見出し画像

剣道の「左腰で打て!」の「腰」を解析する① 股関節の外旋を習得

「左足・左手・左腰」「腰で打て」

この記事の前半は「腰」について、人の身体が「腰」によって、前に出るのか、「腰」と言われる部分を解剖学の観点で解剖していく。後半は「左」について、人の身体が「左」によって前に出るのか、剣道の極意をつまびらかにする内容。2本立てです。

また、「解剖学」は、上達の「コツ」ではなくて、他の正しい姿勢の極意とか、ほかの重力操作など、人体に負担なく移動させる極意に本当に必要な動作とは何なのかを理解するための下準備だと思ってください。

※この記事は、専門用語が多いですが、その時は別のページか何かで解剖図で位置を確認しながら読んでください

まず注意:「腰」は動かせない

剣道で「椎間板ヘルニア」を起こしたりする人は、意識の高い剣士ではあり、腰周辺を動かしているので非常に体幹の安定した剣道をしています。「椎間板ヘルニア」を起こす人は結構、力量のある剣士の印象がありますが、厳密には「腰」は動かせません。それを無理に動かそうとすることによって腰椎がこすれてしまうんですよね。「腰」は、「正しい姿勢」を「維持」するための正しい背骨の「S字カーブ」を形成するだけの箇所と考えていただければ幸いです。「正しい姿勢」を形成してから→「股関節」と考えてください。腰と股関節の位置が分からない場合は解剖図を別のサイトでみて確認してきてください。

それで、この記事では前編:「股関節の構造」→後編:「左重心の構造」の2本立てで解説していきます。多分、読むだけで相当レベルあがります。

股関節の存在意義とは???

画像1

股関節は肩関節と同じく球関節なので多種類の運動が可能になっている。

人間の筋力量・質量は下肢が上肢の3倍以上であり、下肢のエネルギーを剣道の打突に伝えることができれば強い打突が可能となる。その中でも大腰筋が最も大きな筋力量をほこっているし、下半身のハムストリングスも筋力量が腕とは大違い。腕の筋肉のみを使うより、下半身の筋肉エネルギーを上半身に伝え腕に伝える方が効率が良い。その中でもっとも中心となるのが大腰筋とハムストリングスを動かす関節である「股関節の動作」である。

普段、走る時、足を挙げる、足を下す動作の動力源が、股関節の屈曲と股関節の伸展・外旋である。ノー知識でこんなこと言われても理解できないかもしれないが、脚を動かす原動力といったら「股関節」である。運動神経の悪い人は、「膝」や「太もも」を意識して足を上げたり下げたりするが、そもそも「膝」や「太もも」に人体を前に動かす動力源など存在しない足はあくまでも、人間の胴体が前に進んませる時に、それを補助するものとイメージしてくれればよい。

「股関節」を理解するためには、まずは股関節がどの位置にあるのか自分の身体で確認する作業を行ってほしい。大抵の人は股関節が大腿骨が、骨盤の真下にはまっていると思っている人が多いと思います。そのようにイメージすると股関節があらゆる方向に動く自由度の高い関節であることをイメージしにくいでしょう。支点として動かしてみる、それを意識するだけで足の運動神経が大きく変わっていく。右股関節は盲腸の部分の真ん中付近ちょっと奥になります。股関節は英語でhip jointといいます。したがって、股関節は、左右のお尻hipの中にある関節だと思ってください。股関節の位置を、太ももの付け根の前の部分とイメージする人は「股を締めなさい」といわれると、股関節は外旋して前の推進力を獲得します。

股関節は、もっと後ろ、お尻のエクボの中に埋まっていますので、その感覚を覚えていると、「股を締めなさい」といわれたとき、お尻の間に挟んだ板をお尻で締めるようにイメージすることになり、股関節が外旋します。股関節の内旋・外旋は、中心にチェックしながら踵をくるくる回してみれば、股関節の外旋・内旋が可能です。

人類は四足歩行動物から進化した生物であり、前足が肩関節、後ろ足が股関節と考えて頂ければ、股関節がどれだけ自由度が高くて重要な箇所か理解できることでしょう。

お尻のくぼみに埋まってる丸い球

画像2

骨盤は3つからできているのですが、そのうち両サイド2つの腸骨・恥骨・座骨からなる寛骨のおわん状のくぼみ(寛骨臼)に半球状の大腿骨頭がはまりこんでできた球関節に属する。球体であるが故に、多軸性です。

