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泥海の舞台で浮遊の技を習う日

二週続けざまに大瀬崎湾奥の潜水を愉しんだ。大瀬崎の浜辺には泥が溜まりにけり、些かの動きすらも海水の濁りを招いてしまう。初心者にとり易しいかつての海が、今や幾分難解に変じてしまったことは憾みならざるを得ぬ。然しながら、これも自然の成り行きと諦め、変化を楽しむ心境に至った。

今日は我が苦手とする中性浮力の練習に取り組んだ。第一の潜りを終えた後、年若きインストラクターが練習方法を説いてくれたり。

「腕を交わせば良いのです。てふなむさんは手を頼りとしてバランスを保とうとされますから、空気のみでバランスを掌握できるようになると、これも一助と存じます」

次いで第二の潜りで腕を交わしてみる。バランスが崩れた我が上体は底へと沈みゆく。私は息を吸い、BCDに空気を送り込む。すると、ふわりと体が浮きあがる感覚に目覚めた。気付けば水中で足を動かすことなく静止しておった。これが中性浮力か。一、二メートル水深が増すと、再び体が底へと落ちようとする。その都度、息を吸い、BCDに空気を注入すれば、体が浮き上がり、水中で静止する。逆に水深が浅くなれば、底から一定の距離に浮かんでしまう。そこで息を吐き、BCDの空気を抜けば、底から一定の距離に戻り静止する。やっとできるようになったかもしれぬ。

今日は西風強し。海を上がれば、濡れた身に冷たい風が刺す。我慢ならず、急いでBCDを脱ぎ、温水シャワーを求めた。冬季ならばお風呂も沸いていることもあろうが、今日は特別沸いていないため、このシャワーで何とか済ませねばならぬ。温水シャワーは屋外に設けられており、強風が吹き荒れる中でシャワーを浴びていても寒さが厳しい。

それでも、これまでできなかったことが少しはできるようになり、自信が芽生えた。継続は力なり。更に上達し、水中写真や動画を撮る技を身につけたいものである。それは、大瀬崎湾奥の美しい風景を、これからも続けて楽しむためにも必要なこと。また、その経験を分かち合い、多くの人々と共有する喜びを感じたいと願うばかりだ。

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