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天才の極意:誰も教えてくれない内部の姿勢形成論。指導を受けたり、昇段するごとに動きが下手になる「大人剣道」に対する警告

この記事は、私の剣道基礎マガジン

こちらを読む前に一回「警告」として、必ず読んでいただきたいです。

三流は、自分のやっている通りに指導して、できなかったら叱る

天才は、カラダの動かし方は人それぞれだから、打ち方も感覚も人それぞれ自分でその感覚を習得してカラダで身につける

この「差」というのは、いくら剣道の書籍を読んだところで一生埋まりません。剣道をやる以前の「身体の動かし方」、そして、身体の「内部感覚」、ここを知らないと、7段以上は厳しいのかなと思います。

前回やった、この「エネルギーの通り道」をよくするための方法を今回はもう少し具体的に解説していきます。

筋肉の働き

「筋トレ至上主義」で、やみくもに筋肉の強度をあげたり、肥大させたりして筋肉で身体を動かそうと考えて過剰に筋肉を緊張させたり、

はたまた、いい姿勢や動きのためには、身体を意識することが大切なのですが、身体を意識しようとすると過剰に緊張してしまうことが現代人の常に抱える問題なのですが、ここで過剰に緊張しているのは「筋肉」なわけです。
筋肉の強さが何故必要かといいますと、一つは骨のつなぎ目である関節の所が、負荷に対して緩んでしまわぬように、骨の位置調整をする必要があり、大きな負荷に耐える際には、やはりそれなりの筋肉の強さが必要です。もう一つは、投げたり走ったりといった速いスピードで動く際に、やはり、骨を素早く動かす必要がありそれも筋肉の力で行います。
もう少し掘り下げると、速く動く際には遠心性の力が強く働く分だけ、求心性の力も強く働く必要があります(ボールを思い切り投げると、腕に引っ張られ方がちぎれそうになりますが、それに耐える引き込む筋力が必要といったものです)
関節は柔らかく動くには重要なのですが、力の受け渡しという点では弱点となります。一般的には筋肉を骨の位置調整力としてではなく、骨の代わりをになってしまうのです。本来柔らかい筋肉が骨のように硬くなるとする感じです。だからこそ、その現象を「力み」と呼び、それに対して、力を抜け、リラックスしろとなるわけです。けれど、その力を抜くと、関節が緩んでしまい負荷に耐えられないと「身体」が思っているので、意思の力では力みの解消は難しいのです。つまり、関節で力を逃さない骨の位置調整力と力みは反比例の関係にあるわけです。別の言い方をすると、関節で力を逃さない骨の位置調整力と脱力・リラックスは正比例の関係ということになります。

ところで、筋肉、関節には2つの運動をすることができます

「人体というのは、骨格を関節で繋ぎ(「関節で支えている」)、骨に付着した筋肉(腱)で骨格を動かす

「人体というのは、骨格を関節で繋ぎ(「関節で支えている」)、骨に付着した筋肉(腱)で骨格を固定する

「動かす」と「固定する」という2つの働きを、私たちは分けて機能させていることができているでしょうか。おそらく、ほとんどの方ができておらず、ほとんどの方は「動かす」と「固定する」を同時に働かせて身体を動かしていると思います。

一方の筋肉でガチガチに固めて固定した状態のモノを、もう一方の筋肉で無理くり動かす。動かす筋肉と固定する筋肉が反発し合った状態で身体を動かしているわけです。

筋肉が骨に巻き付いてガチガチになったものを、また、別の筋肉がそれごと動かしている感じです。

物体は固い物よりも柔らかい物を変形させる方が、簡単だと思います。身体を操作するために、動かす必要のない身体のパーツは固定させないように動かすことができれば、大分に楽に身体を動かせるわけです。

わかりやすくイメージすると身体全体を力の入れ加減を色の濃淡で捉えるようにしてみましょう。身体感覚・意識が変わってくると思います。筋力頼みの歩とは全身同じ濃さになっています。それを、場所・部位、表面か奥かといった深さ、身体の中に濃淡の差を作っていこうということです。この力の入れ加減を調整するためには、脳からの指令が的確でないといけません。

