の移動の肝となっているのは、左右の球体である「股関節」であり、四足歩行動物から進化して二足歩行になっているものですから、肩関節と股関節ってヒトは水平の状態に位置するようになっています。「中心軸」意識で剣道をすると左右に身体が回ってしまうような感覚に陥るでしょう。このマガジンでは、左右に軸(二軸動作)で相手に向かって「中心」を取っていくような感じで攻める形となります。ただ、考え方の問題ですので、信用ならない場合は参照程度においてください。
この画像③の二本の軸になります
二軸動作の構造
球体には、中心をとおる軸が無限大に存在します。これが2個の球体の中心をとおる軸になると1本になります。この軸により2個の球体は同一方向へ回転します。身体には、左右2個ずつの球体が存在します。多軸性の関節である「肩関節」と「股関節(関節窩が特に深いため臼状関節と呼ぶ)」です。もちろん中央軸上のラインに肩関節と股関節が存在する
肩関節・股関節を同一方向の軸で回転運動をさせると「回旋運動(内旋・外旋)」になることに着目。左右の球関節による回旋運動は、身体の水平を保持させることで身体の傾きを抑え、左右への素早い重心移動を可能にします。肩関節・股関節を屈曲・伸展させるだけでなく回旋運動が加わることで、剣道の構えでいうと左足(支持脚側)ではなく右足(遊脚側)に重心を感じることができます。回旋を主とした動作の特徴は、ランニング→遊脚側に重心を感じ取ること。自転車→下に踏み込む足に重心を残す感覚ではなく、下から上がって上死点を通過する足の側に重心を感じ取ること。サッカーのキック→支持脚の上に体重を乗せるが、蹴り脚の側に重心を感じ取ることなどです。回旋を主とした動作では、遊脚側に重心を感じ取るというよりも、遊脚側に重心を感じるのが自然な動きです。
実際は、人の身体の前への推進力は左股関節の外旋力なので、二軸といっても左軸に身体が重心をよせるように構えることとなります
肩の水平感覚の重要性
左右の肩関節と股関節の球場関節を左右2つの軸で連ねた構造をしているところから、「二軸動作」と言われています。身体重心は、外旋しているほうに向かって動きやすくなります。剣道の場合は左股関節を外旋させ、右股関節はニュートラル状態にして身体を前に送り出します。左足は「出力」、右足は「方向」です。身体は「左股関節が外旋すると前に動き、右股関節が外旋すると後ろに動く」という原則があります。そして、左股関節の外旋をささえるために、肩関節も股関節との向きをすいへいのらいんに保つことで身体に連動性を与えることができます。
ところが、上体が傾いて肩関節が傾くと、2個の球体の中心をとおる軸は、この水平ラインの1本が通らなくなってしまいます。そうすると左股関節・左肩関節、右股関節・右肩関節の連動性がそれぞれ悪くなり、始動が遅くなります。
肩の位置の重要性
剣道の場合は左右に身体が傾けケースは少ないですが、問題は肩の位置が前側のポジションで構えられているケースが多いことです。これでは、肩関節が股関節より前に出てしまい、軸が通らなくなるので、連動性が得られません。肩のニュートラルなポジションの習得によって連動性による始動スピードを速くできるという水平感覚も覚えておいてください。