寛骨臼のくぼみに大体頭骨がはまり込んで、キュルキュル動いているのが股関節だ。

また、股関節は真下についておらず、図のように大転子・小転子が外側に飛び出した形でやや横から繋がっている。この構造によって股関節は伸展・屈曲だけではなく、外旋・内旋といった多軸動作が可能になり、かなり自由に動かすことが可能となっている。

股関節の位置を確認しよう

正常な股関節は、外に飛び出ておらず、骨頭の3分の2が包み込まれている状態で、奥に入っている点では肩関節と同じ構造であるが、股関節の方が肩関節より丸い球体が奥にはまっているので、股関節の関節可動域は肩関節よりも狭く一般的に位置が確認しずらい。したがって、一般的に股関節を意識して動かしているという感覚は掴みにくくなっている。これが股関節をわかりにくくしている要因であるが、これは安定性と体重支持において重要な役割を果たしているためである。身体の深い位置にあるため体表面からは触ることができない。

左右の球関節による回旋運動は、身体の水平を保持させることで身体の傾きを抑え、左右への素早い重心移動を可能にする。屈曲・伸展だけでなく回旋が加わることで、支持脚側ではなく、遊脚側に重心を感じることができる。

具体的な各パーツをみてみよう。大腿骨上端には、大と小の膨隆部に筋肉が付着している

・大転子...外側上方の大きな隆起で、中・小殿筋や梨状筋が筋尾

・小転子...内側下方の小さな隆起で、大腰筋と腸骨筋が筋尾

筋頭(起始)→筋肉の末端で支点となる箇所であり、筋尾(停止)→筋肉の末端で力点となる箇所、筋頭は固定したまま筋尾から筋肉は収縮して骨が動くようになっている。つまり、筋尾が作用点になるので、大転子・小転子が人にとって意識して動かせる箇所で股関節がそれに連動してキュルキュルと動く

寛骨臼・(股関節)・大体頭骨←大体骨脛←大転子・小転子【作用点】

大転子・小転子を力点として股関節を動かす形となる。また、大腿骨頭靭帯・腸骨大腿靭帯は人体においてもっとも強力な人体でちょっとやそっとじゃ壊れない最強の靭帯も誇っている。ここをちゃんと使ってくださいということなんです。

ちなみに、肩はこんな感じ

鎖骨←肩鎖関節←肩甲骨←(肩関節)←上腕頭骨【作用点】

肩の方が、【作用点】と関節の距離が近いことがわかる。

この記事は、図を貼ることができないので、「大転子・小転子」の箇所は図でチェックしてください。

股関節を動かすには大転子・小転子

↑この時点で読むのがしんどくなってきたら後編にすすんでください。↑

続いて股関節の動作説明を行います。これは、筋トレをする際にどこの動作どこを鍛えられるのかという参照になり、剣道の筋トレをする際の補助知識になります

股関節の動作説明

次に「股関節の動作説明」股関節は「屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋」という6つの動作がベースです。膝は「屈曲・伸展」のみ、胴体は脊椎移行部という部分のみ「屈曲・伸展・外旋・内旋」に動きます、腰は動かせませんので、「股関節」がどれだけ自由度が高いのか伝わって頂ければと思います。

股関節 動作

1股関節の屈曲

大腿部を前に持ち上げる動作

主要筋

大腰筋:腰椎(筋頭)と両下肢、つまり小転子(筋尾)をつなぐ筋であり、正しい姿勢を維持し、歩く際に脚を引き上げる動力源の筋力。断言してもいいくらい人体で最も重要な筋力で強力な力を発揮する。

この大腰筋がよわくなると、姿勢が崩れて歩くことができなくなる。その大腰筋の屈曲の運動にて、筋尾が骨の箇所でいうと「小転子」という大腿頭骨の内側になる。肩関節でいうところの上腕骨大結節に近い

腸骨筋:こちらも小転子が筋尾。こちらは僅かな外旋機能を持っていて、大切な姿勢維持の作用を担っている。罪で足を持ち上げたり股関節を固定した際は、上体を起こしたりする筋肉である。

補助筋:

大腿直筋:大腿四頭筋の四頭の一つで、腸骨からが筋頭で股関節にて大腿を屈曲させる働きがある。

ここで重要なポイントとしては、足を前に持ち上げて曲げる動作で、太ももは小さくても4つに分けられるうち、1つしか使わないということである。一般的なイメージとしては太ももで足を挙げるイメージを持っているが、実のところ大腿直筋しか使わない。大腿直筋を使うなら大腰筋の筋力量の方が圧倒的に大きいのでこちらは補助的に使う。

