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身体の先端が剣道を制する「肘」の極意。読むだけで、全身を使った剣道のコツがわかる

前回の記事内容と被る部分があるのですが、今回は、身体の「末端」について、かっこよく言うなら「先」についての重要性について語っていきます。

人間の場合、重さを物理的に軽くすることは出来ないのですから、技においては必然的に相手を不安定な状態にすること、つまり、崩しなどによって小さい力で相手や竹刀を動かします。竹刀を動かすには必ずある程度の力は必要になりますが、この上手に使いこなすには、「先」の技術が重要となります。

わずかな力で最大限の力を発揮する「先」とは??

地面に鉄の棒が立っているとします。この棒を押し倒してみましょう。力があればだれでも棒を倒すことは可能ですが、棒を倒す場所によって加える力の強さは変わります。棒の地面に近い所を押すよりは上の方を押す方が軽く動くと思います。棒の先端であれば、ほとんど力を使わずに棒を倒すことができると思います。つまり、同じものを動かすにも、力が多く必要な場所もあれば抵抗なく動かせる場所もあるのです。この抵抗なく動かせる場所を柔術では力の「先」と表現します。

今度は、腕を伸ばしてしっかりと固めてみましょう。この腕を肩に近い所から下に押し込んでみようとしても中々動きません。しかし、手先に近い部分に近づくほど腕は軽く動きます。そして、腕の一番先端の部分、つまり「先」はほとんど手応えがないほど軽く腕を動かすことができます。

「先」とは形状の一番端の部分

竹刀を持ってもらうと、その竹刀の先端は相手にとっての力の「先」になりますので、相手がその竹刀の先を動かすのは簡単ですし、こちらが竹刀の先端をいくら止めようとしても無理だと思います。また、竹刀が、途中で曲がっていたら、その曲がった先端も「先」として扱います。つまり、「先」というのは直線状でなくても、形状の中で一番端の部分であれば「先」として扱うことができます。

「先」という指先感覚を意識する重要性

鉄の棒の例えのように、身体の先端というのは、筋力を使わなくても、物体を運動させる力を持っているということになります。例えば、野球の送球練習でも「指先をリリース時に意識する」というポイントがコントロールや素早い送球であるのコツとして挙げられます。多くの動作に置きまして、末端は一番力を伝えたい、最終的に一番力を発揮してほしい箇所です。それは、逆から見ると末端は反力を受ける入り口、一番最初に重さを受ける箇所です。(身体でいう所の手・足の指先)しかし、末端は筋力が弱く、筋力が強いのは体幹です。なので、反力を受ける入り口は末端でありながら、反力を受けるその最終地点は体幹とするのが自然ということになります。それは、末端に伝えるべき力は、この受けの最終地点である体感から出ている必要があるということでもあります。つまり、末端で受けた反力を体感で受けること、その受けの最終地点から末端へと力を伝えること、この二つのことが、同時成り立つようにすることが重要であります。一般的にどうしても力を発することばかりに意識が向いてしまい、力を受けること(受信力・反力)がおざなりになりがちです。そこでキーポイントとなるのが肘・膝です。

ここで、権威を振りかざした方が読者の皆様に届くと思いますので谷勝彦先生のこちらの動画をご覧ください

「肘を使って素振りをしなさい」

感覚的には「肘で」ではなく「肘でパワーを生む」という言葉の場合、エネルギーの流れる方向に関係なく、ポイントで力を生みだそうとしてしまい、筋力頼りになってしまいます。「肘から通す」という言葉の場合、肘から手先のエネルギーの流れを生むために、自然と骨のラインに沿った動きをすることになります。もし、それでも力んでしまう場合は「肘から重みが流れる」感覚を持ってみましょう。

肘を意識すると力が集中する

例えば、全身で壁を押そうと思いますと、その思いとは裏腹に力が逃げてしまいます。逆に一見手先だけのように思える動きの方が、力感もなく強い力を出せます。そしてむしろ、この肘から力を発揮させようとしている時の方が、体幹はしっかり働いているんです。体感の骨の望ましい位置関係が自動操縦的に生み出されているということです。