剣道で全力を出すときに身体全体が濃くなりがちですが、真に最大限の力を出すには、薄い部分を作っていく必要があるわけです。

筋肉は脳神経システムにより制御されているので、過剰な緊張はこの脳の神経システムがうまく働いていないことが原因だと考えられます。例えるなら、エアコン、室温を感知する「センサー」からの「入力」と部屋に風を送る「コントローラー」への「出力」のバランスがとれて部屋を快適にするわけですが、人の身体に例えるなら、この「センサー」部分がぶっ壊れているイメージです。現代人は「筋トレ至上主義」あるいは「長時間の稽古」だったり、ストレス社会で常に筋肉を緊張させているわけです。筋肉や疲労の充実感を求めてしまうのでどうしてもコントロール過剰になるわけです。剣道を長く続けていて、姿勢にも気を付けているのに「うまくいかない」と感じている人はこの「センサーとコントローラーのバランス」が崩れているわけです。

人体は、筋肉の伸び縮身を感知する感覚器官→脳神経システム→筋肉

という流れなのですが、緊張に気づいていても反応できずそのまま固まっていたり、あるいは緊張を解こうとする努力が緊張を上乗せしてさらに固まってしまったりすることがあります。その結果、ほとんどの剣道家は必要のない状況で必要のない部分の筋肉を緊張させて身体を固めてしまっているわけです。

学校教育や社会生活の弊害

長時間じっと座らされている学校教育や社会生活によって私たちの身体はすっかり固くなってしまい、ホールディングが習慣化してしまいました。「安定を保つためには身体は動いてはいけない」という思い込みによって、身体の癖が生まれ、その癖が部分部分に緊張を作ってしまうわけです。

解決策としては、「解剖学的に正しい動きを学ぶ」必要があるわけですが、感覚で伝えるのも難しいですし、身体を意識することで緊張を上乗せしてしまうので、このホールディングを解くのは大変な作業です。

動きを「許して」あげる

ホールディングを解いていく作業なのですが、我々の身体はそれが当たり前の形を作っているので、緊張している状態にすら気づいていない可能性が高いので、今、この文章を読んでいるあなたが「自分の身体は緊張している」という戒めが必要になります。私の感覚ですが、イチローのレベルでなければこの作業は行う必要があります。普段の自分の身体をよく観察して、緊張しているであろう部分を触ってみましょう。「そこが自由になるとしたら、身体はどんなふうに動きたいのか?」を問いかけて、身体の反応を待ちます。緊張がある場合、あるいは、全く別の場所が動き出すかもしれないが、身体が動きたいように動くのをただ観察していきます。そうすると、その部分に大きな解放感が得られると思います。この解放感が得られれば、いかに普段の身体が緊張していたか実感するわけです。私たちの身体はいままで、身体が自由に反応することに「制御をかけていた」ことがわかります。長年の長時間の学校・社会による弊害を「許し」ていきましょう。

「身体を許す」

また、先ほどいったように身体の力みを「色の濃淡」でイメージすることを推奨します。力を入れる抜くで考えると意識が部分的になってしまい、かえって緊張してしまいます。身体からの声を受け取りながら動くには脳の受信力を使わなければなりません。

基本的には、「顔」の色の濃淡は「薄」くなります。

昇段審査による姿勢形成による弊害

剣道(特に大人剣道)でも、姿勢を真っすぐにしようと心がけると身体に過剰な緊張を引き起こし、全身に過剰な筋肉の緊張がかかり身体が動きにくくなり、かつ、疲労もすぐにたまる状態になっていまいます。本来なら、必要最小限の部分だけの筋肉を緊張させれば、動く身体が、安定した姿勢を作るために身体がガチガチになってくることがうかがえるでしょう。本来、身体を合理的により自然に動かすために姿勢を形成するためのものが、筋肉で骨を縛り上げてしまって、関節が動きずらくなって身体が動かなくなるという結果が生まれてしまうのです。

私のブログでは、構えに滅茶苦茶こだわっていますが、同時に解剖学的な解説をを入れているのは、余計な力みを生まないためでございます。

形にこだわりすぎて、身体が硬くなる

解剖学的な動きを学んで力みを外す

それでは、実際の身体の使い方を紹介していきます。

99%の人は「ストレッチ」を間違っている

ストレッチは筋肉を引っ張って伸ばすものではありません。筋肉は緊張すればするほど収縮して固まるので、この状態でのストレッチはアクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものとなります。このようなストレッチを続けていると、逆に怪我をする恐れがあります。ストレッチというのは「関節を動かしながら力を抜く」作業になります。