縫工筋:骨盤の上前腸骨棘の直下から下腿の脛骨粗面の外側まで走る筋力であり、股関節と膝関節の両方に働く。縫工筋、人体で最も長い筋肉。細長くビローンとしている。

股関節の屈曲に補助的に働く、大腿直筋と縫工筋は、膝関節の伸展と屈曲に関する主働筋でもあるが、二関節筋でもあるため、関節筋の屈曲にも補助的に働く。二関筋節とは、関節を二つ跨ぐという意味で、まぁ、その筋肉が収縮すれば両方同時に決まった動きをするようになっている構造である。

2股関節の伸展

大腿部を後方へ伸ばす動作。人体のエネルギー出力最強の動作

主要筋

大殿筋:殿筋群の中で最も大きく、最も表層にある。この筋の下層には中殿筋があり、さらにその下層には小殿筋がある。筋頭(起始)は浅部と深部に分けられる。浅部は腸骨稜、上後腸骨棘、仙骨および尾骨から起こり、深部は後臀筋線の後ろの腸骨翼、仙結節靭帯および中臀筋の筋膜である。筋尾は、上部は腸脛靭帯(ももの外側に流れる細長い靭帯の上部分につながる)で終わるが、下部は臀筋粗面(大転子の下にある細長い粗面)で終わる。

ここで理解しておいてほしいのは股関節の伸展は最大出力エネルギーをほこる股関節の屈曲に対抗する動作であり、足を下す、後ろに送る動作である。

それが足でもなんでもなくお尻であるというのは、意外ではないだろうか。

このお尻の筋肉を収縮するためには筋尾である大転子部分、股関節よりも外側の部分を意識して操作すれば、それと連動して股関節も伸展するということです。

人類が速く走るのに一番意識する箇所というのは、小転子とお尻である。

補助筋:

半腱様筋・半膜様筋:いわゆる内側のハムストリングス。これらの筋肉は股関節を伸展して、膝関節を屈曲する。

半腱様筋は座骨内部から始まり、足首上部の脛骨粗面の内側に筋尾とする。半膜様筋も座骨内部から始まって、足首上部の脛骨の内側が筋尾となる。

また半腱様筋・半膜様筋は股関節を内旋する働きも持つ

大腿二頭筋:外側のハムストリングスとも呼ばれ、短頭と長頭の2本の筋頭があり、膝関節を跨いで外側に付着する

3外転

前を向いた動作から大腿部を外側に開く。つまり、足を開く動作。

問題なのは、機能する筋肉であり、外転という動作はほとんどお尻を使う。これはどういうことかというと、筋尾が大転子で、ほぼ同じである伸展動作と外転動作は連動性が高いということだ。

主働筋

中殿筋:足を外に開く股関節の外転筋。大殿筋が伸展で中殿筋が外転、大殿筋よりも下の層にあるお尻の筋肉。歩行時には、片方の足を持ち上げた時に、軸足の中殿筋が緊張することで、他方の臀部が下がらないように働いている。この緊張がないと、他方の足を持ち上げて歩くこともままならない。この菌が弱いと歩行時にぐらついたら、左右にぶれることになる。筋尾も大転子

補助筋

小殿筋:中殿筋の更に下層にある。片足立ちした時に、軸足の小殿筋は、股関節を骨盤に固定して、反対側の足を持ち上げられるように働く。この筋が弱いと、片足立ちしても安定せず、転倒につながる。筋尾も大転子

大腿筋膜張筋:大腿上部の外側で大腿筋膜の中に包まれており、上前腸骨棘と大腿筋膜の内面が筋頭、大殿筋と同じ腸脛靭帯が筋尾。

股関節の内旋・外転、膝関節の外旋といった動きに関与する。姿勢的に骨盤が前傾していると、伸筋である中殿筋後部繊維を使いにくいため大腿筋膜張筋を使ったり股関節内旋位で歩いているとバランスを取るために、大腿筋膜張筋を使って踏ん張ろうとする傾向になる。

大殿筋(上部線維):上申が外側にズレた時にその力を抑えたり、加田らの横ブレを防ぐなどの補助的に働く。

4内転

開いた大腿部を内側に閉じる動作

主働筋

大内転筋:内転筋肉群の一つで内転筋肉群で最も強力。坐骨から扇状に広がり大腿骨の内側上部3分の1が筋尾。つまり、この筋肉を動かすには大腿骨内側上部3分の1辺りを意識しろということである。

