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【エッセイ】現場から中継でお伝えします

今日は用事があって都内に出かけている。そんな訳で、今電車の中でこの記事を書いている。

今私の目の前に座っている男性が非常に興味深い。多分まだ学生なのだろう。単語帳にめちゃくちゃ付箋を貼っており、それを勉強してるのかと思いきや、背筋をピンとしたまま目を瞑っている。いや〜、わかるぞ。私もちょっと歳をとってきたのかもしれないけど、苦手なことを記憶するのに使うストレスに段々と耐えられなくなってきた。眠くなってしまうのも分かるぞい。というか、そのくらいの年齢の頃の私は机に座っても15分くらいしか集中力持たなかったぞい。

あ、男性が起きた。単語帳を広げて眺め始めた。

その時、カラカラと乾いた音が車内に響き渡っていた。誰かが置いた空のペットボトルが電車の揺れに合わせて転がっていた。ペットボトルはジグザグ移動しながらその男性の所に向かっていく。

ペットボトルが男性の足元に近づくと、男性は土踏まず辺りの部分を使い、両足で挟むようにしてキャッチした。私は心の中で

「うおおお!」

と歓声を上げた。ここまで私含め全大人達が見過ごしていたペットボトルをキャッチしたのだ。これはもう、「男」というより「漢」だろう。私以外の乗客は気づいていないのか、スマホをポチポチしたり一緒に乗ってる友人達と会話をしている。一時期流行った「うっせえわ」の歌詞にもある通り、「大人は凡庸」というのは的を得ていると思う。

漢は降りる駅に着いたのか、座席から立ち上がり、キャッチした自分の物で無いペットボトルを持って電車から降りていった。

以上、名も知らない漢の一部始終を現場からお送りしました。

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