例えば、首を左右や前後に動かしてみたり、ゆっくり一周させたりしてください。大きく動かす必要はないので、なるべく筋肉が緊張しないように丁寧に動かします。同様に、手首や肘、膝や足首、背骨、どの部分の関節でもいいので動かしてみます。この時、カクカクっとした動きにならず滑らかに動かすことができるかどうかがポイントです。もし、動きがカクカクっとしている場合は、筋肉の緊張が強い状態です。イメージとしては、坂道で自転車のブレーキをかけながら降りている時に、ブレーキを握ったり離したりしながら降りていると、カクカクと自転車が小刻みにストップしながら動くと思います。同様に、身体に余計なブレーキ(緊張)がかかっているわけです。そのため、まずは、可動域の広さよりも、関節が滑らかに動けるようにしていくことが先決です。関節を滑らかに動かすためには、骨と骨がぶつからないように、関節の隙間を十分に作ってあげます。

前屈の時に動かす主な関節は股関節です。身体が硬くて前屈できないという人の多くは、背中や腰に力を入れてしまっています。また、太ももの裏側やふくらはぎが痛いという人も、この部分に力が入ってしまっています。そいういう場合は、最初の内は膝を曲げておいた方がやりやすいです。前屈をする時、股関節をゆっくり動かすことで、上半身と下半身が下りたたまるように近づいていきます。

関節を動かす以上、それを動かすための筋肉にはある程度力が入りますが、あくまでも関節を動かすという感覚で行います。関節の可動域が広くなくても、力を抜いたまま関節がスムーズに動かせれば、身体は柔らかいといえます。腰が曲がっているような人でも、自分で動かせる範囲の関節がスムーズに動かせれば、全く問題ありません。

なので、実際のところ、姿勢が悪くみえる人でも身体が柔らかい人はいるし、逆に、姿勢がよくみえても関節をスムーズに動かせない人は、身体が硬いといえます。

骨盤前傾の反り腰とか後傾で腰が曲がっているのは姿勢としてよくないというのも、一面としては間違っておりませんが、それが問題になるのは腰を緊張させて関節の可動域を失っているからです。反り腰だろうと腰が曲がっていようと、関節が自由に動かせれば、基本的に問題はありません。骨盤の前後傾は、振り子のように骨盤が前後に揺れているとイメージします。すると、腰の前後傾は筋肉を緊張させて動かすのではなく、あくまでも腰の骨の位置を動かすというのが分かると思います。

あくまでも関節を動かす

基本的な身体の力の入れ具合

色を濃くする意識は、「肘~手先」「膝~足首」であり、肘、膝から内側の胴体部分は色を薄くする

動くということを考える時、重力とどう付き合うかは非常に重要な問題であり、力ではなく、その重さをいかに効率よく自分の側から相手なりにモノなりに伝えていけるか?が大抵大きな課題になります。この「重さを伝える」べきところが「力を加える」となってしまうことで「力み」に繋がるわけです。力みは、相手や物には伝わらず、自分の側に重さが返ってきてしまう状態です。手先に集まった濃さが手先から外へと流れる。流し続ける。それは、つまり、相手や物へと重みが伝わっていくということです。

身体の箇所で重要・原動力の場所は「骨盤」だったり、「肩甲骨」であることは、このnoteでも、解剖学的にも重要だと唱えていますが、だからこそ、その部分は力を抜く・脱力するということが求められます。身体の色の濃淡の使い方としては、結論として、肘・膝下それぞれの周囲を取り巻くように濃くして、そこから濃さをその先(手先・足先)へと移動させていく。流していく。同時に、肘・膝下から根本(肩・足の付け根)のほうへと限りなく薄く(つまり、脱力、あるいは、その部分はないものとする)していく。肘・膝下を境に、相反する方向に濃さと薄さを移動・流していきます。この意識がうまくいかない場合は、肩回り股関節まわりが濃くなってしまう、つまり、力み癖が相当強く、その濃さ・力みにきがつくことさえも難しくなります。あるいは、自分自身にしがみついていたい気持ちが、強すぎると思います。「肘・膝」を意識することで、ちょっと心もとないような自分がぼやけつつも下腹辺りが充実してくる感じであれば、良い感じとなります。こうすると身体のまとまりの感覚が得られます。身体のまとまりを得られると、全身を包む空間を感じる、あるいは、イメージができるようになります。

包丁で何かを着るでも、マッサージでも、それだけでいい感じに切れたり、マッサージできそうなイメージができると思います。それと同様に、竹刀も、打突も伝えていきます。

力の入れ具合の濃淡原則:肘・膝下それぞれの周囲を取り巻くように濃くして、そこから濃さをその先(手先・足先)へと移動させていく。流していく。同時に、肘・膝下から根本(肩・足の付け根)のほうへと限りなく薄く(つまり、脱力、あるいは、その部分はないものとする)していく。肘・膝下を境に、相反する方向に濃さと薄さを移動させ、流していきます。

力の入れ具合の濃淡は「肘・膝下」という原則を抑えて、剣道の基礎動作の意識というのを読んでいただきたいなと思います。

逆に、脱力しすぎて色が真っ白になりすぎると動かす筋肉が収縮されなくなりますので、限りなくゼロに近いゼロを目指す形で身体の胴体は薄くしいきましょう。

五輪書「ひざより足先まで力を入れて」とは?

大腿四頭筋から膝、そしてすねの前面に力を入れろという常識的なことではありません。
下り坂で止まろうとする時をイメージしてみましょう。まず大腿四頭筋に力が入ります。そして、腰背筋にも力が入り、あごは絶対に前に出さないように力を入れて引いてしまいます。これは重力によって身体が前に引きずり落されようとするのに抗う身体遣い、身体操作です。ということは、従来の研究者や武術家による「ひざより足先まで力を入れて」の解釈は、身体を絶対に前に進ませないというブレーキ操作の身体遣いだということになります。
身体は自然に前に進み始めてしまう状況を本当に動き始めるまでの技かな時間一時停止させておくために、膝より足先にちょっとだけ力を入れておく、というのが、この「ひざより足先まで力を入れて」という記述に込められた武蔵の真意です。
このような立ち方をしておいて、いざというときはそのブレーキを解放し一気に動き出す、というのが武蔵の動きだったわけです。それは、いわば弓を引いて矢を放つ直前に、矢筈(矢の末端の弓の弦を受ける部分)と弓の弦を固定している右手のようだと言ってもいいでしょう。弓道では矢を放つ瞬間を指して「離れ」という言葉を使いますが、弓を引き絞ったあとの矢はエイっと離さなくても、勝手に離れて飛んでいくのが理想です。弓の名手というのは、何事もないかの如く涼しい顔をして弓を弾き、あとは話そうとは思わなくても自然に離れていつの間にか的が矢に当たっているものなのです。武蔵は勝負の時から、この「離れ」の状態が出来ているわけですから、「戦闘開始」となった瞬間の敵への身の寄せ方はまさに電光石火だったと想像できます。この「離れ」の身体つかいを使ってみると、打ち込んできた相手が全く気が付かないうちに、相手とキスができるほど懐に飛び込むことができてしまうのです。相手の視点から言えば、そこまで接近されても気が付かないくらいなのです。そして、間合いが詰められたまさにそのときには、すでに剣が相手の頸動脈の横をスーッと通った後なのです。それゆえに相手は「気配が感じられないまま首が切られていた」と気づいて、思わずぞ~っとするそうです。足先、すなわち指の部分をみてみると、右足ではウナ(脛骨直下点)で身体の重量を支えつつ、指先で必要最小限のブレーキをかけていることがよくわかります。これこそが武蔵のいう「足先まで力を入れ」た状態、「自然に動き出そうとする身体を一瞬とめておくため、あえてブレーキをかけている」状態となります。

螺旋運動

この力の入れ具合の濃淡の意識のメカニズムを紹介しますが、それには螺旋運動がかかわってきます。
螺旋の場合、力がその流れの軌道から外に逃げることなく、軸が生まれ、中心に向かって進んでくれます。一方、直線の場合は求心力がないため、どうしても受け渡したい力が外居逃げやすいのです。釘を押し付けるよりもネジをねじ込んだ方が刺さりやすいということです。腕で何かを押し込む際も、ねじ込む意識を自然に持ちませんか?本能的には、つまり、カラダは知っているわけです。
けれど、カラダは知っていても頭はよく知りません。
螺旋の腕の動きは野球の投球時やテニスのサーブをみるとよくわかります。腕を振りぬいた時腕全体が内側に強烈にねじられており、手の平が外を向くほどです。このような投球やサーブの腕の動きを、一般的には直線で考えてしまいがちで、肩を支点として腕を振り回すというイメージかと思います。ですから、プロの写真を見て「腕が何でこんなに捻じれてるの?」と驚くことになるのです。