前腕だけを前にならえする「小さく前ならえ」の際、誰かに腕を上から押さえられながら、押し上げることをやってみましょう。ついやってしまうのが、腕全体を持ち上げようとしてしまうことです。この時、手先だけを上に持ち上げたいはずなのに、「肘」を上へと動かしますと、肘と手先はそれぞれが個別に上へ言おうとするだけで、全く協力体制にはならないのです。拳・肘・肩がそれぞれが上方向に向かうことでパワーが分散してしまうのです。肘を支点とするヒンジ運動になり、上腕二頭筋を主体として、僧帽筋で肩を上げる形になってしまいます。それに対して、肘・肩甲骨を拳の真下に持ってくるようにすることで、全身の力を伝えられるように持ち上げられます。下から押し上げるとき、作用点である手先を真上に向かわせたいわけですから、肘はその真下に来るのが理想となります。真下から遠く離れれば離れるほど、てこの原理で押し上げる力が弱くなります。剣道の構えの際にも、肩に力が入るということは、肩の力の方向が上方向に向かうことで末端にパワーが伝わりにくく、分散してしまうということですので、肩の力を抜く重要性も理解できたかと思います。

押し下げる動作もみてみましょう。手のひらの真上に肘が来た方が押しやすい。真上から離れて肘を伸ばしたような状態では押しづらいということですね。力の作用点から力を働かせたい咆哮、そのベクトル線上に肘が近ければ近いほど大きな力を伝えられるわけです。引っ張ったり、ひき込んだりしたい場合は、そのベクトルの線を沿うように肘で引っ張るようにするということになります。

こうして、肘からパワーを生むように動きますと、肩甲骨も自然と追随した動きをするのですが、理論的には加えた位置からのベクトル線上に手先(作用点)と、肘そして肩甲骨が集まってくればくるほど、力が強くなる・楽になるということです。ただし、背骨はその動きで崩れないようにする必要があり、原則として、踏む力をきちんと利用する必要があります。

踏み込みは「膝下パワー」

多くの方が強く踏もうとしますと、つい膝より上、股関節まわりに力を込めてしまいます。腕の場合に肩回りに力を込めてしまうのに似ています。これは力感を覚えるだけで、肩甲骨や骨盤の動きをこめてしまうために、骨に動きが生じずエネルギーが詰まってしまいます。力を発揮するといいますのは、筋肉を収縮させることではなく、骨を適切な方向に動かす・動かし続けることです。

竹刀の「先」を握る竹刀操作

では、剣道での「先」とは、どこなのだろうかと考えます。勿論、竹刀の先端も「先」にはなりますが、先程、曲がった先端も「先」という風に考えると、竹刀の操作をする際、竹刀の端を握ることになる左手の指の感覚というのが重要になりますし、「肘」も「先」と捉えることができます。

自分の力の影響を及ぼせない部分を「外」としてて、竹刀を握った時、竹刀のほとんどの部分が力の「外」になります。自分の力の影響を出せるというのは力の「内」の部分だけです。その時に、竹刀を握った時に働く竹刀の作用の力の部分がぶつかるところを避けて、単純に動く所から動かせば、竹刀操作がラクになるという考え方です。

剣道での「先」は、竹刀の先端、左の指先と両肘

剣道ではどう打突するのか?

以上のことから考えて、まず、踏み込む際に背骨はその動きで崩れないようにする必要があり、原則として、踏む力をきちんと利用する必要がありますので、

足に関しては膝下からエネルギーを通すように力を抜くことは前提にして、

上肢は、肩甲骨は意識せず、肘にエネルギー、重みが通すように動かすことになります。先述した壁を押す時の肘の使い方と同じ感覚です。

身体全身を使うためには、身体全身を意識しない・緊張しない・力まない(最低限のみ)という矛盾じみた意識が求められる

あとは、細かい竹刀の握り方・構えの位置に関しては別記事で紹介しています。

巻き技も「先」を動かす

巻き技をやってみましょう。巻き技をやってみると、わかりますが「先」を動かしているつもりで相手の腕を押し込んでしまいやすいです。しかし、押し込んでしまうと相手の力の「中」に入ってしまい押し返されてしまいますね。そうならないように相手の「先」だけを捉えて動かせるようにします。イメージとしては窓ガラスを拭いているようなイメージで動かすとわかりやすいです。相手の肩関節を意識して、そこを支点にして振り子のように動かすイメージをするとわかりやすいかもしれません。

また、「先」を捉える時は、なるべく小さく捉えます。竹刀の先端の範囲を広く「面」として捉えようとすると、力が拡散しやすく、相手とぶつかりやすくなってしまいます。効率よく「先」を動かすためには、なるべく「先」を、面でも線でもなく「点」として捉えるようにします。