短内転筋・長内転筋・恥骨筋:大内転筋と働きは似ている。長内転筋は、股関節の前面を通るため、内転のほかに股関節の屈曲をも補助している。

薄筋:内転筋群において唯一の2関節筋で、股関節を内転すると共に下腿を内旋および屈曲する。この筋肉は、大腿の最内側に位置しており、筋の名前の如く薄く見える筋肉である。

5外旋 ※最重要

股関節の外旋は、この記事での最重要動作であり、剣道の根幹を支える動きである。

左股関節の外旋によって左の骨盤を押し出す形となります。股関節はお尻の方にあり、その股関節を外旋させることによってお尻の穴がきゅっと締まり、外旋した方向に沿って、お尻の外側から中央に力の方向が集まり、そして、中央から、前に推進させるイメージで身体というのは前に進みます。また、使う筋肉は「伸展」動作と連動性があるため、「外旋」≒「伸展」の力も使われることになります。

深層外旋六筋:梨状筋、上双子筋、下双子筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、大腿方形筋をまとめた筋肉。そして、これらの筋尾は全て大転子、小転子付近であり股関節屈曲・伸展させようとするときと同じ箇所なのである。さらに屈曲の際は、腸骨筋が少し外旋するように作用しているため、ヒトは外旋するようにできている。ここに剣道の身体合理性の非合理を感じている

股関節を外旋すると、股関節の屈曲に使う縫工筋、股関節の伸展に使う大腿二頭筋も連動する

縫工筋:人体で最も長い筋肉。股関節の屈曲、膝関節の屈曲、内旋といった動作に関与

大腿二頭筋:外側のハムストリングス、股関節の伸展に働く。筋尾は膝の外側である

6内旋

股関節の外転に働く、中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋と使う筋肉が被り、股関節の伸展に関する半腱様筋・半膜様筋(内側ハムストリングス)にも働いている。股関節の場合、内旋と外転が使う筋肉が類似するというちょっとややこしい動作である

小殿筋、大腿筋膜張筋、中殿筋、半腱様筋、半膜様筋

股関節の外旋方向を正しくチェック

股関節の外旋1

「あれ?外旋なのになぜ矢印は内側に向かっているんだろう…?外旋って「外」ってつくぐらいだから、外に向かう運動じゃないの?」

と思われるかもしれません。ここで今一度「外旋・内旋」の意味をチェックします。

外旋…大腿軸を中心として外方へ回旋する動き
内旋…大腿軸を中心として内方へ回旋する動き

ということは、軸は大腿で関節運動は股関節ということになります。

ただ、股関節の動きを直接みるのは結構難しいです。それで、関節可動域を測定する際には、下腿(膝から下)の動きを見て、股関節の動きを評価します。

股関節 動作2

下腿と同じように股関節が動くと考えると、「股関節の外旋」動作は、股関節という「球」が下から時計回りに、回っていき身体の中央に締まっていく動作だということが理解できます。

なので、肛門が締まる動作が基本的には外旋であり、肛門が締まる、つまり、お尻が締まるということは連動して股関節が伸展することにもなります。

逆に、内旋と言うのは、太ももは内股になりますが、それとは対極して肛門が緩みます。

股関節の「外旋」が何故重要なのか

続いては、日本の武道の話になりますが「合気道」ではとくに、身体の「外旋」と「内旋」における身体の変化を重要視しています。

結論を述べると、股関節を外旋させたら身体が前に進む力が働き、股関節が内旋すると身体が後ろに進む力が働きます。

一番わかりやすい例としては、スキーの傾斜を降りる時、初心者はブレーキをかける際に、ハノ字になって勢いを止めようとすることでしょう。このように、「内股」の動作と言うのは前の推進力を止める働きがあります

続いて、こちらの動画をごらんください。股関節を内旋させた状態と外旋させた状態での身体の機能を紹介した動画です。

股関節は外旋することで前に推進する

股関節の外旋が重要ということは、股関節の外旋と連動する筋肉と部位の動かし方。または、股関節の内旋と連動する筋肉と部位の動かし方を知ることができれば「この動きをしたら身体の動きが止まるな」と理解することができるはずです。

股関節の筋肉には「固定」の働きもある

股関節に関わる筋肉は23個で、一つの関節に関わる筋肉の数ではかなり多いです。関節運動の自由度が高い関節なのですが、股関節の筋肉には関節を動かす「運動」と関節を一定の姿勢に保持する「固定」という2種類の働きがあります。

ここで、筋肉の仕組みをおさらいします。筋肉をゴムのようなものとイメージしていただくと、そのゴムの端と端は多くの場合、どこかの骨と骨に付着しています。この付着している部分を「起始」「停止」と呼び、大抵の場合は、起始が頭に近い位置にあり、停止は頭か遠い位置にあります。筋肉が働くということは、停止を起始に近づけるように筋肉が収縮することです。筋肉が収縮すると骨と骨が近づいて、関節が運動を起こすわけです。股関節でいう運動は、屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋方向に動かすことを言います。