構造・腕の螺旋運動

肩の関節は、肩甲骨の浅い臼状の窪みと、上腕骨の骨頭という球状との組み合わせになっています。動きの自由度が高い分、力を逃してしまいやすいわけです。この両者の力の受け渡しを、できるだけ真芯の一点に集中させたいですね。そうなると、上腕骨と肩甲骨が互いに逆回転する感じで動くのが理想となります。同じ方向に回ってしまうと、どんどん全体が同じ方向に行ってしまいますよね。それはそれで、柔らかくスムーズな動きにはなりますが、ここでは力を発揮したいので、ぞうきんを絞るように互いにねじり合うのです。その上で、押し付け合うのではなく、離れるようにするんですね。
この肩甲骨と上腕骨の関係をうまく作ることができれば、体幹と手先の力の受け渡しの効率を上げる鍵となります。しかしながら、上腕骨のねじる動きは分かっても、肩甲骨の方は分かりづらいですよね。そこで、「肘からパワー」を意識します。手先に力を生じさせたい時、身体の中心からではなく、肘から手先に向かって力を発揮していくようにするわけです。肘より根本、肩はないものとして置く感じです。そうすると、身体っていうのは天才で、きちんと上腕骨と肩甲骨は理想的な動きをかってにしてくれるようになるわけです。
肩を支点として腕を振り回す直線的な動きの場合は、力の逃げ場がなくどうしてもダメージを受けてしまいますので、螺旋で動くということが重要となります。

構造・足の螺旋運動

多くの人々は足が前後にしか動かないため二、膝や腰など局所的に負荷がかかってしまいますが、これも、足も螺旋状のエネルギーが通ると、負荷が分散され動きもスムーズになります。
やはり歩きも一般的に、無意識化で直線運動がイメージされます。脚が前後に動く感じですね。けれど、実際にはムチを打つような波の運動があり、さらにそこに回転が加わるような動きが理想なんです。腕と同様に。
もちろん、腕程には捻じれませんが、左右の足がそれぞれ螺旋運動を続けるように歩けると、膝や股関節、腰にかかる負担がなくなります。
相撲のすり足が身体に悪いという人はおらず、むしろいいものだとされていますが、モデルの歩き方と相撲のすり足でさえ同じエネルギーの流れの運動であります。
螺旋の動きは3次元で立体的なため、平面図では、表しづらいですし、頭で理解するのも容易で張りません。その点、直線的な動きは2次元で表現できるために、わかりやすいのです。そのため、どうしても多くの人は2次元の動きの組み合わせでしか動けなくなってしまいます。だからこそ、その落とし穴に落ちぬように、螺旋を意識して頂ければと思います。

この記事では骨盤や股関節・肩甲骨は重要視していますが、これら、身体の部位をスムーズに機能させるためには、肘・膝下以外の部位の力の入れ具合の濃淡は薄くしたまま、骨格を関節で繋ぎ(「関節で支えている」)、骨に付着した筋肉(腱)で骨格を動かす、または、固定するというわけです。

腕の使い方

座っていれば、腕は自由に使えるというかもしれませんが、人間の姿勢と言うのは思っている以上に不安定で、常に体の揺れを修正する必要があります。しかし、手作業に集中すると、腕がバランスをってくれない分、身体を緊張させて固めてしまいます。昔は肩から肘までを「かいな」といい、肘から手首までの部分を「うで」と言っていました。つまり、肘から手首までが本の腕であり、肩から肘は二番目の腕という意味で「二の腕」と言われるわけです※諸説あり。ここで重要なのは、腕を肩から手首までの一本の棒のように考えるのではなく、肩から肘、肘から手首という二つに分けて考えることです。バランサーの役割が上腕が、手作業の役割は前腕が受け持つのです。もちろん、あらゆる動作において絶対というわけではなく、実際には役割交代もあります。パソコンやスマホを使うような作業は前腕だけで行います。この作業に上腕を使ってしまうから、みなさんは肩や首が凝ってしまうわけです。上腕は、バランサーとして常にリラックスしてる必要があります。この時上腕は意識的にバランスを取ろうなんて考える必要はなく、力を抜いてリラックスさえしていれば自然にバランスを取ってくれます。

この感覚を得るために、試しに上半身と上体を縛って、前腕だけを動かすようにしてみましょう。肘が身体にくっついているので動かしずらいかもしれませんが、想像以上に作業が楽になるかと思います

大道芸でバランスボードの上に乗ったままジャグリングをしているのを見たことがあると思いますが、この時も、脱力した上腕がその重みで身体のバランスを自然に取りながら、肘から先の前腕でジャグリングをしているのです。もしこれを、上腕+前腕でジャグリングすると身体のバランスが取れなくなるし、上腕+前腕でバランスを取ってしまえば、ジャグリングは出来ません。腕を肩甲骨や鎖骨から伸びているものと考え「長く使う」という発想は良くありますが、このnoteでの身体の意識は腕を分割して「短く使う」ことになります。しかし、腕を長く使うもよし、短く使うもよし。使い分けが出来れば、それでいい。そういうのを一長一短といいます。

ところで、先ほどの力の入れ具合を「肘から手首」までの色合いを濃くしましたが、この腕を分割するという内容に沿っています。剣道の基本的な構えとして、上腕を胴体のバランサーの役割に専念し力まないようにするため、腕を「短く使う」という構えの作り方をしてみてはいかがでしょうか

上腕で身体のバランス、前腕で竹刀コントロール

背骨伸ばしのトレーニング

背骨は堅い棒ではなく真珠のネックレス
姿勢を作る上で、軸とという考え方があります。この軸を形成するのが「背骨」です。実際、背骨は身体を支える棒であり、背骨がなかったら立てなくなるというイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。そのイメージとは反対かもしれませんが、まず最初に、背骨は棒のように固い物ではなく、ひものように柔らかいモノであるとイメージしてください。背骨というのは1本の棒ではなく、24個の骨が建てに並んでいるだけで、真珠のネックレスのようなイメージが近いです。

先程、背筋を伸ばすなと言いましたが、多くの人は背骨ではなく筋肉で立っているのです。これだと身体全体をドラム缶のように固めてしまうので、動きを著しく制限してしまいます。本来、身体を動かすために使う筋肉を、姿勢を固めるために使うというのは、非常に非効率的と言えるでしょう。では、やわらかい背骨をどうやって軸のように安定させるのかと言えば「引っ張る」のです。ひもを上下にピーんと張った状態になれば、軸として姿勢はピタッ維持できます。背骨の骨と骨の間には、椎間板という平べったいゴムのようなものが挟まれています。ポイントはこの椎間板です。背骨の柔らかさと言うのは、背骨と背骨の隙間、つまり椎間板にあるのです。だから、柔らかい背骨を軸のように強くするためには、この背骨の間をなるべく引っ張って拡げればよいのです。人間は年を取ると身長が低くなりますがこれは決して骨が縮んでいるわけではなく、骨の隙間にある椎間板が狭くなってきたからなのです。この隙間が狭くなれば椎骨同士がぶつかり合うので、背骨全体の柔らかさが失われ、可動域が狭くなってしまいます。

背筋を正しく伸ばすトレーニング
立った状態(座ってもOK)で、背骨を思いっきり伸ばして引っ張ってみましょう。最初は、背骨だけでなく上半身全体に力が入ってもOKです。背骨をしっかり伸ばす力をだしたまま、息を吐きながら肩の力を抜いてください。最初は肩の力を抜くと、背骨を引っ張る力も緩んでしまうと思いますので、もう一度、上半身に力を入れてさらに伸ばします。背骨を伸ばしたら、また肩の力を抜きます。これを繰り返してトレーニングしていくと、段々と肩の力を入れずに背骨だけを伸ばして引っ張るという感覚が分かってきます。背骨を引っ張る力と言うのは、背骨に近い所にある筋や靭帯に力を入れて引っ張るという感覚です。そのため、姿勢を正すというのは、背筋を伸ばすのではあって、背筋を伸ばすのではないということなんです。

注意点:背筋を伸ばすときに、腰や下半身などが緊張しないようにします。これをやると、かえって緊張によって腰椎や仙腸関節などの関節がせまくなってしまいます。

良い姿勢を保つためには背筋ではなく、背筋を伸ばす感覚を身につける

剣道・筋力トレーニングも「脱力」が基本となる

以上のことから、身体の余計な力みを外した状態で動作に対する強度をあげることで筋肉トレーニングが効果的になるということです。身体の力を抜くことを前提にし、身体全体を意識した状態で、鍛えたい箇所に負荷をかけていくことになります