「固定」の運動は、筋肉の収縮は起きるけれども、関節の運動は起こりません。たとえば、両脚で立っている状態から片足を開いていくと、開いていく側の中殿筋(お尻の筋肉)は外転のために働きますが、もう一方の足の中殿筋は骨盤を固定するために働きます。股関節においては一つの筋肉が運動だけを行っていることは少なく、運動と固定を自動的に切り替えながら活躍しています。

この「固定」という動きは、このマガジンでも紹介しますが、剣道のすり足「膝の抜き」という技術の原理になります。

股関節・骨盤・腰椎の連動性

人の身体は一つの関節運動で成り立っているのではなく、複数の関節運動の連なりによって成り立っています。股関節も同様に骨盤と腰椎に運動連鎖を起こします。仰向けた状態で股関節を屈曲すると、最初は股関節だけが動きますが、途中から骨盤の後傾が加わり、さらに、股関節を屈曲させると、腰椎が後湾します。大腿骨から骨盤へ、骨盤から腰椎へ、運動が連鎖していくわけです。大腿骨から骨盤への運動連鎖は股関節を介して行われ、骨盤から腰椎への運動連鎖は仙腸関節を介して行われます。

股関節の屈曲運動は→骨盤の後傾→腰椎の後湾と連鎖する
股関節の伸展運動は→骨盤の前傾→腰椎の前腕と連鎖する

股関節とハムストリングス

股関節は膝関節と二関関節の関係であり、股関節が動けばそれと連動して膝関節も動くようになっています。先程の仰向けの状態での股関節の屈曲運動の連鎖はこちらでした。

股関節の屈曲運動は→骨盤の後傾→腰椎の後湾と連鎖する

この時、膝関節が屈曲している状態と、伸展している状態ではどちらが股関節を屈曲しやすいでしょうか。この時に、股関節と膝関節まで繋がっている筋肉であるハムストリングスに注目します。ハムストリングスは坐骨結節から膝関節遠位まで伸びている筋肉で、ハムストリングスの起始と停止が近づいている状態と、起始と停止が引き離されている状態では股関節の屈曲可動域は大きく変わっていきます。具体的には、膝関節が屈曲していれば、ハムストリングスは緩んでいて、膝関節が伸展していれば張っています。したがって、仰向けで股関節を屈曲させた場合、膝関節が屈曲している時の方が、膝関節が伸展しているよりも、ハムストリングスの影響を受けにくいため股関節屈曲可動域は大きくなります。

ハムストリングスは、大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋で構成される大腿後面の筋肉群。ハムストリングスは、大腿二頭筋短頭を除いて、膝関節と股関節を跨ぐ二関節筋です。膝関節の屈曲と股関節の伸展に作用します。

ハムストリングスは運動機能として2つに分かれる【話が難しい】

ハムストリングスは二関節筋ですが、二関節筋は同時に両方の作用を十分に行うことができません。膝関節の屈曲か股関節の伸展のどちらかに力が優先されることになります。ハムストリングスで、股関節を伸展させた場合、大腿二頭筋長頭と半腱様筋・半膜様筋の作用を比較すると、大腿二頭筋長頭は外旋、半腱様筋・半膜様筋は内旋に作用します。ハムストリングスで膝関節を屈曲させた場合、大腿二頭筋短頭で屈曲させると股関節は内旋に、半腱様筋・半膜様筋で屈曲させると股関節は外旋に位置します。大腿二頭筋短頭で膝関節を屈曲させた場合、半腱様筋・半膜様筋は股関節の伸展が優先されるために股関節は自然と内旋させながら進展へ機能します。ハムストリングスは1つの筋肉として捉えがちですが、運動機能として2つに分かれることを知っておくと、運動時の意識のさせ方の参考になります。


歩行原則

ここで、ヒトの「歩行原則」を語っていきます。

・ヒトは、左骨盤を押し出すことによって、右足が自然と出る

・ヒトは、右骨盤を押し出すことによって、左足が自然と出る

左骨盤を前に押し出すのは、お尻のくぼみにある左股関節を外旋させることによって、中央部分から押し出すように右足を前に出すことが人類歩行の原則です。これを剣道のすり足に応用すると右足を前に出すためには左骨盤の後ろのほうから前に押し出すイメージで出すということになります。

画像引用: